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『本当は怖い猫背〜見えない棘〜』 |
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A・Hさん(女性)/56歳(発症当時) |
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主婦 |
趣味で始めたレース編みが評判となり、近所の主婦たちが習いに来るほど上手くなっていたA・Hさん。そんな彼女には最近ちょっと気になることがありました。昔から姿勢が悪く、猫背気味でしたが、歳をとったせいか、それが一層ひどくなってきたのです。夫から指摘されても、「猫背で死ぬわけじゃないし…」と思っていたA・Hさん。しかし、ある朝、突然、めまいに襲われたのを機に、様々な異変に見舞われるようになります。 |
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(1)ぐるぐると回るようなめまい
(2)めまいが長く続く
(3)激しいめまい
(4)これまでにない強烈なめまい
(5)ろれつが回らない
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脳梗塞 |
<なぜ、猫背から脳梗塞に?> |
「脳梗塞」とは、脳の血管に血栓がつまり、脳の一部が壊死し、最悪の場合死に至ることも
ある恐ろしい病。動脈硬化や濃縮型血液など、血液の流れが悪くなることが原因で発症する
ことが多い病気です。しかしA・Hさんは、健康診断でも血液は全く異常なしと診断されて
いました。なのになぜ、突然、脳梗塞を引き起こしてしまったのでしょうか?その原因は、
なんとA・Hさんの姿勢、あの「猫背」に隠されていました。正常な姿勢の場合、背骨全体
が重量のある頭部を支えています。しかし、猫背だと前に重心が傾くため、首の骨に大きな
負担がかかってしまうのです。A・Hさんの場合、もともとの姿勢の悪さに加え、長年のレ
ース編みで、猫背にさらに拍車をかけてしまいました。こうして、無理な力が首にかかり続
けたため、骨と骨の間でクッションの役割を果たす椎間板が潰れ、椎骨の一部がトゲのよう
に飛び出してしまったのです。このトゲのような骨こそが、全ての原因。実は、A・Hさん
が度々襲われたあの「めまい」は、いつも左に振り向いた時に起こっていました。あれは首
を左に回した時、飛び出した骨が、骨の脇にある動脈を圧迫。血流が滞り、脳が酸欠に陥っ
たためだったのです。普通、貧血などのめまいは、ほんの一瞬で治るものですが、この病
は、グルグルと回るめまいが1分近く続くことが特徴。このようなめまいを感じた時点で、
病院に行っていれば事なきを得たはずなのに、皮肉にも、A・Hさんは健康診断で異常がな
かったため、病気のサインを見過ごしてしまいました。そして、展覧会の舞台で振り向いた
あの時、飛び出した骨が椎骨動脈を押し込んだことで、内側に亀裂が生じ、そこに血液が流
れ込み風船のように膨らみはじめました。そしてついに、血流をストップさせてしまったの
です。これは「椎骨動脈解離(せきついどうみゃくかいり)」という、脳梗塞を引き起こす
原因にもなる危険な状態。ただちに治療が行われ、なんとか一命は取り止めたA・Hさん。
しかし、ろれつが回らないなど、言語機能に少なからず障害が残ってしまいました。猫背だ
けでなく、加齢による骨の変形で起こることもあるこの病。恐ろしいのは、たとえ血液検
査の結果が良くても、決して安心できない、ということなのです。 |