診察室
診察日:2006年8月29日
テーマ: 『本当は怖い頻尿〜忍び寄る魔の手〜』
『本当は怖い主婦の食習慣〜止められない悪魔の手〜』

『本当は怖い頻尿〜忍び寄る魔の手〜』

K・Kさん(女性)/52歳(発症当時) 自営業(美容室経営)
ある日、尿意を感じるたびに膀胱がズキズキと痛むようになったK・Kさん。同時に、頻尿の症状もあった彼女は、もしや膀胱炎にかかったのでは…と疑います。仕事柄、長時間トイレを我慢することが多いK・Kさんは、実は以前にも何度か膀胱炎になった経験があったのです。その夜、とりあえず残っていた膀胱炎の薬を飲んでみることにしたところ、数日後には症状はすっかり治まったK・Kさん。ところが3ヵ月後、そんな彼女の身に、新たな異変が襲いかかります。
(1)尿意を感じると膀胱が痛む
(2)頻尿
(3)再び膀胱の痛みがぶり返した
(4)足の付け根が痛む
(5)1日40回以上トイレに行く
(6)性器周辺が痛む
(7)焼け付くような膀胱の痛み
間質性膀胱炎
<なぜ、頻尿から間質性膀胱炎に?>
「間質性膀胱炎」とは、普段私たちが耳にする膀胱炎とは全く異なる膀胱炎です。一般的な膀胱炎は、外部から進入した細菌により、膀胱の粘膜が炎症を起こし痛みを発します。しかし、これは薬で細菌を退治すれば、炎症や痛みを抑えることができます。一方、間質性膀胱炎は、原因は定かではありませんが、膀胱の粘膜の内側にある間質が炎症を起こし、膀胱自体が縮んでくる病。その結果、ソフトボール大の膀胱はピンポン玉大まで縮んでしまいます。そして、この病に通常の膀胱炎の薬は一切効かないのです。この間質性膀胱炎の最大の恐ろしさ…それは医師の間でもあまり認知されていない病だということ。実はこの病、1998年の調査では10万人に1人しか発見できず、本当に稀とされてきました。そのため、泌尿器科医の間でも、その名前こそ知られているものの適切な対応が出来なかったというのも現実です。しかし近年、急激な患者の増加に伴い、日本泌尿器科学会も間質性膀胱炎研究会を発足。ようやくそのガイドラインを作り始めました。だからこそK・Kさんの場合、膀胱炎を疑って病院に行っても、正しい病名を診断されず、ドクターショッピングを繰り返してしまったのです。その間にもK・Kさんの膀胱は炎症により縮み続け、1日40回以上という極度の頻尿に。さらに膀胱の痛みは神経を伝わって、あちこちに飛び火。それが足の付け根や性器周辺に現れ、彼女を苦しめていたのです。では、わかりづらいと言われる間質性膀胱炎の特徴的な初期症状とはどんなものなのでしょうか?通常の膀胱炎では排尿時や排尿後に痛みがありますが、間質性膀胱炎では膀胱の伸びが悪くなるため、尿がたまるだけで痛みが走ります。細菌性でないため、尿自体に濁りはありません。そして、痛みのサイクルがあり、病の進行とともにその周期が短くなっていきます。K・Kさんが薬で病気が治ったと思ったのも、実は症状が弱いときに重なっただけだったのです。そう、間質性膀胱炎は病の正体を知ることで対処できる病。だからこそ今は、この病の存在を知り、知識を持つことが、何よりもあなたの身を守ることになるのです。
「ホームページをご覧の皆さんへのお願い」
(1)間質性膀胱炎になると極度の頻尿になるため、患者さんは普段から医学的理由によりトイレが待てない
   ことを示した黄色いカードを持ち歩いています。
(2)カードを提示された時には、できるだけトイレを譲って下さるようお願いします。
(3)皆さんの心遣いで患者さんが救われるのです。
『本当は怖い主婦の食習慣〜止められない悪魔の手〜』
K・Kさん(女性)/42歳(発症当時) 主婦
育ち盛りの子供たちのために、毎日栄養たっぷりの料理を作っていたK・Kさん。朝は子供たちのお弁当を味見ついでにつまみ食い。自分の朝食を採ったあとも、子供たちが残した料理をもったいないと片付け、昼食は賞味期限が切れそうな肉を全部使った炒め物。夕食を済ませた後も、残業で遅く帰ってきた夫につきあい、ついひと口食べるような食習慣を続けていました。それから2年後、昼寝をしていた時、突然こむら返りに襲われたK・Kさん。異変はそれだけでなく、次々と奇妙な症状が現れました。
(1)こむら返り
(2)のどが渇く
(3)だるい
(4)体重の急減
(5)昏睡
糖尿病
<なぜ、主婦の食習慣から糖尿病に?>
「糖尿病」とは、血糖値を調整するインスリンの働きが悪くなり、血液中のエネルギー源であるブドウ糖がうまく代謝されなくなり、血液中に溢れてしまう病のこと。現在、日本の糖尿病人口は、予備軍も含めると1620万人とも言われ、最近ではこれまで少ないと思われていた女性の糖尿病患者が全ての世代で増え続けているのです。中でも、40代を過ぎてから女性の糖尿病患者が急増しています。実は主婦の生活そのものに、カロリーの摂り過ぎを招く罠がありました。それは、K・Kさんの日々のタイムスケジュールの中に隠されていたのです。朝、お弁当作りでつまみ食い。朝食のあと、子供の残した料理をもったいないと平らげ、夜も料理中に一口。さらに夜遅く夫のおかずもまた一口。こんなK・Kさんのつまみ食いのカロリーは…トンカツ2切れ、141キロカロリー、鶏の唐揚げ2個、137キロカロリー、チャーシュー2切れ、68キロカロリー。さらにもったいないと食べていたピザトースト4分の3切れは、これだけでも413キロカロリー。合計するとなんと、759キロカロリーにもなるのです。そう、K・Kさんの1日のつまみ食い総カロリーは、メンチカツ定食に匹敵。知らず知らずのうちに、およそ一食分を余計に食べ過ぎていたのです。さらに脂質の面からみると…成人女性の1日の脂肪摂取量は、およそ50グラム以内とされているにも関わらず、K・Kさんは、およそ80グラムも摂取していたのです。こんな食習慣を10年以上続けてきたK・Kさん。インスリンの働きが悪くなり、その結果、糖尿病を発症してしまったのです。その後、治療の甲斐あって無事退院したK・Kさん。現在は健康的な食事を心がけ、毎日を送っています。
「糖尿病にならないためには?」
(1)脂質を控えたバランスのとれた食生活が大切です。
(2)もし、こむら返り、のどの渇き、だるさ、体重の急減などの症状がみられた場合、迷わず病院で検診
   されることをおすすめします。