気持ち新たに初稽古
八塚彩美
裏千家に入門してまもなく5年、お茶とともに迎える新年も5回目です。
様々な年中行事が中止となり季節を感じにくい日々ですが、今年初めてのお稽古で見つけた“新年”をご紹介します。
お正月の床には結び柳が飾られます。柳のように一年しなやかに過ごせますようにという願いが込められています。
お花は寒牡丹です。冬の雪の中で花を咲かせようとする姿には厳粛さが感じられ、新年を寿ぐ(ことほぐ)花として風流人に親しまれているそうです。寒牡丹の奥に古い枝が一本あるのが見えるでしょうか。寒牡丹は前年の古木の下に咲くため、その姿を写して古木を添えます。「花は野にあるように」というお茶の精神が表れています。
華やかな掛け軸もありました。鳥取県生まれの日本画家、菅楯彦のものです。描かれているのは門付(かどづけ)と呼ばれる芸能者。一年の中の節目ごとに家の門前で芸能を見せてお祝儀を受け取るのだそう。松や梅の着物に富士山の扇子といった出で立ちでハレの日をお祝いする様子がお正月にぴったりです。
では、先生が用意して下さったお道具でお稽古を始めます。
まずは釜を上げて炭のお手前から。釜の重さは3キロほど。水は5リットル以上入ります。膝を炉縁(ろぶち)ギリギリまで進め脇を締めて垂直に持ち上げます。気合のいる瞬間です。
釜を畳に上げた後、炭を並べます。写真は火箸で炭を二本同時に持ち上げているところです。右手をプルプルさせながら落とさないよう慎重にお手前します。
少し時間が経つとこの通り炭がよく燃えてくれました。まだまだ上手とは言えませんが、ホッと一安心です。釜の湯がよく煮えるとおいしいお茶が点てられます。炭手前はとても大事です。
蓋を開けた時にふわ~っと白い湯気が立つと、寒い冬の空気もいいなぁと思えてしまうから不思議です。
今年初めての濃茶を練り、薄茶も点てました。抹茶の深い色を見ると気が引き締まります。
節目の感じ方も自分の工夫次第。混沌とした時代でも自然に親しみ心穏やかに過ごす知恵が茶道には溢れています。これからも一つずつ学んでいきたいと願うお正月になりました。