診察室
診察日:2006年7月18日
テーマ: 『本当は怖い声のかすれ〜悪魔の目覚め〜』
『本当は怖い頭痛〜忍び寄る黒い悪魔〜』

『本当は怖い声のかすれ〜悪魔の目覚め〜』

K・Nさん(女性)/45歳(発症当時) カラオケスナック経営
1年前、女手一つでカラオケスナックを開店したK・Nさん。常連客も少しずつ増え、店も軌道に乗り始めていました。しかし、いつものようにカラオケを歌い終えた時、お客さんから声のかすれを指摘されます。仕事柄、声がかすれるのはしょうがない…。そう諦めていたK・Nさんですが、異変はさらに続きました。
(1)声のかすれ
(2)喉のしこり
(3)物が飲み込みにくい
(4)しこりが大きくなる
(5)しこりがさらに大きくなる
甲状腺ガン
<なぜ、声のかすれから甲状腺ガンに?>
「甲状腺ガン」とは、その名の通り、喉にある甲状腺に出来るガン。40代以降の女性に多く発症し、その患者数はおよそ8000人にのぼります。しかし、甲状腺ガンのほとんどは非常に成長が遅いうえ、命に関わることはめったになく、怖くないガンとさえ言われています。ところが、油断してこのガンを長い間放っておくと、ごくまれに突然、悪性度の高いガンに変化することがあるのです。これこそ未分化ガンと言われる、恐怖のガン。こうなると、もはや手遅れ。未分化ガンに変化すると、急速なスピードで成長。わずか3ヶ月程度で気道や食道を押しつぶし、死に至らしめます。K・Nさんの場合も、運悪く、この未分化ガンになってしまったのです。しかし、最初の症状である「声のかすれ」や「喉元の小さなしこり」は、実はまだ、それほど危険ではない甲状腺ガンの症状でした。もし、この段階で病を疑い、病院に行っていれば、命に関わることはなかったはず。しかし、K・Nさんは、このガンをただのしこりと思い込み、10年もの間、一度も検診に行かず、放っておいてしまったのです。そして10年後、運悪く、甲状腺ガンは未分化ガンに変化してしまいました。そのため、それまでとは比べものにならない速さで成長。わずか2週間で傍目から見てもわかるほどに。そして、そのまま気道を押しつぶし、K・Nさんは死に至ったのです。乳ガンと同じように、甲状腺ガンは、しこりに気づくことで、自分で発見できる病です。だからこそ、喉のしこりに気づいたら、早期に検査を受けることが大切なのです。
今から、甲状腺に関する問診をします。
あなたが、
「寒がり」「暑がり」かによって問診は2タイプに分かれます。
「甲状腺の問診 寒がりの方へ」
(1)冷房の効いた部屋に長時間いるのがつらく、夏でも重ね着してしまう 
(2)夏の暑い日や運動した時でも、汗をかかないことがある
(3)最近、物忘れがひどく、ボーッと過ごしてしまう
⇒以上3つ、全ての症状にあてはまる場合は、「橋本病」の疑いがあります。
「橋本病」は、甲状腺からホルモンが出ず、全身の新陳代謝が低下する病気。
最悪の場合、重度のうつ状態に陥ってしまうこともあります。
もし症状に心当たりがあるなら、甲状腺機能を調べる血液検査を受けることをおすすめします。
「甲状腺の問診 暑がりの方へ」
(1)少し動いただけで汗をかく 
(2)真冬でも寒いと感じず、半袖シャツなどで過ごせる
(3)いくら食べても太らない
⇒以上3つ、全ての症状にあてはまる場合は、「バセドウ病」の疑いがあります。
「バセドウ病」は、橋本病とは対照的に甲状腺の異常によりホルモンが出続ける病気。
最悪の場合、心不全を引き起こすこともあるのです。
もし症状に心当たりがあるなら、甲状腺機能を調べる血液検査を受けることをおすすめします。
『本当は怖い頭痛〜忍び寄る黒い悪魔〜〜』
M・Mさん(女性)/43歳(発症当時) 主婦
半年前、現在の夫・Tさん(46歳)とバツイチ同士で再婚、幸せな毎日を送っていたM・Mさん。そんな彼女の悩みは、夫の連れ子・娘のEちゃん(14歳)のこと。M・Mさんのことを母親として受け入れようとしないのです。そんな中、ある朝、頭痛と倦怠感を訴えだしたM・Mさん。新しい生活が何かと負担になっているのだろう…。夫のTさんは、そう妻の身を案じていましたが、異変はそれだけでは治まりませんでした。
(1)頭痛
(2)倦怠感
(3)突然、怒り出す
(4)物忘れ
(5)無気力
(6)痙攣(けいれん)
髄膜腫(ずいまくしゅ)
<なぜ、頭痛から髄膜腫に?>
「髄膜腫」とは、脳を包んでいる髄膜という部分に腫瘍ができることで脳を圧迫する病。最悪の場合、死に至る事もある恐ろしい病です。なぜ髄膜腫が出来るのか、その原因は分かっていません。現在、年間およそ4000人の患者が発症、特に40代〜50代の女性に多いといわれています。この病の特徴は、腫瘍ができる場所によって、手足の痺れや、視力障害など様々な症状が現れること。そして、髄膜腫のおよそ4割は、前頭葉に出来るといわれ、M・Mさんの場合もまさにそうでした。そもそも前頭葉は、人間の感情や行動をコントロールする役割をしています。だからこそ、M・Mさんに現れた症状も、腫瘍が脳を圧迫しておきる頭痛と、感情が不安定になるというものでした。そう、前頭葉に腫瘍ができた場合、肉体的な症状よりも、精神的な症状が多く出るため、うつ病と診断されてしまうことがあるのです。これこそが…髄膜腫の落とし穴。そして最後の瞬間。気づかぬうちに成長を遂げた腫瘍は、脳の神経細胞の異常を引き起こし、M・Mさんは痙攣に見舞われてしまったのです。髄膜腫は、その多くが良性のため、早い段階で手術を受ければ、命を失う危険性はほとんどありません。だからこそ、たとえ「うつ」のように見えたとしても、それらの症状とともに、長引く頭痛を伴った場合は、髄膜腫の可能性も疑うことが大切なのです。幸い、M・Mさんは手術で一命を取り留め、順調に回復しました。
「脳腫瘍を早期発見するためには?」
(1)たとえ症状がなくても、一度はMRIなどで脳を診断する「脳ドック」受けることをおすすめします。
(2)もし腫瘍が発見されても、現在は「ガンマナイフ(早期であれば放射線を当てるだけで腫瘍が除去
   できる。麻酔の必要もなく、患者への負担も最小限に抑えられる。)」などの治療法があります。
(3)早期発見があなたを救うのです。
脳の分析力テスト