診察日:2006年8月15日
テーマ:
『本当は怖いのどの痛み〜愛情の裏返し〜』
『本当は怖い指先の違和感〜悪魔の手招き〜』
『本当は怖いのどの痛み〜愛情の裏返し〜』
K・Kさん(女性)/50歳(発症当時)
主婦(パート勤務)
息子も独立し、夫と2人きりの生活の淋しさから室内犬を衝動買いしたK・Kさん。夫が犬嫌いのため、自分の寝室にゲージを設置して飼うことにした彼女は、専門書と首っ引きで愛犬ハッピーのしつけに熱中。8ヵ月後、ハッピーも成長しトイレも覚えたため、ゲージから出して自分の部屋で放し飼いにすることにしました。ところが、その1ヵ月後、ハッピーと散歩していると、K・Kさんは突然、のどにいがらっぽい痛みを感じるようになります。さらに、異変はそれだけに止まらず、それから様々な症状が起こり始めました。
(1)のどがいがらっぽい
(2)痰がからむ咳
(3)激しい咳
(4)高熱
(5)血痰
パスツレラ症
<なぜ、のどの痛みからパスツレラ症に?>
「パスツレラ症」とは、犬や猫などのペットが持つパスツレラ菌が、何らかの理由で人に感染し、皮膚の化膿や様々な炎症を引き起こす恐ろしい病です。現在、日本では年間3000人以上がこの病を発症していると言われています。では、どんな経路で、この菌が人に感染するのでしょうか?実は、犬の75%、猫の97%が、口や爪にパスツレラ菌を保有しており、噛まれたり、引っ掻かれることで感染してしまうのです。中でも最も多い感染ルートは、「ペットとキスをする」、「口をなめさせる」などの直接感染だと言われています。では、あれだけ愛犬ハッピーをしっかりしつけていたK・Kさんは、どのようにして感染したのでしょうか?彼女が犯した最大の過ち、それはハッピーを寝室で放し飼いにしてしまったこと。確かにK・Kさんの目の届くところでは、しつけられた通り行儀の良いハッピーですが、彼女が寝入った後、K・Kさんの口を舐めるなどの行動をとっていたのです。その結果、K・Kさんはパスツレラ症に感染。のどの痛みや咳などの症状を感じ始めました。通常は、この時点で免疫細胞がパスツレラ菌を攻撃。これ以上の大事に至ることはありません。でも彼女の場合、パートに出続けるなど無理を重ね、免疫機能が著しく低下。ついには、退治されなかったパスツレラ菌が肺まで達し、重い肺炎を引き起こしてしまったのです。
「パスツレラ症にならないためには?」
(1)パスツレラ症にかかってしまうのは、決してペットのせいではありません。
(2)問題は飼い主の行動と健康状態。
(3)口を舐められない、寝室に入れないなど、節度ある接し方を守り、体調管理を万全にしておけば、
この病は防ぐことが出来るのです。
『本当は怖い指先の違和感〜悪魔の手招き〜』
S・Mさん(男性)/55歳(発症当時)
サラリーマン
会社の仲間と川柳愛好会を作り、月に一度の発表会を楽しみにしていたS・Mさん。ある夏の日、自宅で川柳をつくっていたところ、筆を持った指先に違和感を覚えました。筆は素手で握っているはずなのに、薄い手袋をしているような感覚がしたのです。痛みがあるわけではないので、特に気にも留めなかったS・Mさん。ところが2ヵ月後、さらなる異変が起こり始めました。
(1)指先の違和感
(2)指先のむくみ
(3)爪を押すとへこむ
(4)指先が膨らむ
肺ガン
<なぜ、指先の違和感から肺ガンに?>
「肺ガン」とは、自覚症状が殆んど無いまま進行し、気づいたときには、手遅れになってしまうことが多い恐ろしいガンです。しかし、S・Mさんの場合には、症状がありました。それはあの「指の異常」、実はあれこそが「バチ指」といわれる肺ガンの症状だったのです。「バチ指」とは指先が、まるで「太鼓のバチ」のように膨らんでしまい、爪が丸みを帯びる症状のこと。肺ガンの比較的早期の段階で現れることが多いのです。ではなぜ、肺ガンになると「バチ指」になってしまうのでしょうか?詳しいメカニズムは明らかになっていませんが、原因の一つとして考えられているのが肺のガン細胞が出すという、一種の成長ホルモンです。それが、血液によって指先に運ばれ、S・Mさんの指の細胞を活性化し、成長を促進。指を「バチ状」にしたと考えられるのです。ある調査では、肺ガン患者のおよそ20%に現れるとも言われる、この「バチ指」。これこそ、自覚症状をほとんど感じることなく進行してしまう恐ろしい病、肺ガンの発症を知らせてくれる極めて貴重なサインなのです。実はこの「バチ指」、いち早く気づく方法があります。親指の爪を、横から見てください。付け根の部分がへこみ、爪と指の角度が160度程度であれば正常です。一方、付け根のへこみがなく180度以上になっていたら、それは「バチ指」。何らかの異変があると考えられます。この段階で検査を受ければ、肺ガンを早期発見できる可能性が高いのです。
「爪の症状から病を発見するには?」
(1)普段から自分の爪の状態を知っておくことが大切です。
(2)もし、自分の爪がいつもと何か違ったら、皮膚科で相談されることをおすすめします。