2010年6月23日
■『ザ・ロード』というアメリカ映画が今週末封切られます■先日映画館の予告編でそれを知って、僕とっても不思議な気分でいるんですね。え?『ザ・ロード』、もう観たんじゃなかったっけ?・・・そんな気がして仕方なかったのです。2年前、どこかの書評で絶賛されていたので、原作の同名小説(無論邦訳)は読んだんです。で、そのあと映画も観たと思っていたのです■しかし原作がアメリカで出版されたのが2006年、邦訳が2008年、映画化が2009年。そして今週日本で初公開・・・。おかしいなぁ。ヘンだなぁ。観られるはずがない■考えられるのはただひとつ。小説の描写が非常に映像的で、あたかも映画を観たかのような形で記憶してたということ。無理してイマ風に云えば、文字情報が脳内で映像情報に変換され、それが動画ファイルみたいな形でメモリーされていたという・・・■物語は実にシンプル。一言で云えば、破滅した世界の荒野を、父と息子が南に向かって歩いている、というお話です。いわゆる『終末後の世界モノ』ですね。理由は定かではないが殆どの生物が死滅し、わずかに生き残った人類も理性を失った暴徒となっている、という絶望的な世界。その中で、以前の幸福な時代も知る父と、この暗黒しか知らない息子とが交わす会話の数々が感動的なんですが・・・■僕が映像として記憶しているのは、何といってもスーパーマーケットのカートなんですね。道中で見つけた貴重な食料や生活必需品を一台のカートに積み込み、それを押しながら二人は旅をしているのです。かつては都市と都市を結ぶ雄大なフリーウェイだった荒涼たる一本道。地平線の彼方へと続くその道をトボトボ進む、父と子とカート。そう、『子連れ狼』ですね、まさに■最近の小説、特にホラー・ミステリー・冒険小説などのエンターテインメント系の小説は、意識的か否かはともかく非常に映像的に描写されることが多い。幼い頃から映像に囲まれて育った作者なら、頭の中に映像が浮かびそれを文字に起こす、なんていう執筆法もあるでしょう。出版すれば必ず映像化の話が舞い込むような大作家(スティーヴン・キングのような?)なら、「どうせなら自分のイメージどおりに映像化してほしいし」という理由で、最初から映像スタッフ用にわかりやすい描写をしたりするんじゃないか、とも勘繰ってしまいます■ともあれ、映像の発達は文学にも大きな影響を与えます。本を読む人は減り、『面白い物語』は、小説からではなく、映画やマンガやRPGからしか体験しない、という人が増えています■でも、どんな世の中になっても、緻密に構成された面白い物語の原点は文字にあると思うのです。話題に乗り遅れまいと読む『1Q84』だけじゃなく、もっと物語が読まれればいいのに、と思います■『ザ・ロード』、映画は未見ですが、とりあえず原作は素晴らしいです!(艦長)
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- 2010年06月23日水曜日