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「スギ花粉症から気管支喘息にならないためには?」 |
(1) 花粉症の症状を自分にあった適切な薬などで抑える
(2) 外だけでなく家の中でも花粉症対策をしっかりやる
(3) もし、今年はじめて花粉症の症状がではじめたなら、アレルギー科などでの検診をお勧めします。 |
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『本当は怖い花粉症(2)
〜危険な症状を起こしやすい花粉の種類〜』 |
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Y・Kさん/43歳(当時) |
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主婦 |
東京の郊外で暮らし、これまで花粉症とは全く縁のなかったY・Kさん。ある日、外に出た途端、くしゃみと鼻水が止まらなくなり、以来外出のたび、悩まされるように。もともと心配性だった彼女は、初めてのスギ花粉症を克服するため、徹底的に予防につとめますが、様々な異変に襲われます。 |
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(1)くしゃみ・鼻水
(2)目のかゆみ
(3)首のかゆみ
(4)皮膚の赤み
(5)胸の痛み
(6)下痢
(7)目の前が暗くなる
(8)全身が赤く腫れる
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アナフィラキシーショック |
<なぜ、花粉症からアナフィラキシーショックに?> |
アナフィラキシーショックとは劇症型のアレルギー反応。体中の抗体が暴走し、あらゆる場所が腫れあがってしまう恐ろしい病。呼吸困難や血圧低下で死を招くことさえあります。その原因物質の一つに、なんと花粉があるのです。そもそも花粉症を引き起こすのは、有名なスギ花粉をはじめ、その数は50種類以上。Y・Kさんを悩ませていたスギ花粉はアナフィラキシーショックの原因ではありませんでした。(スギ花粉でアナフィラキシーショックを起こすことは殆どありません)犯人は庭に咲いたあのマーガレットの花。マーガレットはキク科の花で、Y・Kさんのアナフィラキシーショックはキク科の花粉が原因。彼女はスギ花粉症であると同時に、キク花粉症を発症していました。もともとスギ花粉のアレルギー体質だった彼女は、体内に侵入したスギ花粉を異物とみなし、抗体を増やし続けていました。そして例年以上にスギ花粉が飛び交ったこの年、ついにY・Kさんの抗体は発症のレベルに達し、スギ花粉に対して過剰反応、くしゃみや鼻水が始まりました。この時、スギ花粉症を発症したY・Kさんの体は、他のアレルギー物質に対しても敏感になっていました。そしてスギ花粉症とほぼ同時に、キク花粉症を発症してしまったのです。それにも関わらず、自分がキク花粉症だとは気づかなかったY・Kさんは、スギ花粉の対策ばかりしていました。これこそが花粉症の落とし穴。マーガレットの花を見ようと近づいたときの目のかゆみは、花粉が目の粘膜に付着したことによるアレルギー反応だったのです。ではキク科の花粉がスギ花粉よりもアナフィラキシーショックを起こす可能性が高い理由は?キク科の花粉の多くは、スギ花粉ほど遠くに飛ぶことはなく、身近で接触したときにしか体内に入ることはありません。そのため、アレルギーを持っていることを自覚していない人が多く、普段花粉にさらされていない分、いったん体に入ると強いアレルギー反応を起こし、劇症化してしまうことがあるのです。さらにもう一つ、Y・Kさんにとって不運だったのが、母親が持ってきてくれたガーベラ。家の中に大切に飾られていたこの花もまた、キク科の花でした。あの首のかゆみと赤みは、ガーベラの花粉が皮膚に付着し、アレルギー反応を起こしたものだったのです。その後も、スギ花粉を避けようと密閉した部屋の中で、ガーベラの花粉と接触し続けてしまったY・Kさん。しかしそれだけではまだ、アナフィラキシーショックを引き起こすことはありません。抗体の暴走が始まるきっかけとなったのは、あの布団。自分がキク花粉症であることを知らないY・Kさんは、スギ花粉が終わったからと庭に布団を干してしまいました。そのため、すぐそばに咲いていたマーガレットの花粉が布団の表面に大量に付着。Y・Kさんは彼女にとって凶器と化した布団に包まれ、大量のキク花粉を吸い込んでしまいました。体内に侵入したキク花粉の一部は、一気に気管支から肺に到達。抗体は激しいアレルギー反応を起こし、ヒスタミンなどの化学物質を放出。そのため肺が炎症を起こし腫れ上がってしまったのが、胸の痛みの原因。あの下痢は、鼻水などの分泌物とともに腸まで達したキク花粉を体の外に出してしまおうと防御反応が働いたため。さらに急に目の前が暗くなったのは、花粉が付着した眼球でも激しいアレルギー反応が起こり、血圧の急激な低下とともに神経が異常をきたしたためでした。そしてY・Kさんは、そのまま意識を失ってしまいました。ここまで来ると、抗体の制御は不能。激しいアレルギー反応によって、全身が赤く腫れ上がってしまったのです。
スギ花粉症が発症した時に、病院で血液検査を受けていれば、キク花粉アレルギーだということが簡単にわかったはずなのに…。キク科やイネ科の花粉は、アナフィラキシーショックを起こすことがあるので特に注意が必要です。スギ花粉アレルギーを持っている人は、キク花粉を初め、複数の花粉アレルギーを持っている可能性が高いのです。 |
