診察室
診察日:2005年11月15日
知らないと助からない応急処置2時間スペシャル!
テーマ: 『知らないと助からない応急処置 脳梗塞』
『知らないと助からない応急処置 突然の心肺停止』
『知らないと助からない応急処置 止血』

『知らないと助からない応急処置 脳梗塞』

T・Mさん(男性)/48歳(当時) 会社員
東京郊外に住むT・Yさんは、結婚して20年、すっかり今時のオヤジになってきた夫のMさん(48歳)に、 小言をいうのが毎日の日課。すべては夫の体を気づかってのことでしたが、ある夜、夫が突然右手をしびれさせ、 グラスをつかみそこねてしまいました。しびれはすぐに治まったため、二人はその異変を気にも留めませんでしたが、3時間後、悲劇が襲います。
(1)手のしびれ
(2)突然、倒れる
(3)ろれつが回らない
脳梗塞
脳梗塞」とは、脳の血管が血栓などで詰まり、脳の一部分が壊死する恐ろしい病。
実は夫のMさんを襲った「ろれつが回らない」という状態こそ、脳梗塞の典型的な症状。
そして一刻を争うこの事態に、妻のT・Yさんは、ある誤った応急処置をしてしまうのです。
それは一体?
<夫が倒れた時に、妻がとった応急処置>
(1)倒れている夫を抱き起こす
(2)救急車を呼ぶ
(3)声をかけて励ます
(4)水を飲ませる

死亡
<妻がとった行動の中で、誤った応急処置とは?>
彼女はまず様子を見るため、倒れている夫を抱き起こしました。
そしてすぐさま救急車を呼びました。さらに夫に声をかけ、励まし続けました。
そして、何とか夫を落ち着かせたい。その一心で、妻のT・Yさんは水を飲ませたのです。
すると…救急車が来た時にはすでに夫の呼吸は停止。そのまま、帰らぬ人となってしまいました。
最初の症状が出てから、わずか3時間後の悲劇でした。
しかし…正しい応急処置さえしていれば、雅彦さんの命は助かっていたはず。 では、T・Yさんがとった行動の中で、誤っていた応急処置とは ・・・そう、水を飲ませたことでした。
<なぜ脳梗塞で倒れた時、水を飲ませるといけないのか?>
脳梗塞になると、全身の様々な箇所に麻痺が起こります。 T・Yさんの夫の場合も、のどの神経が麻痺していました。そのため、うまく水を飲み込むことが出来ず、 むせてしまったことで脳内の血圧が上昇。脳の血管が詰まった所に負担がかかり、ついに脳幹部の太い動脈が破裂。
その結果、夫は脳出血で帰らぬ人となってしまったのです。 実は、脳梗塞をはじめ、心筋梗塞や呼吸器疾患の場合も、 水を飲ませない方がいいと言われています。
脳梗塞の応急処置 問題(1)
奥さんが夕食の後片付けをしていた時、お風呂場の方から大きな物音がしたので駆けつけると、 夫が脱衣所で倒れていました。 意識はあり自力で立ち上がろうとしているので、肩を貸し、とりあえずリビングのソファーに寝かせようとした奥さん。
果たして、奥さんのとったこの行動は○か×か?
正解…×
理由…脳の疾患の場合、無理に動かすと脳内の血圧が上がるため危険です!
脳梗塞の応急処置 問題(2)
とりあえず夫をその場に押しとどめ、座らせた奥さん。
すると今度は、夫が体を震わせ始めました。 寒がっているのかもしれない。
そう思った奥さんは少しの間、 夫の元を離れ、わざわざ2階の寝室から 毛布を取ってきて夫の体を包んであげました。
果たして、奥さんのとったこの行動は○か×か?
正解…○
理由…脳疾患の発作は、トイレ・浴室など寒い場所で起きる場合が多く、
体温が低下すると意識障害が悪化したり、血圧が急上昇するなど危険です。
毛布などでしっかりと全身を保温することが大切です。
脳梗塞の応急処置 問題(3)
一向に回復する気配を見せない夫。
その時、奥さんの目に入ったのは、夫の携帯電話。
しかし、彼女はとっさに隣の部屋に駆け込み、家の電話から119番通報しました。
果たして、奥さんのとったこの行動は○か×か?
正解…○
理由…家の電話(固定電話)だと、局番などからかけている場所が特定できる上、
携帯電話のように電波障害で切れることがありません。
ただし携帯電話で119番通報することがダメという訳ではありません。
脳疾患は緊急性が大事なので、すぐ近くに固定電話がない場合は直ちに携帯電話で通報しましょう!
脳梗塞の応急処置 問題(4)
救急車を呼んだ奥さんが脱衣所に戻ると、そこには、うつ伏せで倒れている夫の姿が!
呼吸はしているようですが、何度呼びかけても反応がありません。意識を失ってしまったのです。
さて、こんな時、救急車が来るまでの間、夫をどんな体勢にしておくのがよいのでしょうか?
正解…横向きの体勢
理由…これは回復体位と呼ばれ、患者の意識がない時や、嘔吐してしまった時に有効な体勢です。
うつ伏せは胸部が圧迫され、気道が塞がりやすいのに加え、意識や呼吸の確認もしづらいため、 よい体勢とは言えません。仰向けは筋肉が緩んで気道が塞がったり、嘔吐した時、 のどに詰まって窒息する恐れがあるため、間違いなのです。
体勢を変える時の注意点。
まずは、頭を手でしっかりと支えて慎重に動かしましょう。
そして、患者の片方の手を枕のように頭の下に置き安定させます。
最後に顎をやや上向きにして気道を確保。
ここまでできれば完璧です。
『知らないと助からない応急処置 突然の心肺停止』
H・Kさん(女性)/ 55歳(当時) 主婦
H・Yさんは最近、妻のKさん(55歳)が太ってきたのが気になっていました。
とはいえ、まさかこんなに早く、その心配が的中することになるなんて思ってもみなかったのです。
しかし、悲劇は無情にも突然、襲いかかりました。
(1)胸部全体を締めつける痛み
(2)顔面蒼白
心筋梗塞
胸部全体を襲う締めつけるような痛みと顔面蒼白。 これらは心筋梗塞の典型的な症状。
心臓の血管に、大きな血栓が詰まり血流が途絶えたために、妻のKさんは、突然倒れてしまったのです。
この時、夫のH・Yさんがとった応急処置の中で大きなミスがありました。
果たしてそれは・・・
<妻が倒れた時に、夫が取った応急処置>
(1)救急車の手配
(2)心臓マッサージをしようとしたが、手が出なかった

