|
『本当は怖い肌のかゆみ〜逆流〜』 |
|
K・Fさん(女性)/48歳(当時) |
|
クリーニング店経営手伝い |
明るい性格で、近所の人たちからも親しまれる存在だったK・Fさん。彼女の唯一の楽しみは、毎日の晩酌。子供もなく、ひたすら働き続けてきたK・Fさんにとって、何よりホッとできる時間でした。
しかし、そんなK・Fさんにもちょっと気になることが。時々身体のあちこちがかゆくなるのです。
特に湿疹や赤みがあるわけでもないため、冬で肌が乾燥したせいと軽く考えていたK・Fさん。健康診断の結果、一抹の不安を覚えた彼女は、一大決心をして禁酒しますが、その後も様々な異変に襲われます。 |
|
(1)肌のかゆみ
(2)しつこい肌のかゆみ
(3)肌のかゆみがひどくなる
(4)背中の激痛
(5)吐血
|
|
原発性胆汁性肝硬変(げんぱつせい たんじゅうせい かんこうへん) |
<なぜ、肌のかゆみから原発性胆汁性肝硬変に?> |
そもそも私たちの肝臓には栄養素の貯蔵や有害物質の解毒などのほか、もう一つ大切な働きがあります。それは脂肪やビタミンなどの消化吸収を助ける胆汁という成分をつくること。原発性胆汁性肝硬変とは、アルコールや肝炎ウィルスではなく、何らかの原因で免疫機能が異常をきたし、この胆汁の流れる管が攻撃され、破壊されてしまう病気なのです。その結果、行き場を失った胆汁があふれ、肝臓を侵食。さらに血流に乗って全身を巡りはじめることで、特徴的な症状を引き起こすのです。それが、しつこく続いた、あの肌のかゆみ。血管を流れる胆汁が全身の皮膚の末梢神経を刺激したことで、かゆみが起こっていたのです。しかし、ただの乾燥肌と軽く考えていたK・Fさんは、健康診断でもかゆみを医師に伝えず、お酒を控えれば大丈夫と勝手に判断してしまいました。これこそが落とし穴。その間にも沈黙の臓器と呼ばれる肝臓は、静かにゆっくりと蝕まれ続けていたのです。そしてついに起こったのが、背中の激痛。実はあの時、K・Fさんの背骨は骨折していたのです。一体なぜそんなことになってしまったのでしょうか?胆管が破壊されたせいで、K・Fさんの腸では、本来送られるはずの胆汁が不足していました。そのため、骨を形成する栄養素が吸収されなくなってしまい、K・Fさんの骨はちょっとした衝撃ですぐに折れてしまうほどボロボロの状態になっていたのです。さらに、この時、固くなっていたK・Fさんの肝臓に血液が入ることができずに逆流。その結果、食道の静脈が圧力に耐えられなくなり、ついに破裂。K・Fさんは吐血してしまったのです。幸い一命をとりとめたK・Fさんは今、リハビリを続けながら、肝移植をするための肝臓提供者を待ち続けています。現在、この病気にかかっている患者は、およそ2万人。しかも原因はわかっていませんが、その9割はなんと女性です。肝炎ウィルスがなく、アルコールも飲まないからと行って、決して安心してはいけないのです。 |