診察室
診察日:2007年2月20日
テーマ: 『本当は怖い風邪のような症状〜下痢〜』
『本当は怖い風邪のような症状〜発熱〜』

『本当は怖い風邪のような症状〜下痢〜』

Y・Mさん(女性)/35歳(発症当時) 建築デザイナー
弱冠35歳にして会社のチーフデザイナーに昇り詰めたY・Mさん。社運をかけたプロジェクトを任され、忙しい日々を送っていました。そんな彼女の楽しみは、週に一度の夫との外食。大好物を思い切り食べることが、エネルギー源だったのです。急に冷え込んだ冬の朝、微熱と腹痛、下痢に襲われ、風邪を引いたと思ったY・Mさん。風邪薬を飲んで会社に出かけたところ、午後には熱も下がり症状はほとんどなくなりました。ところが、下痢を初めとする風邪のような症状はその後も続いたのです。
(1)微熱
(2)腹痛と下痢
(3)下痢の回数が増える
(4)吐き気
クローン病
<なぜ、風邪のような症状からクローン病に?>
「クローン病」とは、口から胃腸、肛門に至るまであらゆる消化器官に炎症が起き、潰瘍が出来てしまう病。厚生労働省から難病に指定されています。クローン病で死亡するケースは稀ですが、肉類を食べてはいけないなど厳しい食事制限をしなければなりません。最悪の場合、口から一切食事が摂れなくなってしまうこともあるのです。クローン病が発症するメカニズムは明らかではありませんが、本来体を守るはずの免疫細胞が、肉類などの脂っこい食事を頻繁にとることがきっかけで暴走。消化器官を攻撃し、潰瘍が出来ると考えられています。食事の欧米化が進むにつれ患者数も増加。2004年には2万3000人に達するなど、今、最も急増している病の一つなのです。この病が恐ろしいのは、症状が風邪と似ているところ。しかも、その症状は「微熱」、「腹痛」、「下痢」と軽いため、病院に行かずに治そうとしてしまう人が多いのです。ではどこに気をつければ良いのでしょうか?この病を早期発見する大きな手掛かりは「症状が出続ける期間」。風邪からくる下痢は、2週間以上続くことはまずありません。つまり下痢などの症状が2週間以上続いたなら、クローン病など別の病気を疑った方が良いのです。クローン病は早期に発見出来れば、それだけ食事制限も少なくて済むといいます。だからこそ2週間という段階で病に気づくことが何よりも大切なのです。
『本当は怖い風邪のような症状〜発熱〜』
O・Y君(男性)/15歳(発症当時) 中学生
まもなく高校受験を迎える中学3年生のO・Y君。夜遅くにコンビニへ出かける彼のことを、母親のMさんは受験勉強には息抜きも必要と軽く考えていました。そんなある日、38度2分の高熱を出し、関節も痛むと訴えたO・Y君。母親のMさんは、仕方なく学校を休ませることにしたところ、2日ほどで熱は下がり、節々の痛みなどの症状も和らいだようでした。しかし、O・Y君を襲った高熱はインフルエンザなどではなかったのです。
(1)高熱
(2)関節の痛み
(3)全身の倦怠感
(4)微熱
(5)ひきこもりがちになる
Q熱
<なぜ、風邪のような症状からQ熱に?>
「Q熱」とは、ある細菌に感染することで高熱を初めとした様々な症状が出る病のこと。その原因となるのが、動物や野生のダニなどが持つ「コクシエラ・バーネッティ」という細菌。一度感染すると、まず40度近い高熱や関節痛など、まるでインフルエンザのような症状に襲われます。そしてその後、症状は慢性化。微熱や倦怠感が続き、疲れやすくなってしまうことがあるのです。実は最新の研究によれば、近年増え続けている病、「慢性疲労症候群」の原因の一つに、このQ熱があると考えられています。では一体、O・Y君はどこでQ熱に感染してしまったのでしょうか?それこそが、あの子猫。現在、様々な動物がこのQ熱の菌を持っていると考えられています。しかし、ペットが菌を持っていたとしても、いたずらに心配する必要はありません。獣医さんのところで菌を駆除することは可能なのです。ただし、注意が必要なのは出産時。コクシエラ菌は胎盤に多く存在するため、出産時に感染する確率が最も高くなるのです。O・Y君も生まれたばかりの野良の子猫に接触した時、感染したと考えられます。そしてQ熱に感染したO・Y君は、体調不良に悩まされました。しかし、いくら患者がだるいと訴えても、その理由が分からないため、甘えている、怠けていると片づけられてしまう事も多いのが現実。現在、いわゆるニートや、引きこもりと言われる人の中にも、このQ熱が原因の人がかなり含まれているのではないかとも言われているのです。原因不明だと諦めず、心当たりがある人は、感染を疑って血液検査を受けることが大切。Q熱だとわかれば、人間でも猫や犬でも治療する事ができ、人への感染も避けられるのです。