2014年11月28日
■カムカムミニキーナさん、今朝小屋入りされ、明日土曜日『G海峡』初日です■Gと書いて「ギガ」と読みます。つまり、タイトルの元ネタは水上勉・作の小説「飢餓海峡」ですね。1965年に公開された、内田吐夢監督の映画版が有名です。まずちょっとこの映画の設定をお話しすると・・・■太平洋戦争が終わって間もない頃。北海道・函館港の沖で、青函連絡船の遭難事故が起こります。救難活動で海上はパニック。多くの水死体が引き揚げられる中、乗船名簿に載っていない2人の男性の遺体が見つかります。どうやら彼らは、事故の直前に北海道の小さな町で起きた強盗殺人放火事件の犯人らしい。しかし調べによると犯人は3人組。では残る1人は一体どこに消えた?そして奪われた大金は・・・?■行方をくらました謎の男を演じるのが三國連太郎さん。一生をかけて彼を追い詰める刑事が、伴淳三郎さん。舞台は、北海道から津軽海峡を越え東京、そして京都・舞鶴へ。戦後の貧困の中から必死に這い上がろうとする人間たちの姿が、重厚なミステリーの中に浮かび上がります ■松村武・作/演出の『G(ギガ)海峡』でも、物語は、青函連絡船の遭難事故で不可解な遺体が発見されるところから始まります。しかしそこを発端に描かれるのは、1万年という時間、そして日本列島と遥か南北アメリカ大陸を縦横無尽に行き来する壮大なストーリーです■ものすごーくざっくり説明すると、今から約1万年前の縄文時代、日本列島に暮らしていた人々の『心』が、ベーリング海峡を伝って太平洋を越え、アメリカ先住民に引き継がれた。ひいては合衆国建国の精神に影響を与え、果ては太平洋をぐるり一周して戦後の日本に通じていると、そんなお話。これこそまさに『心のTPP(Trans Pacific Partnership)』だと云えるような・・・。どんな『心』(精神)なのかは、是非実際に作品を観て確かめていただきたいと思います■とはいえ、「連絡船の海難事故からどうしてそんな話になるねん!?」と、確かに、突然文章でこんな説明をされても戸惑うばかりかしれません。でも、そんな飛躍をエンターテインメントに昇華させ得ることこそが、まさに「演劇の魅力」だと思うのです■演劇の可能性を追求する男・松村武さんの書かれるカムカムミニキーナの作品はここ数年、日本の古代史を題材にしたものが続いていました。今回はついに、文字で書かれた「歴史」が生まれるずっと前、太古の日本が物語の出発点です。相変わらず、物語の要素は複雑、展開はスピーディで手強い。登場人物も、馬と人との間に生まれた青年、シリコンバレーのセレブリティ、恐山のイタコ、縄文の村の青年、インディオの脱走兵、場末のスナックのママ・・・とまあ多彩です■劇団の看板俳優・八嶋智人さんは、今回、殺人事件の捜査に人生を捧げる老刑事の役。映画「飢餓海峡」の伴淳さんを彷彿とさせる東北訛りの渋い演技がたまりません。そしてもうひとつ見逃せないのは、作品のモチーフのひとつである『縄』を使った劇中の数々の視覚的パフォーマンス■とにかく見所が多過ぎて、その果てにとても前向きなメッセージがズシンと伝わってきます。1万年の時と太平洋を巡る壮大な歴史ミステリー、(土)(日)たった3ステです。どうぞお見逃しなく(艦長)
カムカムミニキーナ 『G(ギガ)海峡 ~禍福はあざなえる縄のごとし~』
11月29日(土) 13:00 18:00
30日(日) 14:00
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- 2014年11月28日金曜日