診察室
診察日:2007年7月31日
いま、日本人に急増する“血管の病”を徹底究明!

『血管の病』

K・Eさん(男性)/61歳 自営業(製本所経営)
蒸し暑い日が続いていたにも関わらず、夏バテ知らずで、60歳を過ぎてもますます元気だったK・Eさん。その日もいつもと変わらず快調な朝でしたが、午前10時、製本所に到着した彼に最初の異変が現れます。印刷物を運ぼうとしたとき、なぜか不意に右肩が押されるような鈍い痛みを感じたのです。10分ほど休むと、肩の痛みはいつの間にか消えていましたが、その後も異変は続き・・・。
(1)右肩に押されるような痛み
(2)左肩に重い痛み
(3)大量の汗
(4)胃の痛み・吐き気
急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)
<異変が現れてから2時間・・・なぜ、肩の痛みから急性心筋梗塞に?>
「急性心筋梗塞」とは、心臓を動かす血管「冠動脈」が何らかの原因で突然つまり、血流がストップ。心臓の筋肉が壊死し、死に至ることもある恐ろしい病。K・Eさんの冠動脈は、左の付け根が完全につまっており、既に心臓の筋肉の2割が壊死していたのです。しかし、一体なぜ、K・Eさんはわずか2時間で、この急性心筋梗塞に襲われたのでしょうか?実は彼の血管の中には、ある恐ろしい物体が眠っていたのです。それこそ、今、持っている日本人が急増しているといわれる「不安定プラーク」。コレステロールの固まりである、この不安定プラークこそ、心筋梗塞の最大の原因なのです。実は心筋梗塞を起こす詳しいメカニズムが明らかになってきたのは、15年ほど前。それまで心筋梗塞は、血管内に出来たコブが長い時間をかけて大きくなり、血管の70%を塞いだとき、初めて息切れや動悸といった前段症状を引き起こし、さらに血管を完全に塞いだときに、心機能停止を引き起こすと説明されてきました。ところが、新たな研究で驚くべき事実が判明。なんとこの不安定プラークは、血管の50%以下の大きさでも突如血管壁が破れ、そこに集まってくる血小板により、急激に血管を塞ぐことが分かったのです。その時間、わずか数分から数十分。実際、心筋梗塞を起こした人の血管を調べた結果、血管が50%以下しか塞がっていない人が、実に7割以上もいたことが明らかになっているのです。では、一体なぜ「不安定プラーク」が出来てしまうのでしょうか?その最大の原因といわれているのは、食の欧米化。脂肪分の多いものを好んで食べていると、血管内の血中コレステロール濃度が高い状態に。すると、そのコレステロールが老化や喫煙などによって出来た傷口から次々と侵入し、ついには不安定プラークが出来てしまうのです。日本人の平均総コレステロール値は、ここ20年で大きく上昇し、女性に関しては、なんと、アメリカ人の平均を超えています。コレステロール値が高い人は、すでに不安定プラークを持っている可能性が高く、注意が必要なのです。幸いにも一命を取り留めたK・Eさんは、20日間の入院を経て、無事、職場に復帰。現在は食事をはじめ、生活習慣に気を付けて日々を過ごしています。突然、今までにない肩の痛みや胸の痛みなどに襲われたら、心臓の病を疑い、一刻も早く病院へ行くことが大事。一分一秒の判断が、あなたの命を救うのです。
心筋梗塞を起こす可能性をフラミンガム・リスク・ポイントでチェック