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『本当は怖い風邪~悪夢の週末~』 |
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S・Yさん(男性)/43歳(発症当時) |
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会社員 |
一流商社に勤めるS・Yさんの座右の銘は、「パーフェクト」。週3回はスポーツクラブで泳ぎ、日頃の食生活にも気をつかい、健康もパーフェクト。家庭でも良き夫で、良き父親でしたが、ある週末、突然喉の痛みと微熱を覚えました。久しぶりに風邪をひいたと思ったS・Yさん。幸い翌日は仕事も休みだったため、自宅でゆっくり静養することにしますが、さらに異変は続きました・・・。 |
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(1)風邪
(2)倦怠感
(3)頻尿
(4)喉の渇き
(5)嘔吐
(6)昏睡 |
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劇症1型糖尿病(げきしょういちがた とうにょうびょう) |
<なぜ、風邪から劇症1型糖尿病に?> |
糖尿病には2種類あります。肥満や食べすぎでなるのは「2型糖尿病」。患者数は、およそ800万人。長年の不摂生で膵臓が酷使されて弱り、血糖値を下げるインスリンが十分に分泌されなくなることで引き起こされます。そして、もう1つが「1型糖尿病」。生活習慣に関係なく、ある日突然、膵臓の破壊がはじまりインスリンが出なくなってしまう病です。現在、この「1型糖尿病」の患者は、約10万人といわれています。多くの場合、この膵臓の破壊は数年単位で進みます。しかし、時としてわずか数日で破壊されてしまうことがあるのです。これこそがS・Yさんを襲った「劇症1型糖尿病」。なぜ急速に破壊が進むのか、詳しいメカニズムはまだわかっていません。ただきっかけの1つと考えられているのが風邪。S・Yさんの場合も、喉の痛みと発熱を覚えたあの時から、膵臓の破壊が始まったと思われます。そして、彼を襲ったあの倦怠感。その本当の原因は、膵臓の破壊によるインスリンの減少でした。インスリンが減ったせいでS・Yさんの身体には、エネルギーとなる糖分が取り込まれなくなり、身体中が異変に襲われたのです。その結果、脳細胞までもが糖分を吸収できなくなり、ついにその機能を停止させてしまいました。発症すれば、わずか数日で重症化してしまう劇症1型糖尿病。では、S・Yさんがこの病に気づくチャンスはなかったのでしょうか。いいえ、ありました。そう、トイレが近くなり、いくら水を飲んでも、異常なほど喉が渇いた、あの時です。これこそ血糖値が急激に上がり始めた証でした。もし、あの時、すぐに病院へ行っていれば最悪の事態は避けられたはず・・・。しかし風邪とともに起きる、これら糖尿病の症状に気づかなければ、あっという間に、最悪の結末を迎えてしまう危険が大きいのです。 |