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『本当は怖い咳~意外なところに潜む悪魔~』 |
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K・Yさん(男性)/56歳(発症当時) |
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銭湯経営 |
東京下町で、三代に渡って銭湯の暖簾を守り続けてきたK・Yさん。自分の目の黒いうちは店を畳めないと頑張っていましたが、ある日、風呂を焚いている最中に空咳(=コンコンという乾いた咳)に見舞われました。風邪を引いたと思った彼は、こじらせないよう市販の風邪薬を飲んでいましたが、その咳は風邪などではありませんでした。 |
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(1)空咳
(2)空咳が続く
(3)息切れ
(4)横になると苦しい
(5)咳が止まらない |
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僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう) |
<なぜ、空咳から僧帽弁閉鎖不全症に?> |
「僧帽弁閉鎖不全症」とは、心臓の中にある僧帽弁が高血圧などによって正常に機能しなくなる病。血液が逆流することで心不全を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。僧帽弁を含む心臓の弁に何らかの異常があると考えられている人の数は、なんと100万人以上!しかも近年、50代以降で急激に増加しているのです。でもなぜK・Yさんは心臓の病なのに、咳という症状に見舞われたのでしょうか?咳が出たのはいつも急に体を動かした時。その瞬間、血圧が一気に上昇。僧帽弁を支えている腱索(けんさく)が切れ、血液の逆流が肺にまで到達。肺の毛細血管に圧力がかかり、刺激され「咳」となって現れたのです。これこそがこの病の早期発見のポイント。問題はその咳が、どんな咳なのかです。咳には、大きく分けると2種類あります。ひとつは風邪を引いたときなどに出る湿った咳、ゴホゴホという「痰が絡んだ咳」です。そして、もうひとつが「空咳」。コンコンという、咳が絡まった乾いた咳です。実はこの空咳こそ、早期の僧帽弁閉鎖不全症の特徴。急激な運動やストレスなどで血圧が変動したときに空咳が出た場合、この病を疑ったほうが良いのです。しかし、K・Yさんはこれを単なる風邪と思い込んでしまいました。その結果、病は悪化の一途をたどり、最後に駆け出したあの時、大量の血液が肺に逆流。今度は痰も絡んだ猛烈な咳の発作に襲われてしまったのです。幸い緊急手術によってK・Yさんの僧帽弁は機能を回復。10日後には無事退院し、銭湯の仕事に復帰することができました。僧帽弁閉鎖不全症は早期発見が可能な病。早期なら緊急手術が避けられる場合もあるのです。空咳が出たら自分で処置せず、専門医の治療を受けることをお勧めします。 |