藤岡幸夫 ザ・ベスト・シンフォニー!
「英雄」&「展覧会の絵」
[指揮]藤岡幸夫
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団
日時 |
2012年4月21日(土) 14:00 開演 13:00 開場 |
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会場 | ザ・シンフォニーホール |
料金 | A 5,000円 B 4,000円 C 売切れ |
一般発売日 | 2011年12月18日(日) |
優先予約日 | 2011年12月15日(木) |
プログラム | ベートーヴェン:交響曲 第3番 「英雄」 ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲 「展覧会の絵」 |
お問い合わせ先 | ABCチケットセンター 06-6453-6000 |
「サマー・ポップス・コンサート」
「クリスマス・ファンタジア」
と毎回完売の人気公演でお馴染みの藤岡幸夫さん。
クールでダンディで熱血で、男も惚れるマエストロ
藤岡さんに、直撃インタビューを敢行!!
今回も熱いお話が盛りだくさん!!
文字上からもひしひしと熱さが伝わってくるような
インタビューになりました!
Q 関西フィルと10年以上の時を歩み、2010年に始まった「藤岡幸夫ザ・ベスト・シンフォニー!」が第2弾を迎えます!
ザ・シンフォニーホールの出演回数でいうと、今生きている指揮者の中では3本の指に入ると思うんですけど、意外にもザ・シンフォニーホールで名曲は振ってないんですよ。だから、名曲を2曲直球で勝負するこの「ザ・ベスト・シンフォニー!」は、普段の定期演奏会とは違った気持ちになって、気合が入りますね。特に「英雄」は、ホール初披露ですし、「展覧会の絵」は僕にとって思い出の曲なので、奇を衒わず、その音楽のあるべき姿をお届けしたいなと思っています。
関西フィルとは、毎年40回以上指揮していますし、今年で13年目のシーズンになりますから、それなりに積み上げたものがあると信じています。僕が初めて来たころに比べると、音が鳴って当たり前みたいにはなったと思いますが、ラテン系で明るい関西フィルの魅力は変わっていませんね。
Q 今回のザ・ベスト・シンフォニー!で選ばれた曲目。まずは、ベートーヴェン「英雄」の魅力を教えて下さい!
何といってもテーマは、“ヒロイズム”です。
まず、「英雄」は、一般的にベートーヴェンが、皇帝になったナポレオンに激怒して失望したと言われていますけど、そんなことないんです。当時は、まだ戦争が繰り返されていた時代ですから、そんな中でナポレオンを生んだフランスが掲げた自由・平等・友愛の精神、そしてそのために戦った人達というのは全て、彼にとって救いの希望でありヒーローだったと思うんです。たとえば、第一楽章はヒーロー的な変ホ長調という神聖な調性を用いていて、第二楽章の葬送行進曲は、彼らへのオマージュでもある。第四楽章のテーマは、序曲「プロメテウスの創造物」で描かれたテーマが用いられていて、プロメテウスは火の神ですから、まさにシンフォニー全体がヒロイズムで貫かれているんです。
音楽的にも当時にしてみると大革命ですよ。音も壮大で全楽章好きですけど、全部普通じゃない!たとえば第一楽章は、バンッ!バンッ!・・・と和音の連発から始まって、ヒーロー的で神聖な調性である変ホ長調の有名なテーマになるんですが、そのあとにもう一度6発強烈な和音が叩きつけられるんです。美しいハーモニーというのが当たり前の時代にあんな音楽無かったと思いますし、その発想すらなかったわけですから凄いですよね。希望や怒り、いろんな想いが込められているんでしょうけど、強烈ですよ。ベートーヴェンの音楽に対する野心を感じます。
当時にとって強烈な新鮮な音楽だったわけですから、そういう新鮮さを伝えなきゃだめだと強く思っています。ピリオド奏法とかそういうものを超越して、スケールの大きさ、内なる叫びというか、生命力を感じさせるような演奏がしたいですね。
Q ムソルグスキー「展覧会の絵」の魅力について
中学生のときに学校のオーケストラを指揮したのが、「展覧会の絵」の“キエフの大門”で、イギリスに留学して最初に指揮したのも「展覧会の絵」。ヨーロッパでもデビューのときに何度も振ってたりと、僕にとって本当に思い出の曲なんです。
