谷すじを流れてくる風を計算して、この建物がこの地に、 この向きに建てられたという。 また、この場所には豊富な水があり、 それを水車で動力に変えて使っていた。 「鉄」という人智を結集したものを作りながら、 自然を巧みに利用する当時の思想は、明らかに現代とは違う。 操業を停止してから長い時間を経ているにも関わらず、 このたたら場はそのものが生き物のように、 まだ呼吸を止めていないような気配を持っていた。