今までの時代劇は『許せねえ』って言うて、面と向かってズバッと斬る。そやないんです。必殺は卑怯なこともOK。例えば、歩いてきたところをブスッとやったり、障子の隙間から刀をブスッとやったり。それが、ああいうユニークで印象的な作品を生むんですな。必殺技は、役者が決まってから役者に合うたものを考えました。役者も途中からオモロなって、いっぱい色んなアイデアを言いますよ。梅安の時なんか、緒形拳がゴルフ手袋の指先を切ったものを使うってのを考えついたんですから。仕置人の山崎努の“骨はずし”とかは、すぐ出てきましたね。カイロプラクティックにかかってゴリゴリとされると、ああこれやこれやって。
映し方にも工夫があって、カメラの石原興があんなもんレントゲンで写したらよろしいねんと。当時、ABCホールで『必殺仕置人』の完成試写会をやったんですが、満員の客がレントゲンが出た時に腹抱えて笑うんです。時代劇の中にレントゲンって…。これは成功したなと。ただ、仕置人の時に、悪を長いこと苦しめるっというのをやったんですね。一瞬で殺さない。それが、やっぱり面白ないねん。一瞬でやらんと。サッとやる方が爽快感があるんやね。その辺の試行錯誤はあったね。もちろん、失敗したのもありますよ。必殺では『リアルはアカン』のですよ。笑いのある“骨はずし”やないと。そんなもんできるかい!というね。