診察室
診察日:2004年4月20日
テーマ:『本当は怖い肩こり〜忍び寄る悪魔』
『本当は怖い頭痛〜身近に潜む殺人鬼』
『本当は怖い肩こり〜忍び寄る悪魔』
Y・Eさん(女性) 27歳(当時)
OL(大手商社経理部勤務)  
決算期を控え、一年で一番忙しい毎日を送る中、Y・Eさんは重くのしかかるようなしつこい肩こりに襲われた。しかし自分ではいつもの肩こりが始まったと思い、決算期さえ乗り切ればと軽く考えていた。そんなY・Eさんに様々な症状が現れてきた。
(1)肩こり
(2)肩に触るだけで痛む
(3)階段を上るだけで息切れ
(4)肩から背中まで広がる痛み
(5)微熱
(6)突然の高熱
(7)骨がきしむような痛み
(8)足に紫色の斑点
(9)鼻血
急性骨髄性白血病
<なぜ、肩こりから白血病に?>
一体、Y・Eさんの肩こりと白血病にどんな関係があったのか?そもそも人間の血液は、骨の中の骨髄という部分で作られている。骨髄にある造血細胞が赤血球、白血球、血小板という3種類の血球を作りだす。白血病は、この造血細胞が異常をきたす病気。異常な白血球が大量に造られ、その分、正常な赤血球や血小板が減少してしまう。その結果起こったのがY・Eさんの肩こりだった。通常は赤血球が酸素を全身に行き渡らせ、肩にたまった疲労物質を取り除くが、Y・Eさんの場合は赤血球が減少したため、肩にたまった疲労物質を取り除くことが出来なくなってしまったのだ。
白血病の治療で最も重要なのは早期発見。肩こりや熱などのサインを見逃さなければ、完治する可能性は高くなります。
『本当は怖い頭痛〜身近に潜む殺人鬼』
K・Tさん(男性) 42歳(当時)
サラリーマン  
健康のためにはじめた、出勤前30分のジョギングが毎朝の日課というK・Tさん。
人事異動で営業に配属され、仕事が以前にも増して忙しくなった。
残業や接待などで日に日に疲れはたまったが、公園でのジョギングを欠かさず行っていた。
そんなK・Tさんに様々な症状が現れてきた。
(1)頭痛
(2)倦怠感
(3)微熱
(4)目がかすむ
(5)頭痛が激しくなる
(6)嘔吐
(7)高熱
(8)髪に触っただけで頭が痛む
(9)全身がこわばり、歩くことが出来ない
クリプトコッカス髄膜炎
<なぜ、頭痛からクリプトコッカス髄膜炎に?>
K・Tさんの命を奪った病は、髄膜炎。脳を包み込んでいる髄膜がウィルスや細菌に冒されて炎症を起こし、脳の機能を破壊してしまう恐ろしい病だ。そしてK・Tさんの髄膜を冒した恐ろしい病原菌の正体は、クリプトコッカスというカビの一種だった。ではK・Tさんはどこで感染したのか?それは彼が毎朝ジョギングしていた公園にいたハト。実はハトの糞の中には、沢山のクリプトコッカスが生息している。ハトが飛び立った時、乾燥した糞に含まれていたクリプトコッカスが空中に舞い上がり、通りかかったK・Tさんの体内に侵入したのだ。クリプトコッカスは通常人間の肺の中に侵入しても、免疫細胞に負けすぐに死に絶えてしまう。しかし、K・Tさんの場合、激務による疲れで免疫力が極端に落ちていたためクリプトコッカスが肺の中で増殖を始めた。そして血管に入り込んだ菌が血液の流れに乗って全身を駆けめぐり、最後に髄膜にたどりついて炎症を起こしてしまったのだ。
実はK・Tさんを襲った頭痛こそが髄膜炎のサインだった。日ごとにひどくなる炎症のせいで、頭全体が敏感になり、最後には髪の毛に触れただけで痛みを感じるようになっていたのだ。