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『本当は怖い浮き出た血管~美容師を襲う恐怖の罠~』 |
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S・Kさん(女性)/29歳(当時) |
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美容院経営 |
東京郊外の住宅地で、美容院を営んでいるS・Kさん。
先月、二人目の子どもを出産したばかりですが、早々と仕事に復帰、美容院を切り盛りしていました。ところが、ある日、足元を見ると、膝の裏側に血管が浮き出ていました。しかし、特に痛みもないため放置していました。それから10年後、足に浮き出ていた血管は目立たなくなっていましたが、新たな症状が現れはじめます。 |
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(1)足の血管が浮き出る
(2)足のむくみ
(3)足のかゆみ
(4)赤いコブが出できる
(5)コブから赤い筋ができる
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下肢静脈瘤(かし じょうみゃくりゅう)による肺梗塞 |
<なぜ、浮き出た血管から肺梗塞に?> |
肺梗塞とは、肺の動脈に血栓が詰まり、最悪の場合、呼吸不全で命を失うという恐ろしい病。S・Kさんが肺梗塞になった原因は、やはりあの浮き出た血管にありました。病名、下肢静脈瘤。下肢静脈瘤とは、足の皮膚のすぐ下を通っている静脈が異変を起こし青白く浮き上がったり、くねくねと蛇行する病気です。S・Kさんの場合、お腹の中で胎児が成長したことにより、足の静脈が圧迫され、血液が逆流。足の血管が浮き上がったのは、静脈が膨らんでしまったものだったのです。しかし、下肢静脈瘤は、日本人の五人に一人がかかるといわれる病気。通常なら放っておいても特に問題はありません。S・Kさんが下肢静脈瘤から肺梗塞になってしまったのは、連日、長時間にわたって立ち仕事を続けていたため。長時間、棒立ちの状態だと、足の筋肉による血管のポンプ作用が働きづらくなり、逆流した血液が静脈の弁を圧迫。S・Kさんの足の静脈弁は、10年という歳月をかけ破壊されてしまったのです。足のむくみとしつこいかゆみは、静脈弁が壊れたことで、老廃物の多い血が足にたまったのが原因でした。通常、ここまで病状が悪化すると静脈の浮き上がりや蛇行が目立ってきます。S・Kさんの異変をわからなくした犯人は、高カロリーの食事。脂っぽい食事を好んだ彼女の体は、皮下脂肪を蓄積し、下肢静脈瘤を隠してしまったのです。さらに、この偏った食事はS・Kさんの血を濃縮型血液に変えていました。あの赤いコブは、曲がりくねった下肢静脈瘤の中で濃縮型血液が固まった「血栓」だったのです。急速に成長した血栓は、わずか一晩でふくらはぎから足の付け根まで続く、長い血の塊になりました。コブから伸びた赤い筋は、長い血栓が引き起こした炎症だったのです。そしてS・Kさんが立ち上がった瞬間、長い血栓の一部がはがれ、血流に乗って心臓から肺動脈へと到達。血管を完全に塞いでしまったため、彼女は肺梗塞に倒れたのです。下肢静脈瘤は、それ自体で命に関わる病気ではありません。でもS・Kさんのように油断していると、肺梗塞などの思わぬ重病を招く可能性があるのです。 |