診察室
診察日:2007年6月12日
3大認知症を早期発見で安心スペシャル!
テーマ:
「アルツハイマー病と脳血管性認知症」
「第3の認知症・レビー小体型認知症」

『アルツハイマー病』

Aさん(男性)/60歳(発症当時) 無職
アルツハイマー病を発症したAさん。最初に現れた症状は、少し前に聞いたことを忘れてしまう小さな物忘れでした。その後、会話に「あれ、それ」が増え始め、やがて、電話で相手の話を聞きながらメモをとるという、二つのことが同時に出来なくなってしまいます。 そして、自分のした事を忘れるなどの症状まで現れ・・・。
(1)少し前に聞いたことを忘れる
(2)会話に「あれ、それ」が増える
(3)2つの事が同時にできない
(4)自分のした事を忘れる
アルツハイマー病
<どこまでが、前駆症状なのか?>
Aさんに現れた様々な物忘れの症状の中で、どこまでが前駆症状(=その病気の特徴的な症状が出る前にみられる症状)だったのでしょうか?実は、アルツハイマー病を発症したと考えられるのが、(4)の「自分のしたことを忘れてしまった物忘れ」から。物忘れの自覚がないこの症状こそ、アルツハイマー病の大きな特徴。ですから、Aさんの場合、前駆症状となるのは(3)までの症状でした。ここまでが、「MCI」と呼ばれる軽度認知障害という段階。MCIになると、半数がそのままの状態を維持しますが、残りの半数は、アルツハイマー病に進んでしまうといわれています。だからこそ、このMCIを見極めることが、アルツハイマー病を早期発見する最大のポイント。この段階で治療を始めれば、発症を遅らせ、症状を抑えることは可能なのです。
『第3の認知症・レビー小体型認知症』
S・Sさん(女性)/62歳(発症当時) 無職
昔から花を育てることが大好きな元小学校の教師S・Sさん。第二の人生を静かに送る彼女にとって一番の楽しみは、かつて担任を務めたクラスの同窓会。教え子たちの元気な姿を見るのが何よりの喜びでした。しかし、彼女にはこの頃、真夜中に怖い夢を見て突然大声を出してしまう悩みがありました。所詮は夢と特に気にすることもなかったS・Sさん。ところが、それから4年、新たな異変が始まります。
(1)子供が見える
(2)再び子供が見える
(3)物が人に見えると言い張る
(4)娘を他人と間違える
レビー小体型認知症
<なぜ、第3の認知症・レビー小体型認知症に?>
最近の研究で実態が明らかになるにつれ、これまで別の病だと診断されていた患者さんが、「レビー小体型認知症」と判明するケースが急増。将来の患者数は、認知症全体で2番目に多くなると言われています。「レビー小体型認知症」は、脳の神経細胞に異常なタンパク質がたまり、レビー小体という構造物ができることで発症します。すると、視覚を司る後頭葉の視覚野に異常をきたし、様々な視覚認知障害が現れてしまうのです。そうなると、居ないはずの人が見える幻視や、物が人に見えたりする錯視など典型的な症状が出始めてしまいます。しかもやっかいなことに、自分では正しく見えていると思い込んでいるため、本人は気付くことができないのです。さらに、この病にはもう一つ落し穴が。視覚認知障害は、日によって良くなったり悪くなったりするため、発見が遅れてしまうことがあるのです。「レビー小体型認知症」は、一度発症したら急速に病が進行するのが特徴。視覚認知障害に続き、放っておくと、記憶障害、パーキンソン症状など様々な症状に発展。最悪の場合、数年で寝たきりになり、死に至ることもあるのです。「レビー小体型認知症」は残念ながら、現代の医学では完治することが出来ません。しかし、早期に発見し投薬治療を行えば、病の急速な進行を遅らせることは可能なのです。