診察日:2007年1月30日
テーマ:
『本当は怖い痩せの大食い〜食後の安楽〜』
『本当は怖い目の疲れ〜見えない誤作動〜』
『本当は怖い痩せの大食い〜食後の安楽〜』
O・Yさん(女性)/43歳(発症当時)
専業主婦
専業主婦のO・Yさんは、いわゆる「痩せの大食い」。3年前から食べ歩いたランチのことを自身のブログに書いて、密かな人気を集めていました。そんなある日、ランチ帰りに階段を少し上っただけで息切れを感じたO・Yさん。年のせいで体力が落ちたのかと思ったものの、毎年の健康診断では異常がないため、特に心配はしていませんでした。しかし、そんな彼女をあざ笑うかのように、さらなる異変が襲いかかります。
(1)息切れ
(2)胸を刺すような痛み
(3)胸が締め付けられるような痛み
(4)心臓を鷲づかみされるような痛み
隠れ糖尿病
<なぜ、痩せの大食いから隠れ糖尿病に?>
毎年健康診断を受け、特に問題はなかったはずのO・Yさん。そんな彼女がなぜ、突然心筋梗塞に襲われてしまったのでしょうか?そこには検査の目をすり抜けて暗躍する、もう一つの恐ろしい病が存在していました。「隠れ糖尿病」です。「隠れ糖尿病」とは、通常の健康診断では見つけることの出来ない糖尿病のこと。では、なぜ健康診断で見つけることが出来ないのでしょうか?そもそも食事をすると食べた分だけ血液中の糖分が増加します。すると、すぐにすい臓からインスリンが分泌。その糖分を脂肪やエネルギーに変えるのです。しかし、一般的な糖尿病患者の場合、すい臓が疲弊しているため、インスリンが少ししか出ません。そのため食後、血液内に増えた糖分をエネルギーに変えることができず、常に血糖値が高い状態が続きます。だからこそ、一般的な糖尿病は健康診断で発見されやすいのです。隠れ糖尿病の場合も食後インスリンが少量しか出ないのは、通常の糖尿病と同じ。血糖値も高い状態です。しかし、決定的に違うのは、隠れ糖尿病の場合、インスリンの出が悪いのは食後のみという点。時間とともにインスリンは出始め、およそ2時間後には、血糖値は正常値に戻り始めるのです。つまり血糖値が危険なほど高くなるのは、食後の2時間のみ。1日3食として、6時間。そう、隠れ糖尿病とは1日わずか6時間ほど患う糖尿病なのです。では、なぜその6時間を健康診断で見つけられないのでしょうか?実は通常の血液検査は空腹時に行います。それは人それぞれ食事内容などが違うため食べた物で、検査結果に違いが出るのを防ぐためです。だからこそ食後2時間だけ現れる隠れ糖尿病は、通常の健康診断では発見されづらいのです。こうしてO・Yさんは、自分が隠れ糖尿病だとは気付かないまま、1日6時間の高血糖を放置。その間、心臓の冠状動脈に溢れ返った糖分が血管内を傷め続けていました。その結果、体内では静かに動脈硬化が進み、ついには心筋梗塞を起こしてしまったのです・・・。この隠れ糖尿病には、その標的となりやすいタイプがあります。それが「痩せの大食い」。実は痩せの大食いの人は、インスリンの出が悪い人が多いというデータがあり、隠れ糖尿病になる危険性は、太っている人よりも高いといわれています。そして、現在の糖尿病患者740万人のうち、なんと4割が隠れ糖尿病だといわれているのです。
<家庭で簡単に食後の血糖値の目安がわかる方法>
(1) 「自己測定機」という血糖値を測る器械があります。
(2) また「尿糖試験紙」を使うと、もっと簡単に血糖値を測ることができます。
(3) 食後2時間くらい経った血糖を測ってみましょう!
『本当は怖い目の疲れ〜見えない誤作動〜』
M・Mさん(女性)/50歳(発症当時)
主婦
2DKのアパートに夫と息子の3人で暮らす主婦、M・Mさん。最近中学2年生の息子が何かと彼女に当たり散らすのを気に病んでいましたが、ある日、夫の母親が倒れ介護が必要になったため引き取ることになります。そんな中、自分の部屋を祖母に明け渡すことになった息子がますます反抗的な態度を取った時、しょぼしょぼとする目の疲れを感じたM・Mさん。1ヵ月後、息子の行動にさらに手を焼くようになった彼女に、さらなる異変が襲いかかります。
(1)目の疲れ
(2)目の乾き
(3)まばたきが増える
(4)まぶたが開かない
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
<なぜ、風邪から眼瞼痙攣に?>
「眼瞼痙攣」とは、脳の感覚運動回路の途中に異常が生じることで、目に様々な障害が現れる病。放置すると、自分の意思とは関係なく、まぶたの筋肉が閉じたまま硬直してしまい、失明同然となることもある恐ろしい病です。その患者は年々増え続け、現在約3万人。しかし、潜在的な患者数は30万人を超すといわれています。そして、なぜか40〜50代の主婦を中心に多く発症しているのです。この病を発症する大きな要因として考えられているのが、ストレス。M・Mさんの場合、家が狭いことに対して何かと不満をぶつけてきた息子からのストレスが、脳の感覚運動回路に異常をもたらし、この病を発症したと考えられます。感覚運動回路は、「見る」「聞く」などの情報を認識する感覚の回路と、それを伝えて体を動かす運動の回路の2つからなっています。大きなストレスがかかると、まず感覚の回路の途中で誤作動が起きると考えられています。これはあくまでも感覚の異常。その結果、起きたのが、あの「目の疲れ」や「乾き」という症状。目そのものに症状はなかったのです。事実、眼瞼痙攣の患者の中には、その初期症状がドライアイとよく似ているため、目薬などで対処。放置してしまう人が多いのです。そして、ついにストレスは運動の回路にも誤作動を発生させます。その結果、意識していないのにまばたきが多くなり、そしてついに彼女のまぶたは完全に硬直し、開かなくなってしまったのです。これこそがこの病の恐ろしいところ。事実、この病のおよそ6割もの人が歩行中や運転中などに何らかの事故を起こしているといわれています。幸い、M・Mさんの場合、事故は大事には至りませんでした。しかし、早期発見を逃したため、M・Mさんのまぶたは、以前のように完全に開くことはなくなってしまったのです。