診察室
診察日:2004年6月29日
テーマ: 『本当は怖い肥満〜死へのバージンロード〜』
『本当は怖い頻尿〜悪魔のサービスエース〜』
『本当は怖い肥満〜死へのバージンロード〜』
M・Kさん(女性)/29歳(当時) 商社OL
交際2年目の彼との結婚を半年後に控えていたM・Kさん。 ウェディングドレス選びの際、お腹にポッコリと脂肪が付きはじめていることに気づいたのを機に、「結婚式までに痩せなくては…」と、ダイエットを決意。
昼食は今まで通りだったが、朝は野菜ジュースのみ、そして夕食はサラダだけという生活を始めた。
そんなM・Kさんに様々な症状が現れてきた。
(1)お腹に脂肪が付く
(2)ダイエットをしているのに、さらにお腹に脂肪が付く
(3)吹き出物
(4)すね毛が太くなる
(5)口周りの毛が太くなる
(6)顔が太る
(7)頭痛
(8)正座をしただけなのに、足に内出血が起こる
(9)脳出血
副腎がん
<なぜ、肥満から副腎がんに?>
「副腎」は腎臓の上にあり、脂肪の量の調節など様々な役割をはたすホルモンを分泌している重要な器官。M・Kさんの場合、この副腎に何らかの原因でガンが出来てしまいました。そして、副腎がんによって起こる「クッシング症候群」と呼ばれる病に襲われたのです。お腹や顔が太るなど、M・Kさんの症状は全てこのクッシング症候群によるものでした。副腎がんによって「コルチゾール」というホルモンが大量に分泌されると脂肪細胞が異常に増殖し、お腹や顔が太っていくのです。さらに、コルチゾールは筋肉を作るアミノ酸の働きを妨げる力も持っており、コルチゾールが大量に分泌されると、腕や足など筋肉の多い部分は反対に痩せていきます。その結果、お腹や顔が太り、逆に手足が痩せた状態になるのです。これは「中心性肥満」と呼ばれる、クッシング症候群の典型的な症状。そして女性であるM・Kさんの口の周りや、すねに太い毛が生えてきたのは、副腎の機能が低下し、男性ホルモンを大量に分泌したため。つまり彼女は男性化していったのです。重くのしかかるような頭痛は、大量に発生したコルチゾールの働きで血管が収縮し、一気に高血圧になったことが原因。そして正座の後にできた足の内出血。これは増加したコルチゾールが血管を作る物質の働きを低下させ、毛細血管がボロボロの状態になったところに正座で圧力がかかり、血液が皮膚の下に大量に漏れだしたためでした。そして同じことが脳でも起こりました。ボロボロになった血管がついに破裂。流れ出した血液が脳を圧迫し、脳の機能が停止。M・Kさんは「脳出血」で死亡してしまったのです。
副腎がんも他のがんと同じく放っておけば、様々な臓器に転移していく恐ろしい病。しかし、それにもまして短期間で死に至ってしまう、このクッシング症候群こそ本当に怖い病なのです。副腎がんによるクッシング症候群を多く発症するのは20代から30代の女性。しかし、早期に発見し、治療をすれば治すことができるのです。
『本当は怖い頻尿(ひんにょう)
          〜悪魔のサービスエース〜』
M・Tさん(男性)/51歳(当時) 会社員(建設会社勤務)
仕事が生き甲斐だった30年間、あまり運動もせず、接待で暴飲暴食、お腹にたっぷりと脂肪が付いてしまったM・Tさん。 「学生時代はテニス部の部長をしていたのに・・・このままじゃいけない」と、週末の土日、家族でテニスをするようになった。 しかし1ヵ月を過ぎた頃から、様々な症状が現れてきた。
(1)頻尿
(2)尿漏れ
(3)ふくらはぎのしびれ
(4)足裏の痛み
(5)腰の強烈な痛み
脊柱管狭窄症 せきちゅうかんきょうさくしょう
<なぜ、 頻尿 ひんにょう から 脊柱管狭窄症 せきちゅうかんきょうさくしょう に?>
「脊柱」とは、いわゆる背骨。この骨には身体を支える以外にもう一つ、脊髄や神経の束の通り道という役割があります。「脊柱管」は、それらの通り道である背骨の中の空間のこと。脊柱管が狭くなり、様々な症状を引き起こすのが「脊柱管狭窄症」です。ではなぜ、M・Tさんの脊柱管は狭くなったのでしょうか?その原因は健康のためと思って始めたテニスでした。実はM・Tさんのように50歳を過ぎると、骨と骨の間にある椎間板が身体の重さで押し出され、脊柱管に少し飛び出してしまうことがあります。そんな状態になっているにも関わらず、腰を回転させるスポーツを急に始めてしまったM・Tさん。テニスの激しい動きに耐えるため、骨が大きく成長。また骨と骨をつなぎ止める役割をしているじん帯も厚くなりました。その結果、脊柱管が狭くなり、神経の束を刺激しはじめたのです。こうしてM・Tさんに起こった最初の症状が頻尿でした。普通は膀胱(ぼうこう)が収縮することによって尿が排出されるのですが、脊髄の神経が圧迫されていると、その命令がうまく伝わらず、尿を出し切ることが出来ません。そのため膀胱が満タンになるまでの間隔が短く、たびたび尿意を感じるようになったのです。この病気がやっかいな所は、腰そのものには痛みを感じない場合があること。そのためM・Tさんは泌尿器科に行ってしまい、病気を発見できなかったのです。M・Kさんはその後、テニスにとどまらずジョギングまではじめてしまいました。そのため、脊柱管がさらに狭くなり、神経の束を圧迫。ふくらはぎのしびれが現れました。足の裏に起きた強烈な痛みも、神経への圧迫が原因。そしてテニスの最中に最悪の事態が起きました。サーブの瞬間、ただでさえ圧迫されていた神経が、背骨を思い切り反らしたことで、限界に達し、強烈な痛みがはしりました。さらに転倒して、腰を打ちつけたことで神経が損傷。二度と自分の力で歩くことのできない体になってしまったのです。
実は50歳以上の男性の80%、女性の60%に何らかの腰の骨の異常が見つかっています。そんな人が急激にスポーツを始めると、恐ろしい結末が待っているかも知れないのです。