診察室
診察日:2006年2月21日
テーマ: 『本当は怖い不眠〜眠れない男〜』
『本当は怖い頭痛〜悪魔の盲点〜』

『本当は怖い不眠〜眠れない男〜』

S・Mさん(男性)/56歳(発症当時) 建設会社社長
建設会社の社長S・Mさんは、持ち前のバイタリティを武器に、会社を急成長させてきたやり手。仕事の後も、若い連中に負けないくらい腹いっぱい食べ、酒を浴びる程飲む。それが明日への活力と信じていましたが、ある晩、突然深夜に目覚め、そのまま眠れなくなってしまいました。たまたま眠れなかっただけと軽く考えていたS・Mさん。ところが、その日以来、眠りが浅くなって充分な睡眠が取れない状態が続き、さらなる異変にも襲われます。
(1)不眠
(2)無気力
(3)昼間も眠れない
(4)突然の頭痛
(5)意識不明
脳血管性うつ病
<なぜ、不眠から脳血管性うつ病に?>
「脳血管性うつ病」とは、本人も自覚できない小さな脳梗塞によって引き起こされる「うつ病」のこと。この病の恐ろしいところは、たった1つの小さな梗塞が脳の前頭葉で起きても「うつ」の症状を発生してしまう可能性があること。S・Mさんも脳の前頭葉で小さな脳梗塞が発生していました。するとその脳梗塞が、血管の近くを通る神経を破壊。結果、思考や感情をコントロールする情報伝達物質の流れがさえぎられてしまいました。不眠、無気力といったS・Mさんのうつ症状は、こうして引き起こされたもの。この「うつ症状」こそ、脳梗塞を告げるサインだったのです。ではS・Mさんは、一体いつ脳梗塞になったのでしょうか?それは、最初の不眠に襲われたとき。まさにあの瞬間、小さな脳梗塞が発生していたのです。その後も、脳梗塞が増えるたびに症状は悪化。そんな夫の姿を見て、妻は、S・Mさんの病気を一般のうつ病だと思い込んでしまいました。実はこれこそ、脳血管性うつ病の落とし穴。一般のうつ病と勘違いしていると・・やがて、大きな脳梗塞が発生。一気に命を奪われてしまうケースが少なくないのです。では、一般のうつ病と脳血管性うつ病を見分けるポイントはないのでしょうか?それは、あの「突然の頭痛」。あれは神経ではなく、血管が塞がったために生じた脳梗塞特有の異変でした。つまり、一般のうつ病には起こりえない症状だったのです。しかしそのサインは見過ごされ、ついに脳の太い血管を完全に塞ぐ、致命的な脳梗塞を発症。S・Mさんは、帰らぬ人となりました。脳血管性うつ病は、中高年を中心に、なんと年間20万人以上が発症していると考えられているのです。
「脳梗塞にならないためには?」
(1)過度なアルコール、喫煙、偏った食生活などの生活習慣に気をつけることが大切です。
(2)不眠、無気力になるなど、突然のうつ症状が出たら要注意。
一度病院で詳しい検査を受けることをおすすめします。
『本当は怖い頭痛〜悪魔の盲点〜』
M・Yさん(女性)/ 41歳(発症当時) 主婦
暇つぶしのつもりで始めた趣味のビーズを続けているうちにハマってしまったM・Yさん。 今では毎晩のように励んでいましたが、最近、時々こめかみの辺りに軽い頭痛を覚えるようになりました。頭痛の原因は毎晩夜更かしして作業しているせいと思っていましたが、さらなる異変に襲われます。
(1)こめかみの辺りに頭痛
(2)手先が不器用になる
(3)近くの物を見落とす
(4)奇妙な動きで新聞を見る
(5)視野の80%を失う
緑内障
<なぜ、頭痛から緑内障に?>
「緑内障」とは、少しずつ視神経が破壊され徐々に視野が欠けていく、原因不明の眼の病。最悪の場合は、失明してしまうこともある恐ろしい病です。40歳以上の17人に1人は「緑内障」と言われ、恐ろしいことにそのうち8割の人は、そのことに気付いていないと言われているのです。M・Yさんの場合も、そうでした。5年前から始まったあの「頭痛」は、すでに見えにくくなっていた右目を毎日酷使していたために起きた、眼精疲労によるものだったのです。そして徐々に右目の視野が欠けてきたため、遠近感が取れなくなり、手先の細かい作業ができにくくなったのです。でも彼女はこの時、片目ずつ周りを見渡し、目の異常を確かめたはず。どうして視野が欠けていることに気付けなかったのでしょうか?そもそも視野が欠けるとは、視界に黒い部分が出来るわけではありません。実際は、視界の中の一部分がぼんやりとするだけ。しかも普段は自然と視野の中心部分に意識が集中しています。視野が狭くなっていることに気付かないのも無理はないのです。そして5年後、見えない部分は徐々に広がり、彼女の右目の視野は、わずかしか残されていませんでした。それでも彼女は、まだ眼の異変に気付きません。実は右目が大きく視野を失っても、ちゃんと見えている左目が視野を補うため、両目で見ると右端以外はほとんど見えるため、異変に気付きにくいのです。しかし、病の進行と共に左目でも補いきれない部分は、着実に増えていきました。その結果、スーパーで目の前にあったジャガイモを見落としたり、新聞に目を異様に近づけて読んでしまったのです。緑内障のもっとも恐ろしいところは、非常にゆっくりと進行するため、視野が狭くなってきても、その時見えている視野を正常だと思い込み、異変を見過ごしてしまうこと。そのため多くの人々が、視野が欠けていることに気付かず、病の進行を放置してしまうのです。M・Yさんが病院を訪れた時、右目は80%、左目も30%の視野を失っていました。残念ながらこの病は、一度失った視野を回復することはできません。彼女は今、病をこれ以上進行させないよう、夫に支えられ、治療を続けているのです。
「緑内障を早期発見するためには?」
(1)近くにある物を見落としたり、物の見方が不自然になるなどの症状が出たら要注意。
詳しい検査をおすすめします。
(2)40歳を過ぎたら、年に1度の定期検診が何よりの予防策です。