|
『本当は怖い早食い〜蝕まれたスクリーン〜』 |
|
O・Nさん(男性)/35歳(当時) |
|
飲食店経営 |
夫婦で営む定食屋が繁盛し、大忙しの毎日を送っていたO・Nさん。一息ついて食事にありつけるのは、ランチタイムが終わってから夜の仕込みまでの短い時間。そのため、彼はご飯もよく噛まず、急いでかきこむ早食いが癖になっていました。そんなO・Nさんに最近気になることが・・・。たっぷり食事を摂っても、1時間もすると、お腹が減って仕方がないのです。なぜ、こんなにお腹がすくのか本人にもわかりませんでしたが、その後もさらなる異変に襲われます。 |
|
(1)空腹感
(2)目の中に黒い糸くずのような物が浮かぶ
(3)風景がゆがんで見える
(4)岩のような物が見える
(5)視覚が真っ赤に染まる
|
|
糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせい もうまくしょう) |
<なぜ、早食いから糖尿病性網膜症に?> |
「糖尿病性網膜症」とは、糖尿病の合併症の一つで、目の網膜に障害が起きる病。糖尿病が進行すると、3人に1人が発症し、年間3000もの人々が、この病で失明しています。実はO・Nさんも10年前から重度の糖尿病に蝕まれていました。そもそも糖尿病は、血液が糖分で溢れかえり、全身の血管で障害が起きる病。O・Nさんの場合、そのターゲットとなったのは目の網膜でした。網膜は、眼球の裏側にある見たものを映し出す膜のこと。その表面をびっしりと覆った毛細血管が長年、糖分だらけの血液にさらされたことで、いつしか詰まっていたのです。その結果、酸素不足に陥った網膜では、新生血管という新しい血管を作り出しました。ところが、この新生血管はもろく、破れてしまいやすいのが特徴。ただの
飛蚊症(ひぶんしょう)だと思い込んでいた、あの目の中に浮かんだ黒い糸くずのようなもの、そして風景が歪んで見えた現象は、新生血管から出血した結果、網膜の細胞があちこちで死んでしまい、見たものが正常に映らなくなったことによるものでした。そしてついに迎えた運命の朝。O・Nさんが見た、目の中の岩のようなもの。あれは寝ている間に、眼球の内側で出血したことが原因。岩のような影は、血液が固まったものだったのです。そして、この時のショックで彼の血圧は上昇。ついに大出血が起こり、眼球全体が血で赤く染まってしまったのです。では一体なぜ、O・Nさんは、ここまで重度の糖尿病になってしまったのでしょうか?その原因は、彼の食べ方にありました。小さい頃から、よく噛まず急いで食べ物をかきこむ、いわゆる「早食い」が癖だったO・Nさん。こういう食べ方をすると、血液中に糖分が急激に増加し始めます。すると、すい臓はこの糖分を処理しようと、インスリンを一気に大量分泌。その機能は大きく低下していました。例え、O・Nさんと同じ量の食事を摂ったとしても、妻のHさんのようにゆっくり食べていれば、インスリンの分泌はゆるやかになり、すい臓にも負担はかからなかったのです。こうして長年に渡り、糖尿病に蝕まれたO・Nさん。ようやく現れた症状が、あの異常な空腹感でした。あれこそ彼にとって、糖尿病を知らせる唯一のシグナルだったのです。 |