診察室
診察日:2007年2月6日
テーマ: 『本当は怖い咳〜意外なところに潜む悪魔〜』
『本当は怖い頻尿〜恥ずかしさの代償〜』

『本当は怖い咳〜意外なところに潜む悪魔〜』

K・Yさん(男性)/56歳(発症当時) 銭湯経営
東京下町で、三代に渡って銭湯の暖簾を守り続けてきたK・Yさん。自分の目の黒いうちは店を畳めないと頑張っていましたが、ある日、風呂を焚いている最中に空咳(=コンコンという乾いた咳)に見舞われました。風邪を引いたと思った彼は、こじらせないよう市販の風邪薬を飲んでいましたが、その咳は風邪などではありませんでした。
(1)空咳
(2)空咳が続く
(3)息切れ
(4)横になると苦しい
(5)咳が止まらない
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
<なぜ、空咳から僧帽弁閉鎖不全症に?>
「僧帽弁閉鎖不全症」とは、心臓の中にある僧帽弁が高血圧などによって正常に機能しなくなる病。血液が逆流することで心不全を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。僧帽弁を含む心臓の弁に何らかの異常があると考えられている人の数は、なんと100万人以上!しかも近年、50代以降で急激に増加しているのです。でもなぜK・Yさんは心臓の病なのに、咳という症状に見舞われたのでしょうか?咳が出たのはいつも急に体を動かした時。その瞬間、血圧が一気に上昇。僧帽弁を支えている腱索(けんさく)が切れ、血液の逆流が肺にまで到達。肺の毛細血管に圧力がかかり、刺激され「咳」となって現れたのです。これこそがこの病の早期発見のポイント。問題はその咳が、どんな咳なのかです。咳には、大きく分けると2種類あります。ひとつは風邪を引いたときなどに出る湿った咳、ゴホゴホという「痰が絡んだ咳」です。そして、もうひとつが「空咳」。コンコンという、咳が絡まった乾いた咳です。実はこの空咳こそ、早期の僧帽弁閉鎖不全症の特徴。急激な運動やストレスなどで血圧が変動したときに空咳が出た場合、この病を疑ったほうが良いのです。しかし、K・Yさんはこれを単なる風邪と思い込んでしまいました。その結果、病は悪化の一途をたどり、最後に駆け出したあの時、大量の血液が肺に逆流。今度は痰も絡んだ猛烈な咳の発作に襲われてしまったのです。幸い緊急手術によってK・Yさんの僧帽弁は機能を回復。10日後には無事退院し、銭湯の仕事に復帰することができました。僧帽弁閉鎖不全症は早期発見が可能な病。早期なら緊急手術が避けられる場合もあるのです。空咳が出たら自分で処置せず、専門医の治療を受けることをお勧めします。
『本当は怖い頻尿〜恥ずかしさの代償〜』
A・Hさん(女性)/61歳(発症当時) 主婦
自らの熟年離婚体験を綴った本が話題となり、講演会に引っ張りだこになっていたA・Hさん。多忙な毎日を送る中、最近、頻尿に悩まされるようになっていました。誰でも年をとればトイレが近くなるのは仕方ないと思っていたA・Hさんですが、その後も気になる症状が続きました。
(1)頻尿
(2)突然、強い尿意を感じる
(3)尿もれ
(4)失禁
過活動膀胱(かかつどうぼうこう)
<なぜ、頻尿から過活動膀胱に?>
「過活動膀胱」とは、自分の意思とは関係なく膀胱が過敏に反応。頻尿や突然強い尿意を感じてしまう病です。現在の患者数はおよそ140万人。しかし過活動膀胱は、2002年に国際学会が承認したばかりの新しい病。最新の調査では、40歳以上の800万人がこの病だと推測されているのです。過活動膀胱の特徴は、1日8回以上の頻尿に加え、週1回以上、突然強い尿意に襲われること。これらの症状があった場合、この病を疑ったほうが良いのです。その原因ははっきりとわかってはいませんが、高血圧や動脈硬化なども関係していると考えられています。高血圧や動脈硬化が悪化すると、脳の血管に障害が起き、誤った信号が膀胱へ送られます。その結果、膀胱が過敏に反応。充分に尿をためられなくなり、A・Hさんは尿もれや失禁を起こしてしまったのです。さらに、過活動膀胱には、水の音を聞くと何故か強い尿意に襲われるという奇妙な特徴もあります。原因は解っていませんが、なんらかの心理的な要因が関わっているのではないかと、考えられています。そして、恐ろしいのは、この病の存在が一般には、ほとんど知られていないこと。そのため頻尿や尿もれは年のせいと諦めていたり、恥ずかしくて病院に行けないという潜在患者がとても多いのです。その後A・Hさんは、薬物投与による適切な治療を受け、1ヵ月後には講演活動を再開、従来のテーマに加え、「熟年女性の病」にも熱弁を奮うようになりました。

<尿もれを防ぐ!骨盤底筋(こつばんていきん)体操>

(1)男性は足を肩幅くらいに開き、力を抜く。女性は足を自然な形で開き、力を抜く。
(2)背筋を伸ばして顔を上げる。
(3)男性は肛門とペニスの付け根の所の筋肉を締める。
女性は肛門と膣の所の筋肉を締める。
(4)おならを我慢するように締めて上に持ち上げる様な感じで。
(5)締めたり緩めたりを繰り返す。


※この締める緩めるを速いテンポで行なうのを5回。
そして締めたまま5秒数えて緩める、ゆっくりとしたテンポで行なうのを5回。
これをワンセットとして、尿もれ予防のためには3セット、
尿もれがある方は一日10セットを行なうことが大切です。