この曲を書く直前のムソルグスキーは、かつてのエリート音大生の面影も無く、安酒居酒屋で呑んだくれて、友達もおらず落ちぶれていたどうしようもない奴だったんです。それが、当時唯一の親友ともいえる画家ガルトマンが死んで、個展を見に行って、大ショックを受けて、そのときの強烈な思いに駆られて作ったのがこの曲なんです。だから、単に絵を説明したような曲ではないんです。
まず、プロムナードのあとの最初の絵の“グノーム”なんかは、まさに“自分は親友を失ったんだ”という衝撃ですね。
そして真ん中のクライマックスである“ビードロ”は、牛車とも言われていますけど、“虐げられた人”という説もあって、当時の階級社会で虐げられた一般市民に対する悲愴的な思いが込めれていて、ショパンの“葬送行進曲”と同じ和音が使われているんです。
僕が一番好きな“カタコンブ”は地下墓地の絵なんですが、うっすら黄金色に光る頭蓋骨の山とガルトマン自身の人影が描かれていて、後半にトランペットが奏でる歌は、ムソルグスキーがまるで 「なんでお前は死んだんだ ・・・!」 と心で叫んでるようなんです。
で、この後のプロムナードがまたいいんですよ。もうすっごい静かで、本当に天国に魂が昇っていくようで。
そのあとの、バン、バン、バババン!と強烈に始まる“ババヤーガ”は、怒りですよ、世の中に対する怒り、そして自堕落な自分への怒り、それが最後の“キエフの大門”では勝利、ロシアの芸術の勝利、ガルトマンの勝利が描かれる。ショックを受けて誘発されて、自分も頑張らなくてはと。だから画家ガルトマンというのは、ムソルグスキーのなかでヒーローだったんですね。
渡邊暁雄先生のレッスンで、最初はピアノばっかり弾かされてたんですけど、有名なオーケストラ曲で初めてレッスンをして頂いたのがこの曲だったんです。嬉しくてめっちゃくちゃ勉強して行ったんですけど、いざ練習日になったら、絵の間のプロムナードだけを指揮しろと。そのときは曲のことなんて全然分かってないから、全部同じように指揮をしたんです。そしたら「全然この曲を理解してない」って怒られて、「君はしばらくこの曲は無理だ」って。ガルトマンへの思いや怒りや悲しみがそれぞれのプロムナードに違う思いが込められている。それが分かっているかどうかで、この曲にはもう棒の上手い下手は関係ない!そういうレッスンをしてくださったんです。先生が亡くなってからですよ、この曲が分かったのは。もう必死で勉強しましたねいろんなことを。
ただラヴェルの編曲があまりにも色彩豊かで素晴らしすぎて、原曲のムソルグスキーの本当の思いを、その本質を忘れてしまいがちになるんです。だから、僕がこの曲を指揮するときは、ラヴェルの色彩豊かな素晴らしいオーケストレーションを表現することよりも、ムソルグスキーのモノクロの思いをどこまで強烈に出せるかというのが勝負だと思っています。
Q ザ・シンフォニーホールでの思い出についてお話いただけますか?
初めてザ・シンフォニーホールに来たのは、暁雄先生の荷物持ちとしてだったんですけど、もうびっくりして!当時はサントリーホールも無かったですから「こんなホールが日本にあるのか」ともの凄く感動しましたよ。いろんな思い出がありますから、一つには絞れませんが、2004年9月16日の園田高宏先生とのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番&交響曲第2番のコンサートは凄かったですね。園田先生にとって最後のコンサートで、あのとき立見がたくさん出て、お客さんが異様な雰囲気で凄かったんです。
まだ30年しか経ってないのかって気もしますけど、そりゃもう何といっても暖かみある、素晴らしい響きですよね。そして何よりも、ザ・シンフォニーホールで音楽を聴くのを愛してくださるお客様の温かさ!これはもう大阪ならではのものですよね。とっても幸せなことだと思います。
Q 最近のご活動では、吉松隆さん作曲のNHK大河ドラマ「平清盛」の音楽を指揮されましたが、いかがでしたか?
本編は僕が全部指揮していますけど、始まって以来の大編成だそうで、楽しかったですよ。非常にスムーズに進んで、何のストーリーもないくらい (笑)。僕はずっとデビューしたときから吉松さんの曲を指揮してきて、すでにイギリスの一流レーベル“Chandos”で、BBCフィルと吉松隆全集を録音してきましたからね。ちょっとやそっとじゃ真似できないことをやってきたつもりですから。ただ、こんな形で、国内で共演できたことは正直嬉しいですね。僕たちがやってきたことは、凄く誇りですし、吉松さんの曲を演奏してきて良かったなと思います。
Q 最後に今回の「ザ・ベスト・シンフォニー!」について熱いメッセージを!
