|
『本当は怖い海外旅行の疲れ〜美食の代償〜』 |
|
K・Tさん(男性)/60歳(当時) |
|
無職 |
35年間勤めあげた会社を定年退職し、夫婦で東南アジア旅行にやってきたK・Tさん。
海外ならではの珍しい料理を食べてみたいと、白身魚の刺身など数々の料理を堪能しました。
ところが、帰国して1週間後を過ぎた頃から、様々な異変が現れ始めます。 |
|
(1)体がだるい
(2)赤みを帯びたコブができる
(3)コブが消える
(4)別の場所に赤いコブができる
(5)コブが再び消える
(6)目の違和感
|
|
有棘顎口虫症(ゆうきょくがっこうちゅうしょう) |
<なぜ、海外旅行の疲れから有棘顎口虫症に?> |
「有棘顎口虫」とは、アジア全域に生息する寄生虫の一種で、川魚などの淡水魚に、稀に寄生しています。その川魚を生で食べることで、幼虫が人間の体内に侵入し、最悪の場合、失明する恐れもあるのが「有棘顎口虫症」です。海外旅行や最近のグルメブームで、この病に感染する日本人が急増。現在、日本では年間100例以上もの有棘顎口虫症が確認されています。K・Tさんも、東南アジア旅行で食べた、あの「生の川魚」で感染してしまったのです。まず、体内に侵入した5ミリ程度の幼虫は、食道を通って胃から腸に達しました。この時、幼虫は頭のトゲでK・Tさんに襲いかかりました。頭部をドリルのように回転させながら、なんと小腸の壁を貫き、血管へと侵入。血流に乗って肝臓にまで辿り着いたのです。帰国後、K・Tさんが感じたあのだるさは、幼虫が肝臓に侵入したことで、肝機能障害を引き起こしていたため。実は幼虫にとって、免疫抗体のある人間の体は居心地が悪いのです。そのため、幼虫は体内をさまよい始めました。あの最初のコブの正体は、幼虫が皮下脂肪にまで移動し、一時的にとどまったせいだったのです。その後、幼虫がさらに移動を繰り返したため、コブが消えたり、別の場所に現れたりしました。この病で本当に恐ろしいのは、幼虫が移動すると痛みもコブの跡も残らないため、その存在に気づきにくいこと。有棘顎口虫は消炎鎮静効果のある分泌物をまき散らしながら移動するため、痛みや赤みを消し去っていたのです。これが有棘顎口虫のずる賢さ。そして体内をさまよった幼虫はついに頭部へと移動。さらに頭蓋骨の数ミリほどの穴から脳に侵入し、前頭葉の上を通り抜け、ついにはより免疫抗体の少ない眼球に辿り着きました。こうして幼虫は、K・Tさんの目に現れたのです。幸いK・Tさんは発見が早く、幼虫の摘出手術にも成功。失明という最悪の危機を免れました。しかし有棘顎口虫の幼虫の存在は気づきにくく、その寿命も長いため、知らずに過ごしている患者が数多くいると言われているのです。 |