⇒ 死亡
<夫がとった行動の中で、誤った応急処置とは?>
救急車を呼んで戻ってくると、Kさんの心臓が止まり呼吸もしていない事に、ようやく気付いたH・Yさん。
この時、まずやるべき応急処置は「心臓マッサージ」。 心臓が止まったことで、血液の循環がストップしている為、 マッサージで強制的にポンプ運動を行い、血液を脳に送り込まなくてはならないのです。
そして、もう一つが人工呼吸。人工呼吸によって酸素を血液に送り込むことも重要な応急処置。
この心臓マッサージと人工呼吸を、2分以内に行った時の蘇生率は90%。 しかし、5分を過ぎると蘇生率は25%にまで減ってしまうとされています。 しかも、5分以上経過すると、たとえ助かっても深刻な脳障害が残ってしまう可能性があるのです。
Kさんは既に、心肺停止から2分が経過。残された時間はあと3分。 しかしH・Yさんは、ここで大きな過ちを犯してしまいました。 いざとなると、どうしていいかさっぱりわからず、全く手が出せなくなってしまったのです。 すでに心肺停止から5分が経過。Kさんには深刻な脳障害が起こりはじめていました。 心肺停止から10分後、救急車が到着。 懸命の処置が施されたものの、Kさんはそのまま息を引き取ってしまいました。
Kさんのように、心臓が原因で心肺停止となり、救急車で運ばれながらも死に至る人は、年間3万人といわれます。 しかし、救急車が来るまでの時間に、心臓マッサージと人工呼吸をすれば、救命率は2倍以上に増え、突然死を防ぐことが可能となるのです。
「大切な人を心筋梗塞による突然死から救うためには?」
(1)人工呼吸と心臓マッサージ、そして除細動は、まさに一刻を争う応急処置。
(2)自信がなくても、たとえ下手でも、心肺停止後できるだけ早く、これらを実行することが
あなたの大切な人を救うのです。
『知らないと助からない応急処置 止血』
T・Yさん(女性)/40歳(当時) 主婦
週末の休みを使って、久しぶりに夫婦水いらず、一泊二日の温泉旅行を楽しんだTさん夫妻。
夫のT・Kさんにとってそれは、妻Yさん(40歳)へのささやかなプレゼントでした。
その帰り道のこと。実は今回の旅行のため、前日まで仕事に追われ、睡眠不足だったT・Kさん。
ここに来て突然、睡魔が襲ってきたのです。そして車はガードレールに激突!
すぐに意識を取り戻したT・Kさんが、隣を見てみると・・・ 奥さんの腕からおびただしい出血が!どうやら、ひどい傷を負ってしまったようでした。
(1)腕からおびただしい出血
(2)ひどい傷を負う

この時、夫のT・Kさんは妻のYさんに正しい応急処置を施すことが出来ませんでした。
<妻の出血に、夫が取った応急処置>
(1)妻のもとに駆け寄り、患部にハンカチを押し当てる

⇒ 出血性ショックで死亡
<夫がとった行動の中で、誤った応急処置とは?>
意識を取り戻した後、すぐさま妻の元に駆け寄り、患部にハンカチを押し当てたT・Kさん。 しかし、いくら強く押さえても、出血は一向におさまる気配がありません。
救急車が到着したのは、それから1時間後のことでした。病院に到着した時にはすでに手遅れ。そのまま奥さんは帰らぬ人となってしまったのです。 死因は出血性ショック。出血多量によるショック死でした。
では、今回の事故で、T・Kさんは奥さんの命を救うことはできなかったのでしょうか? いいえ、救える可能性はあったのです。WHO、世界保健機関が発表した救命率のグラフによると、多量出血があったとしても、30分以内に止血が果たせれば、その半数の命は救うことができます。 ただし、1時間以上を要してしまうと助けられる命も助からない場合もあるのです。
あの時、T・Kさんが正しい止血の方法さえ知っていれば・・・。 そして、あの車の中には、止血に使える様々な物があったのです。
「身近にある様々な物を使ってできる最も適切な止血法とは?」
ネクタイの様な幅の広い帯状の物は神経や皮膚組織に食い込まないので、
そうした物で縛るのが良いでしょう。 さらにスパナ等の硬い棒状の物で、血が止まるまで締め上げましょう。
ただし、こうした止血は血液を遮断しているので、30分に1度は縛っている物を緩めることが大切です。
応急処置の常識テスト