ベートーヴェンやムソルグスキーが生きていた時代っていうのは、常に周りで戦争があって、人々は不安に刈られて、その中で音楽に救いを求めていた時代だったと思うんです。
だから、それに打ち勝っていこうという精神力が凄いですよね。それは、フルトヴェングラーとかトスカニーニの時代もそうで、当時も戦争が付きまとう時代ですから、ものすごいテンションで音楽を表現しているんです。今は、スタジオ録音やCD録音のように、より精密さを求められている時代ですから、もちろんそのバランスも大事だとは思いますが、ミスを恐れて平和ボケしたような演奏はしたくないですね。
ザ・シンフォニーホールで初めて演奏された曲である「展覧会の絵」と、初めて演奏された交響曲である「英雄」を、ホール開館30周年のタイミングで演奏できることに不思議な縁も感じますし、精密さばかりを求めた上っ面ではなくて、作曲家が強烈に描いた想いを表現したいと思います。
勝負のコンサートですし、皆さんに何かを感じてもらえるような熱い演奏をお届けしますので、ぜひ4月21日ザ・シンフォニーホールにお越し下さい!お待ちしています!
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30年の時を越え蘇る“ヒロイズム”、ホールの歴史を開いた二大傑作!!
藤岡幸夫 ザ・ベスト・シンフォニー!
「英雄」&「展覧会の絵」
今から30年前の1982年、朝比奈隆さん指揮ムソルグスキー「展覧会の絵」“キエフの大門”が鳴り響き、ザ・シンフォニーホールの歴史が始まりました。そしてその2日後、ベートーヴェン「英雄」で、初めてホールにシンフォニー(交響曲)が響き渡ったのです!
100名近い人間が鳴らす楽器から放たれる様々な『音』が響き合い、共鳴する、まさに音楽の宇宙“交響曲(シンフォニー)”!! クラシック音楽の本流であり、誰もが知っているけれど、じっくりと聴く機会はなかなか無い“シンフォニー”の傑作たちに、関西クラシック界のヒーロー藤岡幸夫さんが、あえて真っ向勝負で挑む人気シリーズ“ザ・ベスト・シンフォニー!”。第2弾は、開館30周年を記念して、ザ・シンフォニーホールにとってかけがえのない「展覧会の絵」と「英雄」をお贈りします!!
“交響曲(シンフォニー)”を聴かずしてクラシックは語れません!1曲まるごと通して聴くことで味わえる、心に深く染み込む感動。朝比奈さんから魂を受け継ぐと語った藤岡さんが、新しいシンフォニーの世界の扉を開きます!
いよいよ《ザ・ペスト・シンフォニー!》の第2回を迎えます。今回はベートーヴェンの交響曲3番「英雄」とムソルグスキーの「展覧会の絵」を取り上げます。
この2曲の共通点はヒロイズム。「英雄」はベートーヴェンがナポレオンに献呈するつもりだった話は有名ですが、当時としては革命的なオーケストレーションと斬新なアイデアに溢れたスケールの大きな傑作交響曲です。そしてそこからは英雄の生きざまを感じとることができます。
一方、「展覧会の絵」は決して絵を描写しただけの音楽ではありません。当時のムソルグスキーは、エリート音大生だった面影も無く、毎日安酒屋で飲んだくれていました。そんな彼にとって唯一の親友だった画家ガルトマンの死は、大きなショックでした。彼は親友の遺作に強烈な影響を受けて、無我夢中で「展覧会の絵」を書き上げます。そこには悲しみや怒り、叫び…いろいろな想いが込められ、終曲の壮大な「キエフの大門」はムソルグスキーにとってロシア芸術の勝利の象徴であり、ガルトマンはムソルグスキーにとって英雄だったのです。
そして僕が選んだこの2曲、「英雄」はシンフォニーホールで最初に演奏された交響曲で、「展覧会の絵」はシンフォニーホールでの最初のコンサートの曲目だそうで、この偶然をとても嬉しく思います。それではお楽しみに! 藤岡幸夫