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『本当は怖い頭痛~真紅の切り裂き魔~』 |
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Y・Sさん(男性)/42歳(発症当時) |
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サラリーマン |
マンションメーカーの支社で働く営業マンY・Sさんは、人間関係も良好で、充実した毎日を送っていました。しかし、売り上げが落ちている支社のてこ入れに、本社からやり手の支社長がやって来てから生活は一変。昼間は足を棒にしての外回り、夜は遅くまでデスクワークに追われるように。責任感の強い彼は、突然の激務にも不満を感じることなく前向きに取り組んでいましたが、ある日、職場でだけ頭痛に襲われるようになります。健康診断でも血圧は正常で、健康状態は良好と太鼓判を押されていたY・Sさん。頭痛は目の疲れからきたものと思っていましたが、その後も異変は続きました。 |
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(1)締めつけられるような頭痛
(2)再び頭痛
(3)突然の背中の激痛
(4)体の芯から発するような痛み |
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職場高血圧⇒急性大動脈解離(きゅうせい だいどうみゃくかいり) |
<なぜ、頭痛から急性大動脈解離に?> |
「急性大動脈解離」とは、心臓から全身に血液を送り出す大動脈の血管壁に亀裂が生じて、
そこから血液が流れ込み、本来一本のはずの血管が2つの筋に分かれてしまう病。年間約7000人が発症。働き盛りの男性に多い病です。発症のメカニズムはまだよくわかっ
いませんが、大きな要因の一つに高血圧があると言われています。しかし、Y・Sさんは、
健康診断では血圧は正常という結果が出ていました。なのに、なぜ病に冒されてしまったの
でしょうか?実はY・Sさんの血圧は、職場にいるときだけ異常に高くなっていたのです。
これこそが、「職場高血圧」と呼ばれる症状。ある調査によれば、この「職場高血圧」、健康
診断で血圧が正常と判断された人の、なんと3割もの人が起こしていました。Y・Sさんの
場合、その原因は新任の支社長に対するストレスと考えられます。そのため普段は正常なY・
Sさんの血圧が、職場にいるときだけ高くなっていたのです。そしてこの時、Y・Sさんの
体の中では、高血圧によって大動脈の血管壁が強い圧迫を受け続けていました。こうなると
血管壁はもろくなり、いつ亀裂が入っても、おかしくない状態に。Y・Sさんを襲った背中
の激痛。あれこそ、大動脈に亀裂が入った瞬間でした。そして瞬く間に、大動脈は二つの筋
に別れてしまったのです。でも、この状態になっても破裂しない限り、病院で適切な処置を
受ければ、命は助かるといわれています。しかしY・Sさんは、痛みを我慢してしまったこ
とで助かるチャンスをどんどん減らしてしまいました。そしてついに大動脈が破裂し、体内
では大量出血が発生。Y・Sさんは帰らぬ人となってしまったのです。 |