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『本当は怖い手の震え〜波打つ悪魔〜』 |
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T・Mさん(女性)/52歳(発症当時) |
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介護士 |
5年前に両親に先立たれて以来、高齢者の介護に目覚め、人気の介護士として忙しい毎日を過ごしていたT・Mさん。冷え込みの厳しくなった12月も半ば、介護先でお年寄りをベッドに横たわらせた直後、突然右手が震え出す異変に襲われました。意識した途端、すぐに止まってしまったため、特に気にも留めなかったT・Mさんですが、異変はそれだけではありませんでした。 |
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(1)手の震え
(2)力を入れなくても震える
(3)振れ幅が大きくなる
(4)震えの回数が増える
(5)震えを止めようとしても止まらない
(6)無表情
(7)身体が動かない |
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パーキンソン病 |
<なぜ、手の震えからパーキンソン病に?> |
「パーキンソン病」とは、脳内の神経伝達物質ドーパミンが異常に減少することで、運動機能に障害を起こす病。最悪の場合、寝たきりになってしまうこともあります。未だに原因が分かっていないため、難病に指定されていますが、決してまれな病気ではありません。20代から80代まで幅広い年代で発症し、現在国内の患者数は、およそ12万人。50代以上に限ると、何と100人に1人がかかっていると言われるほど。しかし、詳しい症状が知られていないため、病気に気付かない人も多く、重症化させてしまうケースが珍しくありません。T・Mさんもその1人でした。彼女を最初に襲ったあの右手の震え。実はこれこそがパーキンソン病の典型的な初期症状。ドーパミンが不足すると、脳から指令が送れなくなり、まずはこのように手や足が震え出すことが非常に多いのです。でも、そのことを意識したり、何か作業をしようとすると震えはすぐに止まってしまいました。これが、パーキンソン病の落とし穴。手足の震えは、安静時にのみ起きるのが特徴。最初は日常生活に支障がないことも多く、さらに長い年月をかけて徐々に進行するため、見過ごしやすいのです。T・Mさんが放置している間にも病は着実に進行。無表情という症状が現れました。あれは顔の表情をつくる筋肉への指令までもが異常をきたしてしまったせい。そしてついには、とっさに立ち上がろうとしても、全身の筋肉を全く動かせないほどに病を悪化させてしまったのです。現在、T・Mさんは薬を飲みながら懸命にリハビリを続けています。未だ完治の方法がみつかっていないこの病。しかし、早期に発見することが出来れば、薬によってそれまでとほとんど変わらない生活を送ることも出来ると言われているのです。 |