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「花粉症からアナフィラキシーショックを起こさないためには?」 |
(1) 自分がアレルギーを持つ花粉の種類と、その花粉の飛ぶ季節を知る
(2) 花粉症になる季節には過労、寝不足、激しい運動を避ける
(3) もし少しでも体に違和感をもったなら、アレルギー科などでの検診をお勧めします |
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『本当は怖い花粉症(3)〜危険な鼻づまり〜』 |
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N・Tさん/62歳(当時) |
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木工所経営 |
40年間まじめに働いていたお陰で、一人娘も無事嫁がせ、今は夫婦二人で幸せに暮らしていたN・Tさん。2月に入ってから急に左側の鼻が詰まりはじめたのを不思議に思っていましたが、娘からそれは花粉症だと言われ、納得。しかし、たかが鼻づまりと、特に病院にも行かず放っておいてしまいました。そんなN・Tさんに次々と異変が襲いかかります。 |
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(1)左側の鼻だけつまる
(2)黄色く粘ついた鼻水に血が混じる
(3)左目からだけ涙が出る
(4)左の上の歯が痛む
(5)左の頬が腫れる
(6)左の頬が異常に腫れ、激痛がする
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上顎洞癌(じょうがくどうがん) |
<なぜ、花粉症から上顎洞癌に?> |
N・Tさんの身体を蝕んでいたのは、花粉症ではなく癌でした。私たちの鼻の穴は、「副鼻腔(ふくびくう)」と呼ばれるいくつもの空洞につながっています。その一つが「上顎洞」。上顎洞癌とは、文字通りこの上顎洞が癌に冒され、最悪の場合、死に至ることもある病。現在、この病気を発症する人は年間およそ1000人。中でも多いのが50代以上の男性です。そして花粉症の時期に症状が出た場合、花粉症と勘違いしてしまう可能性がある恐ろしい病なのです。ではなぜN・Tさんは癌に冒されてしまったのでしょうか?実は上顎洞癌が発症する詳しいメカニズムは、まだ解明されていません。しかしN・Tさんの場合、その原因の一つにホコリが考えられました。作業場で毎日ホコリを吸い続けたN・Tさん。すると上顎洞の粘膜を覆う線毛(せんもう)細胞が傷つき、炎症が起こります。そして、これに拍車をかけたのが40年以上に渡る喫煙でした。タバコの刺激で上顎洞の炎症は、しだいに慢性化。ついには細胞が癌化してしまったのではないか、と考えられるのです。そして上顎洞癌の最も恐ろしいところは、癌が出来てもしばらくは何の症状も出ないこと。これは癌が何もない空洞の中で成長するためなのです。そしてようやく現れた最初の症状が、左側だけの鼻づまりでした。この時、2センチほどに成長した癌が、左側の鼻腔を圧迫。そのため、左側の鼻だけが詰まったのです。これこそが花粉症と上顎洞癌を見分ける決定的な症状。花粉症の場合は、両方の鼻が詰まります。しかし上顎洞癌の鼻づまりは、必ずどちらか片方だけなのです。それは癌が左右両方同時に出来ることがまずないため。さらにもう一つ、花粉症との大きな違いがあります。それがあの血が混じり、黄色く粘ついた鼻水。花粉症の鼻水は、水のように透明でサラサラの場合がほとんど。一方、上顎洞癌の場合は、癌細胞の一部が腐り始めることで、悪臭をともなったウミとして排出されます。同時に癌そのものからも出血するので、あのような鼻水が出たのです。もしこの時点で耳鼻科に行き、CTやMRIなどの検査をしていれば、癌を早期に発見することができたはず…。しかし、不運にもN・Tさんは、自分を花粉症だと思い込んでしまいました。そしてたかが鼻づまりと放置したことが命取りだったのです。最初の鼻づまりから1ケ月後に現れた、あの片側だけの涙目。あれは4センチほどに成長した癌が、上顎洞の上の方へと進行し、涙管を圧迫。行き場を失った涙があふれ出たために起きたもの。鼻づまりと同じく、目の症状ももちろん左だけ、顔の片側だけに症状が出るのが、この病気の特徴なのです。そしてついに意外な場所に症状が現れました。あの歯の痛みです。すぐさま病院へ行ったN・Tさんですが、痛みの本当の原因は、実は歯ではなくやはり癌でした。癌が今度は上だけでなく、下の方にも増殖。歯の神経を刺激したためズキズキとした痛みに襲われたのです。そして癌細胞は日に日に増殖を続け、ついに頬の骨を突き破ってしまいました。N・Tさんを襲ったあの左頬の異常な腫れと痛みは、これが原因。病院に運び込まれた時、上顎洞癌はなんと6センチにもなっていました。こうなるともはや手遅れ。癌は眼球の奥から脳へと進行。癌細胞からの出血が頭蓋骨の内側に広がり、その結果、脳を圧迫。機能を停止させてしまうのです。入院から2ケ月後、治療の甲斐もなく、N・Tさんは命を落としました。鼻づまりや涙目といった何気ない症状を、花粉症だと思い込んでしまったがための悲劇でした。 |
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