|
|
『症例 橋本病 橋田壽賀子さんの場合』 |
|
橋田壽賀子さん(女性)/78歳(診断当時)
※発症年齢は不明 |
|
脚本家 |
81歳となった今も脚本家として活躍する橋田壽賀子さんは、日々、橋本病と闘っています。30歳を越えたある夏の日、突然、激しい動悸に襲われた橋田さん。1ヵ月後ようやく病院を訪れると、バセドウ病と診断され薬を処方されました。ところが薬を飲まなくても、いつの間にか症状は治まり、その以降、橋田さんが病院に足を運ぶことはありませんでした。しかし病は、半世紀という永い歳月をかけて彼女の体を蝕み続けていたのです。 |
|
(1)激しい動悸
(2)首のあたりのしこり
(3)無気力
|
|
橋本病 |
<なぜ、動悸から橋本病に?> |
「橋本病」とは、首にある甲状腺が腫れ続けることにより、その機能に異常が起こる病。原因は不明ですが、女性に多く発症するのが特徴で、現在、成人女性の20人に1人が、橋本病を患っているといわれています。実は橋田さんも、50年前、のどの腫れが発見されたあの時、橋本病を発症していた可能性が高いのです。当時、彼女が訴えた動悸という症状は、バセドウ病という別の甲状腺の病の症状。そして、橋本病でも初期の段階で一時的に同じ症状が出る場合があるのです。しかし橋田さんは、その楽天的な性格から、症状が治まったと勘違い。通院はおろか、薬を飲むことすら止めてしまいました。ここが橋本病の恐ろしいところ。何気ない症状が多いため、知らず知らずのうちに、体がその症状に慣れてしまうことがよくあるのです。そして、橋田さんもある事がきっかけとなり、更に病状を悪化させてしまうのです。
引き金となったのは最愛の夫との別れでした。実は妊娠、出産、家族との死別などのストレスが橋本病の危険因子の一つと言われています。橋田さんの場合も、夫を失ったストレスから症状は一気に悪化。あのひどい無気力に悩まされてしまったのです。病の存在を知らないまま、50年以上も脚本を書き続けてきた橋田さん。当時を振り返りながら、「仕事があったのが私にとっては本当に有り難かった」と語ってくれました。 |
|
|
|
『症例 胃ガン 鈴木宗男さんの場合』 |
|
鈴木宗男さん(男性)/55歳(診断当時) |
|
衆議院議員 |
今から3年前、胃ガンであることが発覚、胃の3分の2を摘出する大手術を受けた鈴木宗男さん。しかし元々健康マニアの彼は、毎年人間ドックを欠かさず受け、お酒は付き合い程度。タバコも一切吸わず、忙しい仕事の合間をぬってスポーツジムに通ってきました。しかもガン宣告を受けるまで自覚症状はまったく無かったといいます。そんな鈴木さんには、超多忙な議員生活を送る中で、一つだけ健康には良くないと知りながら、止められない生活習慣がありました。
|
|
自覚症状なし |
|
胃ガン |
<なぜ、健康に気をつかっていたのに胃ガンに?> |
「胃ガン」は、ガンの中でも症状が現れにくく、気づいた時には手遅れになっていることも多い恐ろしい病です。何故あれほど健康に気をつかっていた鈴木さんに胃ガンができてしまったのでしょうか?胃ガンの危険因子は、大きく分けて、「喫煙」、「塩辛い食べ物を好む」、そして「胃にピロリ菌を持っている」の3つと考えられています。しかし、鈴木さんはタバコも吸わなければ塩辛いモノもあまり食べません。さらに、ピロリ菌の検査も陰性。つまり危険因子はどれも当てはまりませんでした。それなのになぜ胃ガンが。実は、胃ガンがなぜ出来るのか?まだ全てが解明された訳ではありません。事実、年間数万人は、危険因子がなくとも、胃ガンを発症しているといわれています。では、胃ガンを少しでも予防するためには?先の三つの危険因子を避けるのは、もちろんのこと。さらにもう一つ、予防策と考えられていることがあります。