夕陽を見ようと甘樫丘に登った。 あいにく、葛城山から沸き立つ厚い雲に遮られて、 想像した風景にはお目に掛かれなかった。 ところが、ふと気配を感じて振り返ったところに、 尾根から顔を出したばかりの月が、 「やっと気づいたか」 と言いたげに私を見下ろしていた。