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『本当は怖いこむらがえり~灼熱のカウントダウン~』 |
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M・Yさん(男性)/52歳(発症当時) |
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貿易会社社長 |
小さな貿易会社を経営するM・Yさんは、ここ数年、会社の資金繰りが悪化。ある日、「今日の午後3時までに500万円を支払わないと取引を停止する」と言い渡され、金策に出かけますが、普段はクーラーの利いた部屋で仕事をしている彼にとって、炎天下での外回りはかなり厳しいものでした。そんな中、2本目のペットボトルの水もカラになった時、突然ふくらはぎのこむらがえりに襲われたM・Yさん。足がつったのは運動不足のせいと思い金策を続けていましたが、異変は続きました。 |
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(1)こむらがえり
(2)立ちくらみ
(3)吐き気
(4)意識を失う |
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熱中症 |
<なぜ、こむらがえりから熱中症に?> |
「熱中症」とは、暑さや運動で体に熱がたまり、上昇した体温が下がらなくなった結果、様々な障害が引き起こされる病。M・Yさんの場合も、炎天下で金策にかけずり回ったため、体温が上昇。熱中症の典型的な症状である「こむらがえり」や「立ちくらみ」、「吐き気」、そして「意識障害」に襲われてしまったのです。しかし、本来私たちの体には、体温の上昇を防ぐ仕組みが備わっています。それが、「汗」。体は熱がたまると、血液に含まれる水分を汗として分泌。この汗を蒸発させることで、熱を外へ逃がします。だからこそ暑いときには、水分を摂ることが大切なのです。でもM・Yさんは、こまめに水を飲んでいたはず。それなのに、なぜ熱中症で死に至ってしまったのでしょうか?実は水分を補給するだけでは、熱中症の重症化を防ぐことはできません。なぜなら汗をかくと、水分以外にも失ってしまう大切な物質があるのです。それが、塩分。そう、この塩分が減ったことで起きたのが、あの「こむらがえり」でした。塩分の減少で筋肉の細胞に異常が発生、痙攣を引き起こしたのです。ところがM・Yさんは、その後も塩分を全く補給せず、水だけを飲み続けました。その結果、より危険な段階へと進んでしまったのです。それが・・・水を欲しがらなくなったこと。塩分を摂らずに水分だけを補給し続けると、血液はどんどん薄くなります。すると脳は、「水はもう必要ない」と理解し、本当は必要でも、のどが渇かなくなってしまうのです。こうして、塩分だけでなく、水分も摂らなくなったM・Yさんの体内では、汗を十分に作れないため、たまり続ける熱を発散することが出来なくなっていきました。その結果、M・Yさんの血液温度は40度にまで上昇。熱に弱い脳が異常をきたして、ついに機能を停止。帰らぬ人となってしまったのです。熱中症といえば、普段から炎天下で活動する人がかかりやすいと思われがちです。しかし、実は本当に危険なのは、M・Yさんのように日頃クーラーで過ごすことが多い人。汗腺の機能が十分でないため、炎天下で大量の塩分を失いやすく、容易に熱中症になってしまうのです。 |