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『本当は怖い発疹〜運命の7日間〜』 |
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N・Kさん(女性)/12歳(当時) |
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小学生 |
親子3人で夏山キャンプに出かけ、大自然の中で楽しい時間を過ごした一家。
帰ってから5日目、父親が出張に出かけようとしていると、娘のN・Kちゃんが腕にできた「発疹」を気にしていました。しかし、両親は単なる汗疹(あせも)だと思い、特に気にとめることはありませんでした。ところが、その後、N・Kちゃんに様々な症状が現れ始めました。 |
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(1)発疹
(2)微熱
(3)発熱
(4)発疹が全身に広がるる
(5)40度の高熱
(6)小豆(あずき)大の発疹
(7)母親にも発疹が現われる
(8)痙攣(けいれん)
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日本紅斑熱(にほんこうはんねつ) |
<なぜ、発疹から日本紅斑熱に?> |
「日本紅斑熱」とは、ある病原体が体内に侵入することによって起こり、最悪の場合、死に至ることもある恐ろしい病です。この聞き慣れない病気にN・Kちゃんが冒された原因は、一家で出かけたキャンプにありました。N・Kちゃんはそこで草むらに潜んでいた体長2ミリのマダニに刺されてしまったのです。マダニは、主に山間部に生息するダニの一種ですが、恐ろしいのは一度吸血すると、人間の体から離れないように固定する機能を持っていること。N・Kちゃんの場合もキャンプから帰って3日間、マダニはずっと体に吸着したまま血を吸い続けていました。そして、この時、ある病原体が侵入を開始していました。それは「リケッチア」。リケッチアとは、マダニの体内に生息する微生物。マダニとは共生しているものの、ひとたび人間に感染すると、突如として猛威を奮うのです。
N・Kちゃんの体内に侵入したリケッチアは、恐るべきスピードで増殖を始めました。最初にできた発疹は、増殖したリケッチアが血液に乗って全身に広がり、皮膚に炎症を起こしたため。さらに急な発熱や、痙攣が起こったのは、リケッチアが出した毒素が原因でした。お母さんにでた症状は娘のN・Kちゃんから感染したものではなく、お母さん自身もマダニに刺されていたためでした。日本紅斑熱の発疹は風疹とほとんど見分けがつきません。唯一、我々でも気づく違いは発熱の仕方。日本紅斑熱の場合、熱のピークが12時間周期でやってきます。N・Kちゃんの場合、朝、熱が下がっていたため、安心してしまい症状が悪化。意識不明にまで陥ってしまったのです。しかし、二人はギリギリのところで発見されたため、治療により一命を取りとめることが出来ました。日本紅斑熱を引き起こすマダニは、温暖な草木の生えている地域に生息しています。1984年に発見されたばかりのこの病気。毎年50人ほどの症例が報告されていますが、それも氷山の一角に過ぎないのかも知れません。 |