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『本当は怖いストレス〜幸せに潜む罠〜』 |
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H・Yさん(女性)/34歳(当時) |
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広告代理店勤務 |
外資系の広告代理店に転職したばかりのH・Yさん。入社早々大きなプロジェクトを任されプレッシャーと向き合いながら頑張っていましたが、プロジェクトも大詰めを迎えた頃、37度4分の微熱を出しました。風邪を引いたと思った彼女は、市販の風邪薬を飲んで仕事を続け、見事に契約を獲得。プレッシャーから解放されたH・Yさんには、念願のマイホームへの入居と夫の誕生日という楽しみな出来事が待っていましたが、なぜか原因不明の異変が続くようになります。 |
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(1)微熱
(2)毎日微熱が出る
(3)異常な倦怠感
(4)異常な脱力感 |
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慢性疲労症候群 |
<なぜ、ストレスから慢性疲労症候群に?> |
「慢性疲労症候群」とは、強いストレスによって免疫機能が低下し、脳の神経細胞に異常が発生。ひどい倦怠感や脱力感が半年以上続いてしまうという病気です。現在、慢性疲労症候群の患者数は、全国でおよそ22万人。予備軍と言われる人は、推計なんと240万人。それもH・Yさんのような25歳から34歳の女性が最もかかりやすい病気なのです。しかし、なぜH・Yさんは、この得体の知れない病気になってしまったのでしょうか?きっかけは、あの微熱を出した風邪にありました。普通、風邪をひくと体内に侵入したウイルスに対して、サイトカインという免疫機能を活発にする物質が作られます。このサイトカインが免疫細胞を刺激し、ウイルスを撃退することで風邪は治るのです。ところがH・Yさんは、ある事が原因でなかなか熱が治まりませんでした。そのある事とは…ストレス。そう、すべての原因はストレスにあったのです。実はストレスがかかると、人間の免疫細胞は力を失い、いくらサイトカインが刺激しても、ウイルスを撃退できなくなるのです。しかもH・Yさんの場合、これだけではすみませんでした。その後、さらなるストレスにさらされ続けた結果、弱った免疫細胞を働かせようと、大量のサイトカインが作られてしまったのです。これこそが慢性疲労症候群の元凶でした。H・Yさんを突然襲った、あの信じられないほどの倦怠感と脱力感。それは増えすぎたサイトカインが脳の神経細胞を刺激し、異常を引き起こしたために現れた症状なのです。とはいえ、彼女の場合、プロジェクトは成功。その後は新居への引っ越しや夫の誕生日計画など、幸せなことばかりでストレスとは縁遠い生活だったはず。それなのに一体なぜ?ストレスはどこにあったというのでしょうか?実は幸せに見えた一連の出来事も、ストレスだったのです。なぜならストレスとは、環境や状況が変化した時に生じるもの。たとえ嬉しいことでも、その変化が大きければ、本人は感じていなくても、体はそれをストレスとして捉えてしまいます。慢性疲労症候群は、こうした様々なストレスが短期間に重なって起きると、発症しやすくなるのです。この病気の厄介なところは、すべてが脳の中で起きている現象のため、内臓や血液には異常が現れず、通常の検査では何の異変も見つけられないことにあります。幸い、この病気の専門医に巡り会えたH・Yさん。適切な治療を受け、3年後には家事が出来るまでに回復。しかし、彼女が仕事に復帰できる見通しは、まだ立っていません。命を奪う病気ではありません。しかし失うものは決して少なくないのです。 |