音楽はね、ふと閃いたんですな、平尾昌晃というのが。いっぺんも一緒に仕事はやったことがなかったけどね。なぜ閃いたかというと、当時ね、旅に出て古い民家を今風のきれいな女性が訪ねていくというJRのキャンペーンがあった。古き日本を訪ねる『ディスカバージャパン』という風潮やった。僕は、音楽はこれやなと思ったんです。民謡をやったんではアカンのです。今の新しいサウンドでやらなアカン。小柳ルミ子の『私の城下町』を聞いて、アッ、この感覚やと。で、これの作曲家は誰やとなって、平尾さんにこのイメージでいこうやないかと。
それで、彼に『何でもええから、アンタが思うありとあらゆるシーンを想像して作ってくれ』。それを竜崎孝路という名アレンジャーが、色んな曲にアレンジしたんですよ。竜崎は基本的にトランペットを多用しよった。更に、浪人が橋で悪い奴を待ち伏せしてる時に、ギターをガンガンガンと鳴らしたりね。今までの音楽は、主人公の情緒を増幅する。それに新たな情緒が加わったんですよ。というのは、殺しに行くときに哀しい音楽を流すでしょ。歌謡曲みたいな。そうすると、殺し屋の心情だけじゃなくて、被害者の心情も加わるんですな。まぁ、音楽もええ才能に恵まれたね。