診察日:2005年9月6日
テーマ:
『本当は怖いドライアイ〜飢えた瞳〜』
『本当は怖い頭痛〜甦る殺人鬼〜』
『本当は怖いドライアイ〜飢えた瞳〜』
K・Mさん(女性)/31歳(当時)
ネットショップ経営
雑貨販売のネットショップを立ち上げたK・Mさんは、雑誌に取り上げられた自分の顔が暗い感じだったため、メガネをやめコンタクトレンズにすることを決意。さっそく近所の眼科で検査を受けたところ、軽度のドライアイと診断されました。コンタクトを使う場合、症状が悪化することがあるため、3ヶ月ごとに定期検診に来るよう医師から指示されます。(ドライアイ…涙の量が少なくなり眼球が乾くことで、目が充血したり、疲れやすくなったりする病気。)2週間で交換するソフトコンタクトレンズを購入した彼女は、以前から憧れていた男性に綺麗になったと褒められ、天にも昇る思いでしたが・・・。2ヵ月後、だんだんコンタクトの扱いに慣れて、本来なら毎晩20回こするべきレンズの擦り洗いを2、3回で済ませるようになり・・・その後、様々な異変が現れます。
(1)目ヤニが出る
(2)眼がヒリヒリ痛む
(3)目の充血
角膜びらん
<なぜ、ドライアイから角膜びらんに?>
「角膜」とは、眼の表面で眼球を保護する薄く透明な膜のこと。「角膜びらん」は、この角膜の表面の細胞がはがれ落ち、炎症を起こす病。そのまま放っておくと、眼に重度の障害が起きる可能性もあります。実はK・Mさんは、この病気を発症させやすい危険因子を持っていました。それこそがドライアイです。普段、角膜は涙を通して酸素を取り込んでいます。ところが、ドライアイにより、K・Mさんの涙の量は通常より少ない状態でした。そんな彼女がコンタクトレンンズをつけることにより、わずかな涙の水分がレンズに吸収され、その表面から次々に蒸発していきます。さらにクーラーをかけたまま徹夜でパソコンを使ったことで、涙の蒸発はさらに加速。角膜は酸素不足の状態にあったのです。しかし普通、これだけでは大事に至りません。K・Mさんの症状が悪化した原因は、彼女の誤ったコンタクトレンズの使い方にありました。そう、20回すべきこすり洗いを2、3回に減らしてしまったこと。これでは、レンズの汚れはきちんと落ちません。こうして汚れが付着したままのコンタクトを使った結果、まぶたの裏にアレルギーが発生。目ヤニが増え、かゆみを伴うようになったのです。しかもK・Mさんは、3ヶ月目の定期検診をさぼってしまいました。やがてレンズに付着した汚れは、角膜への酸素の供給をもブロックしてしまいます。完全に酸欠状態に陥った角膜では、表面の細胞が次々と窒息死し、ボロボロの状態に。そしてK・Mさんがレンズを外した瞬間、ボロボロになった表面の細胞がレンズと一緒にはがれ落ちてしまい、角膜がむき出しに。その結果、あのヒリヒリする痛みに襲われたのです。翌朝、コンタクトをつけると痛みが治まりましたが、これはソフトコンタクトレンズがむき出しになった角膜を保護し、一時的に痛みを和らげただけでした。さらに悪いことに、この時、K・Mさんの汚れたレンズには、細菌が取りついていました。そして、彼女の目に侵入していた細菌により、角膜の表面で急激な炎症が発生。K・Mさんは激痛に見舞われたのです。現在、オフィスワーカーの75%にドライアイの疑いがあると言われています。そしてドライアイの人は、コンタクトレンズの使用に一層の注意が必要なのです。
「角膜びらんにならないためには?」
(1)コンタクトレンズは手のひらの上でこすり洗い
(2)1日12時間以内の使用
(3)3ヶ月ごとの定期検診を受ける
(4)ドライアイの方は人工涙液等で目のケアをする
(5)何よりもコンタクトレンズを正しく使うことが大切です。
もしちょっとでも目に違和感を覚えたら、すぐにコンタクトレンズを外し、 眼科専門医に検診してもらうことをおすすめします。
『本当は怖い頭痛〜甦る殺人鬼〜』
S・Nさん(女性)/42歳(発症当時)
会社経営
小さなハウスクリーニング会社を経営するS・Nさん。2年前に離婚して以来、がむしゃらに働き、最近ようやく仕事の依頼は増えたものの、すべての現場を取り仕切っている彼女は疲労困憊の日々が続いていました。そんなS・Nさんに小さな異変が始まったのは、ある夏の朝のこと。仕事に出かけようとした時、ふいに頭全体を締めつけられるような痛みを感じたのです。猫の手も借りたいほど忙しい彼女は、頭痛を我慢してしまいますが、3日経っても頭痛は治まらず、さらに次々と異様な症状が現れます。
(1)頭痛
(2)言葉を間違える
(3)記憶が消える
(4)異常行動
(5)全身の痙攣
ヘルペス脳炎
<なぜ、頭痛からヘルペス脳炎に?>
「ヘルペス脳炎」とは、ヘルペスと呼ばれるウィルスが脳に侵入。記憶や言語を司る神経細胞を壊死させ、最悪の場合、死に至ることもある恐ろしい病です。そもそもヘルペスウィルスとは、日本人の成人の実に90%が体内に宿していると言われるウィルス。通常、健康な人なら何の問題もありませんが、疲労やストレスなどによって免疫力が低下すると、眠っているウィルスが突然目覚め、発病すると言われています。その多くは口唇ヘルペスや帯状疱疹(たいじょう ほうしん)など皮膚や粘膜の炎症だけで、命に関わる事はありません。ところが、ヘルペスウィルスが脳に侵入し、炎症を起こすという最悪のケースがあるのです。S・Nさんはまさに、この最悪のケースでした。なぜウィルスが脳に侵入してしまうのか?その原因は定かではありませんが、日本では年間300人から400人がヘルペス脳炎を発症。うち10%が死に至っています。そして患者の多くは、免疫力が衰え始める40歳以上の中高年なのです。S・Nさんの場合も、40歳を超え免疫の働きが衰え始めたところに、過剰な疲れが加わったことで、眠っていたウィルスが目を覚まし一気に増殖、脳の神経細胞を攻撃し始めました。それが、あの頭痛となって現れたのです。しかしS・Nさんは、単なる軽い頭痛と思い込み、放っておいてしまいました。これが大きな落とし穴。軽い頭痛と思っていても言葉を間違えたり、社員の顔が思い出せなくなるなど症状は一気に進むのです。そして、これらの症状こそ、ヘルペスウィルスが記憶や言語を司る脳神経を蝕み始めた重要なサインでした。この時、すぐに病院で診察を受けていれば、彼女の脳が大きなダメージを受けることはありませんでした。やがて加速度的に増殖したウィルスは、S・Nさんの中枢神経を破壊。ついに意識障害を起こし、異常な行動をとってしまったのです。その後、懸命の治療の結果、無事一命をとりとめたS・Nさん。しかし、この数年間のことは、全く覚えていないという記憶障害が残りました。ヘルペスウィルスは、私たちのおよそ9割が持っているウィルス。つまり誰が、いつヘルペス脳炎になってもおかしくないのです。
「あなたの頭痛が重篤な病のサインかどうか見分けるためには?」
(1)「急性の頭痛」、「今まで経験したことのない痛み」、「日々悪化していく痛み」に注意。
(2) もしちょっとでもそんな痛みを感じたら、迷わず病院で検診されることをおすすめします。