CONCIERGE by ABC Announcers

第22回

落語とわたし

桂 紗綾

桂 紗綾

「“ABCアナウンサー”桂紗綾です。」
私が自己紹介する時は肩書きを殊更に強調します。
なぜか?
頻繁に落語家さんと間違われるからです。
入社した頃は視聴者の方から本当によく言われました。
「桂って、落語家さんかと思った!」
「あんた、どこの一門や?」
挙句の果てにこんな苦情までいただいたことがあります。
「桂紗綾は落語家やのに、何で落語をせずにニュースばっかり読んでるんや!けしからん!ちゃんと落語をしなさい!」とね(笑)
高座名のようですが、本名なんです。

そんなご縁もあったからでしょうか。
「ラジオ演芸もん」という番組を担当するようになりました。
日曜朝5時~ABCラジオで放送中のこの番組は、
落語家さんや若手漫才師さんにお越しいただき、お話を伺うというもの。

根掘り葉掘りお聞きするのに芸を見たことがないのは失礼にあたると思い、
落語会に足を運ぶようになりました。
するとどうしたことでしょう。
落語って面白い!素晴らしい!!好き!!!
とまぁ、急激にトリコになってしまいました。
これまで落語をしっかり見てこなかったことを後悔すらしました。
今はその遅れを取り戻すかのように週に二、三度、足繁く落語会に通っています。

では、落語の何がそんなに好きなのか。
語りますよ?良いですか?(笑)
落語ってね、人と人との繋がりがとても濃くて深いんです。
登場人物はアホでどうしようもない人ばかりだけど、みんな愛おしいんです。
悪い人でも許してしまうくらい可愛らしくて笑いに溢れている。
かと思えば、ぐっと心を引き込んで泣かせるような良い噺もあったりして。
人の温かさを感じる世界なんですね。
なんとなく、今の社会に足りないものが落語の世界には優しく漂っている気がするんです。
落語の世界に移住したい!と、わけわらん願望を抱くようになりました(笑)

こんな想いを月亭八光さんに暑苦しく語っていたら、
「そんなに好きなら自分でやったらええやん。上方落語盛り上げてや。」と言われましてね。
真に受けやすい私は一念発起し、毎日猛稽古。
一年後の2018年4月、八光さんの落語会で高座デビューさせていただきました。
アナウンサーデビューより緊張して、何を喋ったのか全く覚えていません。
ウケるはずのところで全然ウケてなかったことだけ、覚えています(笑)
その後も何度か高座に上がる機会をいただき、
7月に社会人落語日本一決定戦に出場エントリーしました。
無謀にも優勝を目指して、オリジナルの「初鳴き」という新作落語を作って挑戦しました。
プロの落語家さんにも、社会人落語家の皆さんにも、業界関係者にも、
記念やおふざけで出場していると思われたくなかったんですね。
私の落語への愛はほんまもんやということを知ってもらいたかった。
お稽古は何百回したかわかりません。
少しでも合間があればお稽古、お稽古、お稽古。
結果、池田市長賞という特別賞を受賞することが出来ました。

実はね、この大会を通して一番嬉しかったのは賞をいただいたことではないんです。
もちろん受賞は嬉しかった。
でも何より、初めて落語の最中に“楽しい”という感覚になれたことが嬉しかったんです。
たくさんのお客さんの前で震える程の緊張でしたよ?
だけどその大勢のお客さんの笑顔を見て、笑い声を聞いて、
お稽古の時よりも予選の時よりも良い落語が出来たんです。
完全に、私の中で「落語」が「楽語」になりました。

今後も高座には上がりたいです。
そして、落語を見たこと聞いたことがない方に落語の素晴らしさを伝えたいです。
このコラムを読んで少しでも落語が気になった方はぜひ落語会に足を運んで下さいね。
良かったら、桂紗綾出演の会にも来て下さい!
あ、ちゃっかり宣伝してすみません(笑)
お待ちしてます♪

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