実は健康マニアの鈴木さんも、それだけは実践していなかったのです。それが食生活。多忙なあまり、食事は移動中の車内で簡単に食べられるものばかりだった鈴木さん。そんな食生活では、圧倒的に不足するものがあったのです。それが生野菜。生野菜には、胃ガンを予防する重要な鍵が秘められているのです。胃ガンの原因の一つといわれているものに、ニトロソ化合物と呼ばれる発ガン性物質があります。しかしこの発ガン性物質は、生野菜や果物に含まれるビタミンCで、その活動を抑えることができると考えられているのです。もちろん生野菜や果物をキチンと食べていたからといって、完全に胃ガンを防ぐことはできません。でも少しでも胃ガンのリスクを減らすためには、普段から生野菜を十分にとることが大切。胃ガンの心配はしてしすぎることはないのです。久しぶりの人間ドックで胃ガンが発見された鈴木さん。最初は選挙を優先させようとしましたが、末娘・貴子さんの願いを受け、2003年10月、胃ガンを手術。胃の3分の2を摘出して手術は成功しました。現在は政治の世界に返り咲き、再び精力的に活動しています。
|
|
|
『アルツハイマー発症〜妻が見た10年間の記録〜』 |
|
M・Yさん(男性)/60歳(発症当時) |
|
無職 |
地方都市に暮すM・Yさんは、長年勤め上げた建設会社を定年退職。妻のMさん(57歳)は、これからは夫婦水入らずの時間をのんびり楽しむつもりでした。ところが2年後、特に趣味もないM・Yさんは、家でゴロゴロ過ごすことが多くなり、物忘れが目立つように。妻のMさんは誰にでもあることと気に留めていませんでしたが、異変はさらに続きました。
|
|
(1)物忘れが目立つ
(2)あれ・それが増える
(3)同時に2つのことができない
(4)ドラマの筋が分からない
(5)慣れた道を間違える
(6)自分のしたことを覚えていない
(7)徘徊
|
|
アルツハイマー病 |
<アルツハイマー病発症を止めることは出来なかったのか?> |
「アルツハイマー」と診断された時、M・Yさんの脳はすでに萎縮が進んでいました。すぐに薬を処方されたM・Yさん。しかし現在、アルツハイマー患者に処方されている薬は、脳の神経細胞を活性化する薬で、脳の萎縮自体を止めることはできないのです。それから3年。薬のおかげで症状の悪化は緩やかになったものの、やはり、その進行を止めることはできませんでした。こうして定年から10年、M・Yさんは70歳にして、ついに寝たきりの生活になってしまったのです。そして、これを機に、妻のMさんの生活も一変。毎日介護に追われ、疲労がピークに。ついには息子さんが仕事を辞めるまでになったのです。アルツハイマーは患者のみならず、残された家族の人生さえも左右してしまう病。それでも、病と向き合わなければならないのです。実は、アルツハイマーかそうでないかを見分ける大きなポイントがあります。M・Yさんが実際にアルツハイマーを発症したと考えられるのは、(6)の症状以降。物忘れをしたこと自体を本人が忘れてしまうことがアルツハイマーの大きな特徴です。しかし、本人の自覚があっても、(4)や(5)のような症状がひどい時は、アルツハイマーと診断される場合もあります。つまり、残る(1)から(3)の症状が、アルツハイマーの前段階。これこそ「MCI」とよばれる「軽度認知障害」。アルツハイマーの2〜3年前に始まる前段症状です。その発症原因は不明ですが、この段階を経て、およそ50%の人がアルツハイマーになってしまうと言われています。ただし、MCIの段階で早めに治療をすれば、アルツハイマーの発症を遅らせられる可能性が高まるというのです。しかし、これらの症状は、単なる老化の症状でもあるため、MCIかどうか判断するのは非常に困難。唯一の見極めは、頻度の差。物忘れや注意力不足の回数が増えてきたら要注意なのです。
|
|
|
|