|
『本当は怖い虫歯〜悪魔の下り坂〜』 |
|
Y・Yさん(女性)/42歳(発症当時) |
|
広告会社勤務 |
小さな広告会社に勤め、忙しい日々を送っていたY・Yさん。彼女は1年前に離婚し、2人の子供を持つシングルマザーになったばかり。そんな彼女の悩みは、虫歯。いつの間にか右の奥歯に虫歯が出来てしまい、熱いものを飲むとひどく痛むのです。時間ができた時にキチンと治そうと、虫歯を放置してしまった彼女ですが、やがてさらなる異変が現れます。 |
|
(1)虫歯
(2)アゴの腫れ
(3)のどの痛み
(4)倦怠感
(5)息を吸うと胸が痛む
|
|
下降性壊死性縦隔炎(かこうせい えしせい じゅうかくえん) |
<なぜ、虫歯から下降性壊死性縦隔炎に?> |
「下降性壊死性縦隔炎」とは、左右二つの肺を隔てている「縦隔」と呼ばれる筋肉の壁に
急速に細菌の感染が広がり、最悪の場合、死に至る恐ろしい病です。ではY・Yさんは、
一体どこから細菌に感染してしまったのでしょうか?それは、あの放っておいてしまった虫
歯でした。虫歯を放置してしまうと、エナメル質などを侵食し、歯の根っこまで通じる穴が
できてしまいます。そもそも口の中は、およそ700種類もの細菌やウィルス、アメーバな
どが棲みついている、バイ菌天国。そのため、様々なバイ菌が虫歯の穴から侵入し、歯の付
け根にまで到達してしまうのです。しかし通常、バイ菌が侵入すれば、免疫機能が一斉に攻
撃を開始。この時点でバイ菌を退治してくれるため、炎症は起きるものの、大事に至ること
はありません。ところが、Y・Yさんのように、仕事などに追われて免疫力が大幅に低下し
ている時に、バイ菌が侵入すると、免疫機能はバイ菌を退治することができず、その急激
な増殖を許してしまうのです。そして、ごくまれに、増殖を繰り返したバイ菌は、とんでも
ない事態を引き起こします。なんと、歯の根っこから、アゴの骨を突き破り、筋膜に入り込
んでしまうのです。さらに、その下にある組織の間へと急速に拡がり始めるのです。これこ
そが、下降性壊死性縦隔炎の始まり。こうなるとわずか24時間という驚異的な速さで、
バイ菌が体を蝕み尽くします。あのアゴの腫れ、のどの痛み、息を吸った時の胸の痛みは、ア
ゴから下へと降りていくバイ菌が通った証。バイ菌の拡がりに合わせ、体内の炎症も下降し
ていたのです。こうなってしまうと、もはや、バイ菌の増殖を止めることは不可能。Y・Y
さんは敗血症と多臓器不全を起こし、帰らぬ人となりました。下降性壊死性縦隔炎に、正確
なデータはまだありません。しかし、年間数百人はこの病気を発症していると考えられてい
るのです。虫歯の穴からバイ菌が体内に入り、病を引き起こす例は他にもあります。しかし、
これはたった一本の虫歯から死に至る、もっとも恐ろしい病なのです。 |