診察日:2006年12月5日
テーマ:
『本当は怖い腰痛〜恐怖の2大症例・あなたはどちらのタイプ?〜』
『本当は怖い腰痛〜恐怖の2大症例〜』
T・Kさん(男性)/35歳(発症当時)
花屋
商店街で花屋を営むT・Kさん(60歳・女性)と、一人息子のKさん(35歳・男性)。二人は親子揃って腰痛持ちでしたが、その痛みには微妙な違いがありました。母親のT・Kさんが腰に痛みを感じるのは身体を後ろに反らした時。一方、息子のKさんは前かがみのまま長く座っていると痛みます。二人の腰の痛みは2大腰痛病につながる危険な腰痛でした。 病魔がまず狙いを定めたのは、前かがみになると腰が痛む息子のKさんの方でした。ある日、花を取ろうと腰をかがめた時、腰にピリッとした痛みを感じたKさん。立ち上がると痛みは和らいだため特に気にも止めませんでしたが、その後も腰の異変は続きました。
(1)前かがみを続けると腰が痛い
(2)腰にピリッとした痛みが走る
(3)寝ていても腰が痛い
(4)膝下から足の甲が響くようにしびれる
(5)腰から足にかけての激痛
腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんヘルニア)
<なぜ、前かがみを続けると痛む腰痛から腰椎椎間板ヘルニアに?>
腰椎とは、背骨のいちばん下、腰のあたりの骨のこと。そこで骨と骨のクッションの役割をしているのが椎間板です。その中の髄核と呼ばれるゼリー状の物が外に飛び出し、神経を圧迫。痛みを引き起こすのが、「腰椎椎間板ヘルニア」。特に、30代40代の働き盛りに多いと言われています。では、なぜKさんは「腰椎椎間板ヘルニア」になってしまったのでしょうか?この病を引き起こす原因は、主に3つ。一つは、誰もが避けることのできない「老化」。実は、椎間板の老化が始まる年齢は、なんと18歳。35歳のKさんの椎間板は弾力性を失い、硬くなり始めていました。そんな状態で日々重い物を運んでいたKさん。この2つ目の危険因子によって椎間板は、常に強い圧迫を受け、内圧が高まっていったのです。そこに追い討ちをかけたのが、「姿勢の悪さ」。毎日パソコンに向かい前かがみの姿勢を続けたことで、Kさんの椎間板は、不自然な形で押し潰され髄核が変形。前かがみの姿勢を取る度に神経にあたり、腰痛が起きていたのです。これこそが前かがみになったときの腰の痛みの原因。そんな状態にもかかわらず、さらに重いものを持ったKさん。ついに、髄核の一部が椎間板の外にはみ出し神経を圧迫。足のしびれをもたらしました。これこそが「腰椎椎間板ヘルニア」の最も特徴的な症状なのです。そしてついに、最後の瞬間が訪れます。あれこそ、髄核がじん帯までも突き破った瞬間だったのです。すぐさま緊急手術を行ったKさん。手術は成功し、仕事に復帰することができました。
『本当は怖い腰痛〜恐怖の2大症例〜』
T・Kさん(女性)/60歳(発症当時)
花屋
息子の手術から2年。腰痛の次なる標的となったのは、母親のT・Kさん。相変わらず身体を後ろに反らした時に腰が痛む彼女は、ある日、腰を伸ばした瞬間、左足にしびれを感じます。これは息子の腰椎椎間板ヘルニアの時と同じ症状。さらに同じ様に、T・Kさんは寝ている時も、腰に痛みを感じるようになっていました。しかし、一つ違っていたのは、前かがみで痛みが出た息子とは逆に、背中を丸めると痛みが治まるのです。歳をとれば誰しもあることと思っていたT・Kさんですが、異変はさらに続きました。
(1)体を反らしたとき腰が痛い
(2)左足にしびれ
(3)寝ている時も腰が痛む
(4)歩けなくなる
(5)左足が麻痺
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
<なぜ、膝の痛みから変形性膝関節症に?>
脊柱とは、いわゆる背骨のこと。その背骨には、「脊柱管」と呼ばれる脊髄や神経の通り道があります。「腰部脊柱管狭窄症」とは、この脊柱管が狭くなり、様々な症状を引き起こす病。50代から症状が現れ、60代70代に重症化する傾向があります。では、なぜT・Kさんは「腰部脊柱管狭窄症」になってしまったのでしょうか?老化と腰に負担のかかる仕事によって、息子さんと同じく、弾力性を失っていた母親のT・Kさんの椎間板。そこに、高齢者特有の要因が加わっていました。それが筋肉の衰え。腹筋と背筋が衰えると、背骨をしっかり支えることが出来なくなります。すると、骨やじん帯が自らを支えるためにゆっくり変形を始めます。その結果、脊柱管が狭くなり神経を圧迫。「腰部脊柱管狭窄症」を発症してしまうのです。後ろに反り返って痛みが出たのは、より脊柱管が狭くなり、圧迫が強まったため。逆に前かがみになると、脊柱管が広がるため、痛みが治まったのです。そして、休み休みでしか歩けなくなってしまった、あの症状。これは、間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれ、この病に多い特徴的な症状。しかし、これさえも、休んでいると楽になるため、彼女は病院に行こうとは、つゆほども思わなかったのです。こうして病は悪化。ついにT・Kさんの左足は完全に麻痺してしまったのです。幸いT・Kさんの緊急手術は無事成功。今も月に1度の検査は欠かせませんが、元気に店を手伝えるようになりました。