診察室
診察日:2006年7月25日
テーマ: 『本当は怖い夏風邪〜ちょい不良オヤジの悲劇〜』
『本当は怖いヘルシーな食事〜健康番組大好き主婦の悲劇〜』

『本当は怖い夏風邪〜ちょい不良オヤジの悲劇〜』

N・Sさん(男性)/50歳(発症当時) 魚屋
50歳にして“ちょい不良オヤジ”に目覚めてしまったN・Sさん。その日も夜の街で深夜まで飲み明かした彼は、帰宅後エアコンをかけっ放しで寝てしまい、翌朝、夏風邪をひいてしまいました。薬を飲んでおけば、2、3日で治るだろうと軽く考えていたN・Sさん。懲りずにバーに出かけた彼は、そこで出会った若い女性と話が弾んで、連日夜更かしを続けてしまいます。その後、N・Sさんの夏風邪はなかなか良くならず、さらなる異変が現れました。
(1)夏風邪
(2)夏風邪が治らない
(3)息切れ
(4)胸の痛み
(5)呼吸困難
ウィルス性心筋炎
<なぜ、夏風邪からウィルス性心筋炎に?>
「ウィルス性心筋炎」とは、ウィルスが原因で心臓の筋肉に炎症が起き、重い不整脈や心不全を引き起こす恐ろしい病です。年間で1万人以上が発症し、その1割以上がこの病で亡くなっていると言われています。では、なぜN・Sさんは、この病に冒されてしまったのでしょうか?その原因こそ、あの夏風邪。夏風邪の多くは、コクサッキーというウィルスがのどに取りつき、炎症を引き起こします。通常は免疫細胞によって撃退され、2、3日経てば治るのです。しかし、N・Sさんの場合、ある要素が重なり、風邪が長引いてしまいました。それが免疫力の低下。そもそも免疫力は、睡眠を十分に取ることで維持されます。ところが、N・Sさんは、毎晩のように飲みに行き、睡眠時間も激減。そのため、自律神経のバランスが崩れ、免疫力が低下。そもそも免疫力は、睡眠を十分に取ることで維持されます。ところが、N・Sさんは、毎晩のように飲みに行き、睡眠時間も激減。そのため、自律神経のバランスが崩れ、免疫力の低下を招いてしまいました。これこそが、夏風邪が治らなかった原因。その結果、ウィルスがのどの防衛線を突破し、血流に乗って体内に侵入。ついには心臓にとりつき、その筋肉を蝕んでいきました。そう、あの「息切れ」こそ、ウィルスが心臓にとりついた重要なサインだったのです。しかし、たかが夏風邪と、このサインを見過ごしてしまったN・Sさん。その結果、心臓はさらにウィルスに蝕まれ、機能が著しく低下。「胸の痛み」から「呼吸困難」、ついには、心筋炎から重い不整脈を引き起こし、心停止。帰らぬ人となってしまいました。ウィルス性心筋炎は、夏風邪をひいた人なら、誰にでも起こり得る恐ろしい病。4割は完治しますが、5割の患者には慢性的な心不全という後遺症が残り、1割がN・Sさんのように命を落としているのです。
「夏風邪でウィルス性心筋炎にならないためには?」
(1)正しい寝方で十分に睡眠をとり、免疫力を維持することが大切です。
・クーラーは28度でドライにする
・首から肩にかけては冷やさないようにする

(2)もし1週間以上夏風邪が長引いた場合、迷わず病院で検診されることをおすすめします。
『本当は怖いヘルシーな食事〜健康番組大好き主婦の悲劇〜』
S・Aさん(女性)/40歳(発症当時) 主婦
ある日、健康番組で高血圧が万病の元と聞いた主婦のS・Aさん。デパートで試しに血圧を測ったところ、正常値より幾分高い数値が出てしまいました。心配になって高血圧のことを調べた彼女は、食生活を改善することで血圧を抑えられるはずと思い、血圧を抑える食事を実践。高血圧に良いとされる食材を買い求め、塩分控えめの食事を1カ月続けたところ、血圧は正常値まで下がっていました。それ以降も、ヘルシーな食生活を続けていたS・Aさん。ところが、4年の歳月が流れた頃、彼女の身体を新たな異変が襲うようになります。
(1)血圧が高い
(2)疲れやすい
(3)立っているだけで疲れる
(4)異常な高血圧

原発性アルドステロン症
<なぜ、ヘルシーな食事から原発性アルドステロン症に?>
S・Aさんの命を奪った脳出血の原因は、あの高血圧。しかしその陰には、高血圧を引き起こした本当の病が隠れていました。その病の名は「原発性アルドステロン症」。腎臓の上部にある副腎に腫瘍が出来ることで、アルドステロンというホルモンの分泌に異常が起こり、高血圧となる病です。腫瘍が出来る原因は不明ですが、現在3500万人いる高血圧患者のうち、およそ5%がこの病であるといわれています。S・Aさんの高血圧も実は、この病が原因でした。副腎から大量に分泌されたアルドステロンの影響で、血液中のカリウムの量が減少し、糖分が増加。これが彼女の高血圧を引き起こしてしまったのです。そうとも知らないS・Aさんは、食事療法により血圧を抑えるよう心がけました。実は、これこそが大きな落とし穴!結果、一時的に血圧は下がりましたが、それが逆に隠れ蓑となってしまったのです。血圧が下がっても、腫瘍がなくなったわけではありません。次第に腫瘍は大きくなり、アルドステロンの分泌異常も加速。やがて食事による摂取だけでは、カリウムを補えない状態に。実はカリウムは筋肉の動きにも深く関わりがあるため、減りすぎると、筋力が低下。そのため、「疲れやすい」、「長時間立っていられない」などの症状を引き起こしてしまったのです。しかし、S・Aさんは、その疲れやすさを再び独自の判断で夏バテのせいだと思い込んでしまいました。その結果、血液中に増えたアルドステロンによって、ついには動脈硬化を引き起こしてしまったのです。そして、高血圧に耐えられなくなったS・Aさんの脳は、血管が破れ脳内に出血。彼女は帰らぬ人となってしまいました。確かに、減塩やヘルシーな食事をすることは高血圧に有効です。しかし、それを過信するのは禁物。たとえ食事療法によって一時的に血圧が下がっても、それで安心せず、定期的に血圧を測る。それこそがこの病からあなたの身を守る術なのです。
「高血圧にならないためには?」
(1)バランスの良い食生活をする。
(2)普段から血圧を測る習慣をつけることが大切です。
(3)もし、塩分を抑えた食事を続けても血圧が上がるようなら、迷わず病院で検診されることを
   おすすめします。