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『本当は怖い腹痛~幸せの代償~』 |
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T・Kさん(女性)/56歳(発症当時) |
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主婦 |
20年前に夫と死別、長い老後のパートナーを求め、思い切って中高年のためのお見合いパーティに参加したT・Kさん。翌日、お見合いパーティで一番人気だった男性から交際を申し込まれた彼女は、フランス料理店で初めてのデート。20年ぶりの恋に胸をときめかせていましたが、帰宅後、へその辺りに締め付けられるような痛みを感じます。市販の胃腸薬を飲むと痛みは消えたため、ただの腹痛と思っていたT・Kさんでしたが、その後も異変は続きました。 |
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(1)食後の腹痛
(2)くり返す食後の腹痛
(3)激しい腹痛
(4)吐き気
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腸間膜動脈血栓症(ちょうかんまくどうみゃくけっせんしょう) |
<なぜ、腹痛から腸間膜動脈血栓症に?> |
「腸間膜動脈血栓症」とは、腸に血液を送る血管が血栓によって詰まってしまい、腸が壊死してしまう病気です。発病後5時間から10時間以内に治療をしなければ、死に至る可能性が非常に高い病なのです。ではなぜ、T・Kさんはこの病に冒されてしまったのでしょうか?原因は、趣味の食べ歩きなど、度を越した食生活による動脈硬化。動脈硬化といえば、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因として知られていますが、T・Kさんの場合は、同じことが腸でおきてしまいました。そもそも人間の腸は、食事をとると、それを消化吸収するエネルギーとして大量の血液を必要とします。その血液を送るのが、腸間膜動脈と呼ばれる血管。ところがT・Kさんのように、この血管の動脈硬化が進み狭くなると、消化吸収に必要な血液が流れにくくなり、腸が一時的に血液不足に陥ってしまうのです。その結果、起きたのが、あの「締め付けられるような腹痛」でした。この病気が恐ろしいのは、消化が終り、腸の血液不足が解消されると、痛みがウソのように消えてしまうこと。これこそが、この病の落とし穴。動脈硬化のサインを体が発しているにも関わらず、単なる腹痛としか思えないため、T・Kさんのように、つい軽く見て放置してしまうことが多いのです。しかし、その間にも動脈硬化はさらに進行。そして、ついに完全に血管が詰まり、腸が壊死してしまったのです。幸いにもT・Kさんは、一命を取りとめることができました。しかし、壊死した範囲が広かったため、腸の大部分を切除。もはや食事は取れず、点滴でしか栄養を吸収できない体になってしまったのです。 |