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『本当は怖い子供の頃の頭痛〜悪魔の目覚め〜』 |
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O・Sさん(男性)/35歳(発症当時) |
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コンビニ店経営 |
30年ほど前の東京の下町。夫に先立たれ女手一つで八百屋を営んでいたO・Mさん(当時29歳)の一人息子S君(当時5歳)は、いつも青っぱなを垂らしていました。男の子なら当たり前と誰も気にとめていませんでしたが、小学生になった頃、小さな異変が起こります。S君が度々頭痛を訴えるようになったのです。月日は流れ、八百屋はコンビニ店に生まれ変わり、35歳になったSさんは苦労をかけた母親に楽をさせてあげたいと頑張っていましたが、そんな彼の体に原因不明の異変が襲いかかります。 |
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(子供の頃)
(1)頻繁に起こる頭痛
(35歳)
(2)ろれつが回らない
(3)手が勝手に動く
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もやもや病 |
<なぜ、子供の頃の頭痛からもやもや病に?> |
「もやもや病」とは、脳に血液を送る動脈が何らかの原因で詰まり、その代役として脳内に無数の細い血管が新たに生み出されてしまう病。この血管がタバコの煙のように「もやもや」して見えることから「もやもや病」と呼ばれるようになりました。なぜ動脈が詰まるのか、原因は特定されていません。しかしO・Sさんの場合、その原因の一つと思われる症状が、なんと30年前に出ていたのです。それこそ彼が垂らしていた、あの青っぱな。実はあの時、彼の鼻の中では、風邪のウィルスや細菌による炎症が起きていました。放ったらしにされたその炎症は、副鼻腔にまで及び、さらにそのすぐ後ろを通る大脳の動脈にまで拡がっていきました。そのため、動脈が詰まり始めたと考えられるのです。驚くべきことに、詰まり始めた動脈は、脳の酸素不足を補おうと新たに細い血管を作り出しました。この時、起きた症状こそ、あの頭痛。あの時、詰まり始めた動脈だけではなく、頭皮の血管からも酸素不足を補うため、細い血管が大脳の中へと伸び始めていました。その結果、血流が増し、頭皮の血管が拡がったため、あのドキドキという頭痛が襲ったのです。こうして、およそ10年の歳月を経て、O・Sさんの頭の中では、詰まり始めた動脈を補うための細い血管が張り巡らされていました。そしてそのネットワークが完成し、動脈の代わりを何とか果たすことが出来るようになったため、頭痛は消えてしまったのです。しかしこれが、「もやもや病」の落とし穴。動脈の代役となったのは、元々がごくごく細い血管。十分な酸素を送ることはできず、O・Sさんの脳は、慢性的な軽い貧血状態にありました。その酸素不足が積もり積もって、脳細胞が壊死する小さな「脳梗塞」が始まったのです。ろれつが回らなくなってしまったり、手が思うように動かなくなってしまったのは、脳のあちこちで起こり始めた小さな梗塞が原因だったのです。そして、長年酷使し続けた細い血管に、限界が訪れようとしていました。重い荷物を持ち上げようと力んだことで、細い血管の血流は一気に増大、高まった圧力に耐えられなくなり、ついに破裂、脳内出血を起こしたのです。もやもや病は日本人に特に多い病。風土の違いなのか、理由は定かではありませんが、アメリカのなんと30倍という世界一の発症率なのです。 |