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『本当は怖い風邪~溢れ出た悪魔~』 |
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O・Yさん(男性)/31歳(当時) |
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サラリーマン |
大手総合商社に転職、新しい職場で早く実績をあげたいと張り切っていたO・Yさん。
無理をしすぎたのか、週末に風邪をひいて寝込んでしまいました。
月曜の朝、まだ鼻がぐずつくものの、どうにか熱は下がり、O・Yさんは会社に行くことに。
鼻水が少し出るくらい大丈夫と、甘く見ていたO・Yさんですが・・・
やがて様々な症状が出始めます。 |
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(1)風邪
(2)鼻づまり
(3)黄色い鼻水
(4)口臭
(5)二度目の風邪
(6)右目の周りが赤くなり痛む
(7)右目の強い痛み
(8)右目の失明
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眼窩膿瘍(がんかのうよう) |
<なぜ、風邪から眼窩膿瘍に?> |
眼窩膿瘍とは、眼球や視神経などが通っている「眼窩」というくぼみに膿がたまり、炎症を起こす病。最悪の場合、失明してしまうこともあります。O・Yさんの場合も、右目の奥にたまった膿が視神経を冒し、視力を奪っていました。でも一体どうして目の奥に膿がたまってしまったのでしょうか?実はO・Yさん、自分でも気づかないうちに、慢性副鼻腔炎という病に冒されていました。慢性副鼻腔炎とは、風邪をひいた時に起こる鼻の炎症が慢性化してしまう病。O・Yさんの場合、風邪のウィルスが副鼻腔の奥にまで入り込み、そこでの炎症が膿を発生させ、ひどい鼻づまりや黄色い鼻水といった症状を引き起こしたのです。実はこの程度の副鼻腔炎なら誰にでもよく起きること。しかし、O・Yさんの場合、新しい職場でのストレスと激務によって、免疫力が著しく低下。さらに病院に行かず放っておいたことで、副鼻腔の炎症が慢性化してしまったのです。3ケ月も鼻づまりや黄色い鼻水が続いたあの症状こそ、慢性副鼻腔炎になった証でした。そして妻に指摘された口臭。あれは副鼻腔に大量に発生した膿の臭いが口を伝わって漏れ出たため。実はこの慢性化している状態が、この病気の一番危険な時でした。そして再び、ひいてしまったあの風邪。この時、なんと副鼻腔に新たな細菌が入り込んでしまいます。それは通常なら免疫によって防ぐことができる、連鎖球菌というごくあるふれた細菌。ところが炎症の慢性化によって弱りきっていたO・Yさんの副鼻腔は、細菌によってさらに炎症が悪化。爆発的に膿の量が増えてしまったのです。副鼻腔はちょうど目の視神経などが通る眼窩の横に位置しています。あの目の周りの赤い腫れは、副鼻腔のすき間を埋めつくしていった大量の膿が、隣り合った眼窩へと流れ込み、目の周りが炎症を起こしたため。この時点で病院に行き適切な治療を受けていれば、失明には至らなかったかも知れません。ところがO・Yさんは、鎮痛剤を飲み、そのまま眠ってしまいました。そしてついに視神経が激しい炎症を起こし、失明という最悪の事態を迎えることになってしまったのです。O・Yさんのように眼窩膿瘍で失明にいたるのは、ごく稀なケース。しかし、鼻づまりや黄色い鼻水をたいしたことがないとたかをくくっていると、最悪の場合、失明にまでいたってしまうこともあるのです。 |