第8話「一発勝負」 おさらい
江戸でスリが相次いで殺される事件が起こる。
スリを裏稼業とする嘉助・富吉親子の一味は、
とんでもない陰謀に巻き込まれてしまう!
ひとこと解説~江戸時代のスリ~
江戸時代のスリは、現代とは違い、一目でスリとわかる姿をしていたという。警戒されてもなおサイフをスリ取る。それだけの技とプライドを持っていたのである。しかも、江戸時代の刑罰では、スリは4回つかまると死罪となったため、まさに命賭けの商売でもあった。スリは江戸文化ならではの、粋な職人芸だったのだ。
脚本:森下直 監督:酒井信行
芝居帰りにこう(野際陽子)とふく(中越典子)が襲われた。襲ったのは、暴れスリと呼ばれる、女や年寄りを取り囲んで刃物でサイフを脅し取る新手のスリだ。幸い、こうとふくは間一髪で富吉(神保悟志)という男に救われた。
粋な男っぷりで知られる扇屋の富吉だが、そのウラの正体は"弁天の吉蔵"と呼ばれる、昔ながらのスリであった。近頃、江戸では、そんな昔ながらのスリたちが殺される事件が相次いでいた。小五郎(東山紀之)は新旧のスリによる縄張り争いではないかと疑うが……
その頃、番屋では、中村主水(藤田まこと)を前に、嘉助(長門裕之)が暴れスリの出現を嘆いていた。嘉助はかつて"受け取りの吉蔵"と呼ばれ、同心だった主水から追われたこともあったスリの名人だ。嘉助は、富吉の実の父親だが、親子の仲はうまくいっていない様子。
そんな中、嘉助と富吉は、一味のスリ・伊佐治(樋口浩二)から相談を受ける。吉原で両替商の大黒屋(田中弘史)と一緒にいた武家の男からスッたサイフに、ある包みが入っていたという。その中身はなんと贋金の小判だった!
サイフの持ち主は勘定組頭の永井又五郎(石田太郎)、一緒にいたのは御金改役手代・沖田庄右衛門(安部潮)。幕府の財政を預かる役人と小判を作る役人、両替商が結託しての贋金作りの陰謀だった。彼らは、サイフをスッた犯人を探そうと、やくざ者の伝兵衛(下元年世)を雇い、スリ狩りを行なっていたのだ。
それを知った嘉助は、このサイフを勘定組頭の永井のもとにスリ戻してやろうと提案する。富吉は、嘉助に反対されたにもかかわらず、その役目を無理に引き受けた。だが、富吉はスリ戻しに失敗し、永井らに捕らえられてしまう。仲間を守るために口を割らずにいた富吉は、拷問の末、永井に斬り殺されてしまう。
嘉助は富吉の仇を取るために、殺しの証拠である刀を永井からスリ取ろうと企てる。主水の制止にもかかわらず、嘉助はこの無謀なスリに見事成功。しかし、伝兵衛によって嘉助は殺され、主水が奉行所に提出した刀も、永井の圧力でもみ消されてしまった。
富吉の女房・えん(遠野凪子)の頼みで仕事が始まった。涼次(松岡昌宏)と源太(大倉忠義)が、伝兵衛と沖田を次々と仕留めていく。主水も、嘉助がスリ取った刀を永井に突き刺し、仇を取った。最後に、小五郎が大黒屋を斬り捨てた。