診察日:2006年4月25日
テーマ:
『本当は怖い引越し〜幸せに潜む闇〜』
『本当は怖い耳のつまり〜珠玉の魔物〜』
『本当は怖い引越し〜幸せに潜む闇〜』
K・Iさん(女性)/40歳(発症当時)
専業主婦
長年住み慣れた団地から、郊外の庭付き一戸建てに引越すことになったK・Iさん。新居は几帳面で計画的な性格の彼女がコツコツと倹約を続け、ようやく手に入れた夢のマイホームでした。しかし、引越したその日、K・Iさんは新居の使い勝手や慣れないスーパーでの買物など、環境の変化に戸惑いを覚えます。翌朝、なぜか朝方早くに目が覚めて眠れなくなり、食欲もわかなくなってしまったK・Iさん。疲れが取れていないだけと思っていましたが、さらなる異変が彼女を襲います。
(1)朝早く目が覚める
(2)食欲不振
(3)倦怠感
(4)自分を責める
引越しうつ病
<夢のマイホームのはずが、なぜ引越しうつ病に?>
そもそもうつ病とは、様々なストレスが原因となっておきる精神的な病。「引越しうつ病」は、 引越しがきっかけになっておきる、うつ病なのです。毎年実に4万人が発症するとも言われ、 決して珍しい病気ではありません。では何故、家族の中でK・Iさんだけがうつ病を発症し てしまったのでしょうか?その大きな原因は彼女の性格にありました。几帳面でまじめ、毎 日家計簿をつけるなど、とても計画的な性格だったK・Iさん。この性格こそ「メランコリ ー親和型性格」と呼ばれているもの。几帳面で責任感が強く、徹底した計画性を持つ、社会 的には非常に好まれる性格ですが、だからこそ人一倍ストレスを受けやすいのです。K・I さんの場合、几帳面さのあまり、ちょっとした環境の変化を軽く受け流すことが出来ません でした。そのため、一見なんでもない小さな出来事が、全てストレスとなっていたのです。 こうした小さなストレスが度重なることで、脳内の神経伝達物質が減少。脳が機能低下を起 こしたため、様々な症状が現れました。しかし、彼女は引越し疲れだろうと軽く考え、放っ ておいてしまいました。これこそがこの病の落とし穴だとも知らずに・・・。そして、つい に自らの命を絶とうとするまで病を悪化させてしまったのです・・・。幸い発見が早かった ため、K・Iさんは一命を取り留めました。そして、薬による治療のお陰で、現在は元気に 新しい環境になじんでいます。普通、引越し疲れは2・3日で解消するもの。2週間以上た っても、気分がすぐれなければ、無理をしたり、我慢することなく、病院で相談することが 何よりも大切なのです。
「引越しうつ病にならないためには?」
(1)自分の性格をよく知っておくことが大切です。
(2)几帳面で真面目、責任感が強く、計画的な性格の方は、要注意。
(3)もし引越し疲れが2週間以上取れないようなことがあれば、迷わず精神科や心療内科を受診されること
をおすすめします。
『本当は怖い耳のつまり〜珠玉の魔物〜』
M・Gさん(男性)/52歳(発症当時)
そば屋店主
M・Gさんは、親の代から60年続くそば屋を営む、生粋の江戸っ子。最近、下町にも増えてきた高層ビルに出前に行く度に、ちょっとした気圧の差で耳がつまったような状態になるのが気になっていました。以前から飛行機に乗った時など、こうした症状が出ると、なかなか元に戻らない体質だったM・Gさん。忘れた頃には戻っているため、さほど気にも留めていませんでしたが、さらなる異変が彼を襲います。
(1)耳のつまり
(2)耳の聞こえが悪い
(3)耳の痛み
(4)めまい
(5)顔面麻痺
真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせい ちゅうじえん)
<なぜ、耳のつまりから真珠腫性中耳炎に?>
「真珠腫性中耳炎」とは、鼓膜が内側に凹み、その一部に鼓膜の垢がたまる病。真珠のような白い垢のかたまりが大きくなることで様々な症状を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。国内で1年間に行なわれる全ての耳の手術のうち、2割から3割を占めている、決して珍しくない病です。はっきりした原因はわかっていませんが、この病になりやすいと言われているのが、M・Gさんのように、飛行機やエレベーターに乗った時、耳がつまり、それがなかなか戻らないタイプ。そもそも耳は急激な気圧の変化を受けると、鼓膜を境に気圧のバランスがとれなくなり、鼓膜が内側に引っ張られることがあります。これが耳のつまりの原因。通常であれば、唾を飲み込んだりすることで耳と鼻をつなぐ耳管と呼ばれる管が開き、耳のつまりは解消されます。しかし、この耳管が体質的に弱い人は、開閉がうまくできないため、鼓膜が凹んだままになります。そして、その凹みの一部に鼓膜の垢がたまることで真珠腫が出来てしまうことがあるのです。M・Gさんを襲った、あの耳のつまりや聞こえにくさは、これが原因。そして、いつか治るだろうと放置している間に、垢はどんどんたまり続け、肥大化した真珠腫が周辺の器官を次々と破壊。耳の痛みやめまいと言った症状を引き起こしました。そしてついに真珠腫は、鼓膜のすぐ内側を通っている顔面神経を圧迫。M・Gさんは顔面麻痺をおこしてしまったのです。すぐに手術を受けたM・Gさんは、真珠腫を摘出。無事、顔面神経麻痺は治ったものの、残念ながら右耳の聴覚を失ってしまいました。この病は早期発見さえすれば大事に至る事はありません。耳のつまりがなかなか治らないと感じたら、すぐに病院で検査をする事がなにより大切なのです。
「真珠腫性中耳炎にならないためには?」
(1)自分の耳の体質を知っておくことが大切です。
(2)もしあなたが耳のつまりが治りにくいタイプなら、症状が長引いていると感じた時は、すぐに耳鼻科を
受診されることをおすすめします。