2017年1月26日
■劇団ZTON御一行、昨日小屋入りされ『覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】』明日初日です■まずなにせタイトルが難しいですね。ほとんどの方が最後の一文字読めないんじゃないかと思う。いやそんなことはないか、司馬懿は「しばい」と読みますが当然演劇のことではなく古代中国の人名で、『三国志』の登場人物の一人。司馬懿仲達と字(あざな)をつければアっと気付かれる方もおられるかもしれませんが、三顧の礼で有名な蜀の軍師・諸葛亮孔明のライバルで、晩年、三国を統一する西晋の礎を築いた武将・政治家です■最近はどうやらアレです、スマホの人気ゲーム「モンスト」っていうやつに、『三国志』のキャラクターがいっぱい登場していて、若い人はそちらから『三国志』に接するらしい。僕は高校時代?に読んだ吉川英治の『三国志』に血沸き肉踊らせたクチ。また70年代には横山光輝が漫画化し、「鉄人28号」や「魔法使いサリー」と並んで彼の代表作となるわけです。つまり今から千八百年ほど前、日本は弥生式土器を使い女王・卑弥呼が邪馬台国という謎の国を治めていた時に海の向こうで起きていた、諸国の興亡と英雄たちの闘いの記録が、物語として小説から電子ゲーム、そして小劇場の舞台として、今も人々を興奮させ続けるというわけ。さすが中国四千年の歴史は懐が深い■余計な前置きが長くなりましたが、つまり今回のZTONさんのお芝居は三国志がベースで、数年前から連作されてきたシリーズの掉尾を飾る作品となります。観劇前の予備知識として、サラッと三国志の設定、曹操、関羽、張飛とか何人かの登場人物の名前をインプットしておいたほうがいいかもしれません。然る後に、『関西最速』といわれる華麗な殺陣や、天下を治める者の宿命をファンタジックに具象化した『龍』という存在、そして勇猛な武将の役に敢えてキャスティングされた可憐な女性アイドル、などなど、ZTON流エンタメギミックの世界を存分に楽しんでください■・・・といいながら実は私、いわゆる「アクションエンタメ」、あるいは、「歴史ファンタジー」、なお芝居が正直ちょっと苦手です。嫌い、ではないのです。お恥ずかしい話ですが、激しい立ち回りや異なる時空を交錯させる作劇の細部に気を取られるうちに、単純にスジを見失ってしまうのです。そんなこともあり、先日ラジオの取材を兼ねて京都の稽古場にお邪魔した際も最初はやや不安でした。なんか激しいアクションの中を演出家の怒号が飛び交う殺伐とした雰囲気だったらどうしようか、なんて■しかし予想は大きく外れました。京都の劇団だから、という訳ではないのでしょうが、空気が実にはんなり柔らかい。劇団代表で作・演出を担当されている河瀬仁誌さんは、役者の自主性を重んじ、演技における彼ら自身の工夫を極力活かすタイプのようです。『脚本を書いたのは自分だけれど、読み込んでいるのはむしろ俳優の方だから』という言葉がとても印象に残りました。なかなか云えないセリフです。そんなわけで、多くの登場人物の人間関係を肉付けしていく芝居の作り方はとても丁寧で、同時にやはり殺陣はめっちゃ速く鋭い。『目的ではなく、手段としての殺陣』、が目標だと数年前に河瀬さんは語っておられましたが、なるほどそれはしっかり実現されています■『覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】』、タイトルは難しいですが舞台は痛快です。是非(艦長)
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- 2017年01月26日木曜日