仕置人で中村主水が登場することによって、当時の流行の言葉で言えば『作品から番組に移行した』っていう。言うたら悪いけど、姑のせん(菅井きん)と嫁のりつ(白木万理)なんて作品的には全くいらん存在。全部切っても筋は通って成立するんです。しかし、あの部分が物凄く要るというのが番組なんやな。TVの日常性みたいなもんでね。初期の頃は、深作欣二とか工藤栄一とか映画監督と物凄いもめましたよ。監督は『ここ切ったら物凄くエエ作品になる。切れ、切れ』と。でも、『これは要るねん』って。ごっつい言い合いになったんですよ。
実は、仕置人は沖雅也がトップで、主水は最初は“留め”だった。そのうち主流になってきて、せんとりつも活躍を始めて。だから、せんとりつを切ったらどないもならんのですよ。菅井きんさんというのは、昔から僕の番組によく出てくださって。せんというイジワル婆はあの顔でないとイカンという(笑)。白木万理さんは使ってみたら意外に合うたんやね。こんなんはラッキーなはまり方やね。そして、あのふたりが必殺の一番の特徴になったわけでしょ。
あれは、わさびですよ。あれがなかったら、食いにくい。だから長続きしたと思うんですよ、必殺は。中村主水とせんとりつがあったから。日常性みたいなものが、長く続くのにきわめて重大な要素なんですよ。