診察日:2006年1月31日
テーマ:
『本当は怖い頭痛〜覚醒する悪魔〜』
『本当は怖い偏食〜消失〜』
『本当は怖い頭痛〜覚醒する悪魔〜』
K・Mさん(女性)/51歳(発症当時)
人材派遣会社社長
人材派遣会社の女社長K・Mさんは、負けず嫌いで強気な性格。3年前に独立して以来、結婚もせず仕事一筋に頑張ってきましたが、小さな会社のため何でもこなさなければならず、疲労とストレスはピークに達していました。そんな時、右の側頭部にズキズキと締め付けられるような痛みを感じたK・Mさん。働き過ぎがたたって調子を崩したのかも…と思って市販の薬を飲んで様子を見ていましたが、その後も更なる異変に襲われます。
(1)頭痛
(2)耳鳴り
(3)耳の後ろに水疱
(4)激しい頭痛
(5)まっすぐ歩けない
(6)顔面麻痺
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
<なぜ、頭痛から帯状疱疹に?>
「帯状疱疹」とは、胸や腹部などに帯状の水疱(すいほう)ができ、うずくような痛みをもたらす病。日本では、現在およそ2000万人もの潜在患者がいるといわれています。その原因は、ほとんどの日本人が持っている水疱瘡(みずぼうそう)のウイルス。日本人の9割がかかる水疱瘡。実はこの水疱瘡のウイルスは病気が治っても体内の一部で生き続けています。そして機会を伺っては、再び活動を始め帯状疱疹となるのです。しかし帯状疱疹の多くは、痛み以外、それほど重い症状を引き起こすことはありません。ではなぜK・Mさんは、顔面麻痺に襲われてしまったのでしょうか?原因は、帯状疱疹が出た場所。K・Mさんの場合、水疱瘡のウイルスが姿を隠したのは耳の近くの三叉神経(さんさしんけい)でした。そのウィルスが、激務による疲れやストレスによる免疫力の低下に乗じて眠りから目覚め、活動を再開。耳の後ろの水疱という症状を引き起こしたのです。でも一個だけだからと気にも留めなかったK・Mさん。実はこの場所こそが落とし穴。彼女は髪の毛の下に隠れていた、いくつもの水疱を見逃してしまったのです。こうして密かに目覚めたウイルスは、まず、脳に近い神経細胞を傷つけ、その後、耳の近くにある内耳神経へと向かい、平衡感覚を司る三半規管(さんはんきかん)まで傷つけてしまいました。それがK・Mさんを襲った症状の原因だったのです。そして、あの顔面麻痺。これこそ活性化したウイルスが、ついに顔面神経まで破壊してしまった結果でした。帯状疱疹のおよそ75%は、胸や脚に目立つ水疱が出来るため、発見は容易です。しかし残りの25%は、頭部に発症。中でもK・Mさんのように、隠れた場所に水疱ができると、発見が遅れ重症化しやすいのです。現在、帯状疱疹は、早期に発見すれば、抗ウイルス薬の投与で、比較的治りやすい病。しかし発見が遅れると、激しい痛みが後遺症として数年に渡り残ってしまうこともあります。K・Mさんの場合も、顔面麻痺は治ったものの、あのひどい頭痛に現在もまだ悩まされています。彼女のように、四六時中襲ってくるしつこい痛みのせいでうつ病を発症、ついには自殺を図ってしまう患者もいるのです。だからこそ、痛みとともに現れる水疱というサインを決して見逃してはいけないのです。
「帯状疱疹にならないためには?」
(1)免疫力を正常に保つことが大切。
(2)疲れやストレスをためないことこそが最大の予防法です。
(3)もしちょっとでも身体に違和感を覚えたら、迷わず病院で検診されることをおすすめします。
『本当は怖い偏食〜消失〜』
K・Sさん(女性)/32歳(発症当時)
OL(役員秘書)
一流商社に勤めるK・Sさん(32歳)は、社内でも期待の若手リーダーと目されるI常務の秘書。大規模な社内改革を進めるべく激務をこなす常務のために、少しでも力になれればと頑張っていましたが、忙しい昼間は簡単な食事で済ませてしまいがち。一人暮らしのせいで、家でも偏った食事が続いていましたが、最近、何故かやたら目が疲れるように。その後も、さらなる異変が彼女を襲います。
(1)目の疲れ
(2)肌荒れ
(3)味が薄く感じられる
(4)爪が割れる
(5)味がしない
味覚障害
<なぜ、偏食から味覚障害に?>
「味覚障害」とは食べ物の本来の味を感じることができなくなる病気。治療が遅れれば、味覚を失い、味を感じることのない生活を一生送らなければならないこともあるのです。患者数は年々増え続け、なんと年間22万人が発症すると言われる、まさに現代病の1つ。その最も大きな原因は、毎日の食事内容。そう、K・Sさんの場合、あの偏食が病を引き起こしていたのです。忙しさも手伝って、いつも手軽な出来合いのものばかり食べていたK・Sさん。そんな食生活を長期に渡って続けたため、ある重要な栄養素が決定的に足りなくなっていたのです。その栄養素とは、亜鉛。亜鉛は、牡蠣や豚レバーなどに多く含まれているミネラルの一種。細胞の新陳代謝全般に関わり、人が生きていく上で欠かすことのできない重要な栄養素です。偏食により亜鉛が欠乏した結果、K・Sさんの全身には様々な症状が現れました。しかし、それらの症状は痛みを伴うわけでもなく、それほど重症化することはありません。本当に恐ろしいのは、味覚に現れる異常なのです。そもそも味覚には、基本となる甘味、苦味、酸味、塩味という4つの味があり、それらの味は舌の表面の溝にある「味蕾(みらい)」と呼ばれるセンサーで感じられるようになっています。ところが亜鉛不足になると、味蕾の新陳代謝が進まず、その機能が低下。正確な味を感じることができなくなるのです。そのためK・Sさんは、「味が薄く感じられる」という症状に襲われました。そして大量に調味料などで味を濃くするようになっていったのです。にもかかわらず、忙しさにかまけそのままにしてしまったK・Sさん。病は徐々に進行し、ついには味蕾そのものが消滅。ケーキを食べてもただのスポンジとしか感じることができないほどに、味覚が消失してしまったのです。K・Sさんは治療を受けたものの、その味覚が完全に戻ることはなく、一生食事を楽しむことができなくなってしまいました。半年以上放っておくと、味覚が完全に元に戻る人は、半分もいないと言われるこの病。だからこそ、早期発見が何よりも大切なのです。
「味覚障害にならないためには?」
(1)バランスの良い食生活が大切です。
(2)特に一人暮らしの方は要注意。以前より調味料が増えたり、味が薄く感じるなどの症状があれば、
迷わず病院で検診されることをお勧めします。