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『本当は怖い頭痛~染み出した恐怖~』 |
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S・Eさん(女性)/31歳(当時) |
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主婦
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5月の連休、久しぶりに家族旅行を楽しんだS・Eさん。5年ぶりの楽しいひとときでしたが、はしゃぎすぎたのか、足を滑らせ尻餅をついてしまいました。たかが尻餅と思っていたS・Eさんですが、その翌日、軽い頭痛に襲われました。しばらく横になるとすっかり治まったため、昨日の疲れが出たのだろうと気にもとめていませんでしたが、やがて様々な症状が現れます。 |
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(1)軽い頭痛
(2)激しい頭痛
(3)首の痛み
(4)倦怠感
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脳脊髄液減少症(のうせきずいえき げんしょうしょう) |
<なぜ、頭痛から脳脊髄液減少症に?> |
そもそも脳と脊髄は、髄液の中に浮かんだ状態になっています。つまり髄液が外部の衝撃から脳や脊髄を守っているのです。「脳脊髄液減少症」とは、髄液が何らかの原因で漏れ出すことで様々な症状を引き起こし、その結果、社会生活に破綻をきたすこともある恐ろしい病。実は、3年ほど前に発見されたばかりのまだあまり知られていない病気です。とはいえ決して珍しいものではなく、現在およそ5万人の患者がいると考えられています。それにしてもS・Eさんはなぜ、この病に冒されてしまったのでしょうか?すべての発端は、家族旅行での尻餅にありました。転倒した時の衝撃で、脊髄を覆っていた硬膜に小さな亀裂が発生。少しずつ髄液が漏れだしていたのです。最初にS・Eさんを襲ったあの頭痛。あれは髄液が減ったために脳が沈み込み、脳を覆っていた硬膜が引っ張られることで生じたと考えられます。その後の激しい首の痛みや倦怠感。あれも髄液が減ることで引き起こされた症状だったのです。この病気のやっかいな点は、MRIやCTなどの検査でも発見が難しいこと。そのため、S・Eさんのように、いわゆる「ドクターショッピング」に陥ってしまうことが多いのです。そして、この病気の最大の特徴は、普通の頭痛と違って、横になると急激に治まるということ。これは寝ている状態なら頭頂部の髄液の減少が少なく、硬膜も引っ張られないため。あの脳神経外科医も、この点に気づき、S・Eさんの病気を突き止めることができました。2週間後、元気になって退院したS・Eさん。この病気の7割は、適切な治療で回復が可能なのです。しかし、病に気づくのが遅いと、S・Eさんのように家庭崩壊など、取り返しのつかない事態になることも少なくありません。また若い患者の場合、引きこもりや不登校に間違われたまま放置されているケースもあるのです。 |