診察室
診察日:2006年1月24日
テーマ: 『本当は怖いゲップ〜死の逆流〜』
『本当は怖い肩こり〜学生寮の悲劇〜』

『本当は怖いゲップ〜死の逆流〜』

H・Mさん(男性)/41歳(当時) 米屋
両親が営む米屋を手伝うH・Mさんは、肥満体質で、体重は90キロ。揚げ物などが大好物で、大盛りの丼飯をおかわりしては食事の度にゲップ、夜になると甘い物を食べながら晩酌をし、そのまま眠ってしまう毎日を繰り返していました。そんなある日、胸が焼けつくような感じを覚えたH・Mさん。飲み過ぎかと思った彼は、胃薬を飲んでその場をしのいでいましたが、4年の歳月が流れた頃、新たな異変が現れます。
(1)ゲップ
(2)胸焼け
(3)胸のつかえ
(4)呼吸困難
バレット腺癌
<なぜ、ゲップからバレット腺癌に?>
「バレット腺癌」とは、食道の胃に近い部分がガンに冒される食道癌の一種。H・Mさ んがバレット腺癌になってしまった原因は、暴飲暴食の食生活と肥満体型にありました。 H・Mさんのように、早食いで、しかも大食いの人は、危険なゲップが出やすい傾向にあ ります。早食いをすると、食べ物と一緒に大量の空気を飲み込むため、それを出そうとし てゲップがよく出るようになるのです。さらに大食いをすると胃が過剰に刺激され、胃酸 の量が増えるため、H・Mさんはゲップと同時に胃酸も逆流するようになっていました。 そして、その症状をさらに加速させたのが、彼の肥満体型。お腹の回りについた脂肪が、 胃を押し上げ胃酸が逆流。しゃがむたびに脂肪が胃を圧迫し逆流。ヒモやベルトをきつく 締めすぎて逆流。そして、何より症状を悪化させたのは、飲み食いした後、すぐのゴロ寝。 これもまた胃散を逆流させる危険な行為。こうした絶え間ない胃酸の逆流によって、H・ Mさんは逆流した胃酸の刺激で、食道が炎症を起こしてしまう「逆流性食道炎」に冒され ていったのです。その結果、起こった症状が、あの「胸焼け」でした。この時点で生活を 改善していれば、事なきを得たはず。しかし、その後も同じ生活を続けたH・Mさん。胃 酸の刺激を受け続けた食道はついに、ある恐ろしい状態に陥ってしまいます。それが「バ レット食道」。H・Mさんの食道は、徐々に細胞が変化し、なんと胃の粘膜のような異常な 組織に変わってしまったのです。実はこのバレット食道こそ、のちに、高確率でガンに進 行する「前癌状態」なのです。H・Mさんも、結局このバレット食道からガンを発生させ てしまいます。そのサインこそが、あの食べ物が胸につかえるという症状でした。増殖し たガン細胞によって、食道が狭くなり、食べ物が通りにくくなっていたのです。そして、 お見合いのときに一気に大食いしたことで食道は食べ物であふれ、気管にも詰まり、つい には呼吸ができなくなったのです。現在、欧米諸国では、成人の100人に1人、そして 肥満の人の10人に1人がバレット食道になっているといわれています。今後、日本でも、 食事の欧米化などに伴いこの病気が急増するだろうと、専門家は警告しています。
「バレット腺癌(食道癌)にならないためには?」
(1)逆流性食道炎を予防することが大切です。
(2)そのためには、食後すぐ横になることを止め、脂っこい食べ物・香辛料の強い食べ物などの摂り過ぎに
注意しましょう。
(3)もしちょっとでも身体に違和感を覚えたら、迷わず病院で検診されることをおすすめします。
『本当は怖い肩こり〜学生寮の悲劇〜』
S・Tさん(女性)/46歳(当時) 賄い婦
S・Tさんは、学生寮の食堂で働いて20年。食事は学生たちと一緒にとるため、いつもカロリー満点。そのせいか体重は80キロにもなり、40歳を過ぎた頃から肩こりに悩まされていました。甘い物に目がない彼女は、そんなに食べると糖尿病になると周りが心配してもお構いなしでしたが、ある日突然、手がしびれて皿をひっくり返してしまい、その後も様々な異変に襲われます。
(1)肩こり
(2)手のしびれ
(3)腰の痛み
(4)足のしびれ
(5)全身に力が入らない
脊柱靱帯骨化症(せきちゅうじんたいこっかしょう)
<なぜ、肩こりから脊柱靱帯骨化症に?>
「脊柱靱帯骨化症」とは、背骨をつなぐ薄い靱帯が、なんらかの理由で骨のように硬くなり、 厚みを増してしまう病。その結果、神経を圧迫し、進行すると、最悪の場合、全身麻痺に至 ることもあるのです。S・Tさんがこの病気になってしまったきっかけは、食生活にありま した。長年に渡って甘いものや脂っこいものを大量に食べた結果、彼女は、ある病の初期段 階になっていたのです。それは…「糖尿病」。糖尿病は、糖を分解するインスリンが不足して しまう病。しかし、初期段階では逆に、そのインスリンが大量に分泌されてしまいます。こ のインスリンがくせもの。インスリンには、糖を分解する以外に、骨を作る手助けをする働 きがあります。そのため、大量のインスリンが、S・Tさんの靱帯に影響を及ぼし、骨化を 進めてしまったと考えられるのです。事実、脊柱靱帯骨化症の患者のうち、実に40%の人 が糖尿病を患っているのです。S・Tさんの場合、最初の異変は、あの「肩こり」でした。 これは靱帯が固まり、厚みが増したことで、肩につながる神経が圧迫され、痛み始めたもの でした。そして、手の痺れや腰周辺の痛み、足の痺れなど、様々な症状。これらもすべて、 靱帯のいたるところで、その骨化が進行したために、神経を圧迫したのが原因。しかし、彼 女は特に気にも留めませんでした。そう、これがこの病気の落とし穴。圧迫された神経が、 次第にその状態に対応し馴れてくるため、病を見過ごしてしまう事が多いのです。そしてあ の時、学生とぶつかり転んでしまったことが決定打となりました。転倒時の衝撃が極限まで 圧迫していた神経に、最後の一撃を加えてしまったのです。そのため手足に激しい麻痺が起 こり、立ち上がることも困難な状態に陥ってしまったS・Tさん。しかし、幸いなことに、 すぐに手術が行われたため、奇跡的に杖をつけば歩けるまでに回復することができたのです。
「脊柱靱帯骨化症を早期発見するには?」
(1)もしあなたの血糖値が高く、糖尿病の疑いがあるのなら、肩こりや腰痛、手足のしびれなどの症状に
    注意することが大切です。
(2)そして、一度病院で検診されることをおすすめします。