2016年3月21日(月)午前9時58分~午前10時53分

番組概要

いまや世界共通語として認知されている「KAWAII」(カワイイ)。
パリで毎年行われる「ジャパンエキスポ」には、ヨーロッパ各国から「KAWAII」を求めて日本好きな若者が大集結します。
現在、世界でもムーブメントとなっている「KAWAII」は原宿の女子中高生、はたまた日本のアニメが原点だ、と思っていませんか。とんでもない!カワイイはもっと古くて深~い歴史があるのです。
世の東西を問わず世界中が「かわいい!」と感じるのは、“小さくてくるんとした愛らしいもの”。実は日本の「カワイイ」の歴史をさぐっていくと1000年前、平安時代に造られたある国宝にたどり着きます。それはいったいどんなもの? カワイイの歴史をたどりながら、奥の深い“カワイイの森”を探検するカルチャードキュメンタリー番組。さあ、一緒にカワイイの冒険に出てみましょう。

内容

カワイイの歴史:戦前・戦後、女性をとりこにする「カワイイ」

日本のカワイイのルーツの1つとされるのは、大正時代の竹久夢二。夢二が日本橋に開いた日本初の「ファンシーグッズ」店では、当時の若い女性が夢二グッズを買い求めました。女性をとりこにした夢二のカワイイの特徴は、曲線を多用したS字ラインの女性像、丸味がある瞳に、苺やキノコの斬新なモチーフ。それらは“富国強兵”の明治が終わり、大正デモクラシーの時代に生みだされた新しいデザイン、つまり「何かとても新しくてカワイイもの」として世の女性達に熱狂的に受け入れられたのでした。

ところがそれも、続く世界大戦で日本中から消されてしまいます。戦争がカワイイものを封印したのです。そんな中でもカワイイものに恋焦がれ、戦後から現代まで一貫してかわいいイラストやファンシーグッズを生み続ける女性がいます。イラストレーター・田村セツコさんです。1950年代終わりにデビューしたセツコさんはあっという間に少女雑誌に引っ張りだこになります。雑誌の付録や文具が少女たちをとりこにしました。
番組ではセツコさんらしい意外なカワイイ論も飛び出します。それは「カワイイ」と口に出せば誰もが幸せになれる不思議な魔法だったのです。

イラストレーター:田村セツコさん

カワイイの歴史:平安時代から続く「カワイイ」デザイン

さて、カワイイのルーツを一気に過去に遡ると、平安時代、藤原道長の長女・彰子皇后が御経を納めた経箱にたどり着きました。現在は京都国立博物館に寄託されている比叡山延暦寺所蔵の国宝です。
表は精緻で伝統的なデザイン、左右上下対称で美しい模様が隙間なく刻みこまれています。
ところが、ふだん目にすることのない箱の裏側をみると・・・、なんと舞い散る花びらが余白たっぷりに彫られています。まさにカワイイデザインなのです。
彰子がどうして経箱の内側にそんなデザインを選んだのか?そこにも平安時代独特のある美意識が隠れていたのです。

もうひとつ平安時代で忘れてはならないのが、日本独自のひらがなの誕生です。中国からもたらされたカクカクとした漢字とは違い、丸みを帯び余白と曲線が美しいひらがなは、実にカワイイの要素にあふれています。「未完成・未成熟なもの」を“美”と受け止め、カワイイものをふんわりと受け止めることのできる奥深い日本文化のルーツがそこにはありました。

国宝 金銀鍍宝相華文経箱(延暦寺)精緻なデザインの経箱の内側には…

カワイイの歴史:変化し続ける現代の「カワイイ」

さらに、現代のカワイイの最先端・プリントシール文化と、「理想のカワイイ顔を作り出すある数式」の研究者をたずねます。スタジオでは、謎の数式を解読する意外な方法にもチャレンジ!

最後に、番組がパリで出会ったロリータファッションの女性・ポムさん(26歳)の自宅を訪問すると、屋根裏のロリータルームに案内されました。「昔、自分のことが嫌いだった」と語り始めるポムさん。家事もロリータドレスでこなす妻に、少し引いたという夫。いまではどう思っているのでしょうか?

21世紀のカワイイは、新しい面をみせながら、常に変化を続けます。カワイイは今や自分を発信する新たなツールとして、これまで誰もが予想しなかった方向に広がり始めているのです。カワイイとは何か?を探ることは、何を大切にしたいか?を探すこと。
カワイイの森は奥深く、カワイイを探す旅には終わりはありません。

出 演
山田五郎
喜多ゆかり(ABCアナウンサー)
久保友香(東京大学大学院情報理工学系研究科 特任研究員)
鈴木景二(富山大学人文学部教授)
VTR出演
田村セツコ(イラストレーター)
宮川禎一(京都国立博物館 学芸部列品管理室長)
中村圭子(弥生美術館・竹久夢路美術館学芸員)