診察室
診察日:2009年10月20日
正しい洗髪&洗顔法SP
テーマ:
『本当は怖い常在菌〜頭に潜む謎の病魔〜』
『顔のトラブル!吹き出物を引き起こす常在菌』

『本当は怖い常在菌〜頭に潜む謎の病魔〜』

S・Kさん(男性)/52歳 サラリーマン
外回りが多い営業という仕事柄、身だしなみには人一倍気を付けていたS・Kさん。
ところが17年前、胆石と急性すい炎を発症し、1ヵ月半入院。
退院後、前髪をかきあげると、大量のフケがパラパラと落ちてくるのに気付きました。
洗い方が足りなかったと思った彼は、爪を立てて頭皮をゴシゴシ洗い、シャンプーの回数も増やします。
しかし、フケは一向に改善しないばかりか、更なる症状にも悩まされるようになりました。
(1)フケ
(2)頭皮が赤くなる
(3)頭皮に痒みが出る
(4)フケが増える
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
<なぜ、S・Kさんは脂漏性皮膚炎に?>
 「脂漏性皮膚炎」とは、脂の分泌の盛んな顔や頭などに炎症が起きる病。頭に起きた場合、それはフケの原因となります。現在日本人の推定患者数は約300万人といわれ、40才以上の中高年、特に男性に多い病です。
 この脂漏性皮膚炎の大きな原因が「マラセチア真菌」という常在菌の異常な増殖。そもそもマラセチア真菌は、カビの一種。なぜこの菌が脂漏性皮膚炎を引き起こすのか?メカニズムは、おおよそ次のように考えられています。
 マラセチア真菌は、毛穴の奥にある皮脂腺から出る皮脂を食べ、生息しています。しかし、皮脂が増えると、それとともにマラセチア真菌も増殖。すると皮膚に刺激を与えるようになり、大量のフケが出てしまうと考えられているのです。通常、フケは頭皮の新陳代謝によって誰でも出るものですが、目に見えるほどではありません。もし目に見えるほどフケが大量に出ている場合は、マラセチア真菌が異常に増え、この病になっている可能性があるのです。
 では、何故そんなに菌が増殖してしまったのでしょうか?一般的にマラセチア真菌の増える原因としては、不規則な食生活や睡眠不足、ストレスなどが挙げられます。S・Kさんの場合は長期入院によるストレス。初めてづくしの入院によるストレスが免疫力を低下させ、マラセチア真菌が大増殖してしまったと考えられます。
 では、彼のどんな行動が、病を悪化させてしまったのでしょうか?実はシャンプーを変えたことは、病の悪化と全く関係ありません。問題は洗い方でした。S・Kさんは、フケをなくそうと頭に爪を立ててゴシゴシ洗ってしまったため、頭皮を痛めてしまいました。その結果、病は悪化。17年も治療を続けることになってしまったのです。
 たかがフケと侮るなかれ!もしかしたらそれも脂漏性皮膚炎のサインかもしれないのですから・・・。
<顔のトラブル!吹き出物を引き起こす常在菌>
 私たちの悩みの種「吹き出物」も、多くは常在菌の仕業と言われます。その犯人は、ニキビ菌。いわゆるアクネ桿菌(かんきん)と呼ばれている菌で、誰にでもある常在菌の一つです。
 では、ニキビ菌はどのようにして吹き出物を作るのでしょうか?そもそも毛穴からは、皮脂と呼ばれる皮膚を守る脂が分泌されています。しかし、毛穴が角質や汚れでふさがると、皮脂は外に出られず、毛穴の中にどんどん溜まってしまいます。それが白い吹き出物。でも、この状態はまだ軽度。ニキビ菌は、皮脂を食べて生きています。そのため、毛穴に溜まった皮脂の中で、ニキビ菌が大増殖。結果、皮脂腺に炎症が生じ、赤い状態の吹き出物になってしまうのです。
 さらに最近、吹き出物に他にも犯人がいることがわかってきました。それは「顔ダニ」。吹き出物をつぶすと、顔ダニが発見されることが多いため、吹き出物の原因の一つとして考えられています。大きさ0.1ミリから0.4ミリの顔ダニは、顔や胸、背中などの毛穴で、皮脂を食べて生きています。昼間は毛穴の奥に潜んでいますが、夜、人間が眠りにつくと、毛穴の奥から這い出してきて、皮膚の表面を排泄物などで汚染。そして汚れを体につけたまま毛穴の奥に戻るため、その汚れが原因となって皮脂腺が炎症を起こすといわれているのです。吹き出物の根本原因は、肌、特に毛穴の汚れ。だからこそ、洗顔が欠かせないのです。
 でも、一口に洗顔といっても洗い方は様々。間違った洗顔をしていると、逆にニキビ菌を増やし、顔ダニを暴れさせることにもなりかねません。皆さん、正しい洗顔方法をぜひ覚えてください。

<常在菌による肌トラブルをなくす!正しい洗顔法のポイント>
(1)石鹸を泡立てる
(2)撫でるように洗う
(3)Tゾーンを中心に洗う
毛穴を詰まらせないために、よくすすぐことも大切です。
まゆ毛から鼻の脇にかけてのTゾーンは、脂肪分が多いので、しっかり洗いましょう!